二章・初志貫徹編 -案ずるより生むが易し-

二章・初志貫徹編

案ずるより生むが易し



俺達は4人が見守る中、お互いに顔を見合わせた。

これから先の話を誰がする?視線で問えば二人共俺の顔を見て笑いやがる。

仕方がねぇな、めんどくせぇが俺が話してやるよ。


ノボリがおいしい水のボトルを持ってきて、空になったグラスへ注ぐ。

マジで気が付くよなぁと、感心しながら礼を言って一口飲む。



「まず、世界の歪みの原因になるものの話しになるんだが

俺達の世界ではこっちの世界はゲームデーターだって事になる。

ゲームと言うからにはストーリが予め作られた物であって

俺達は主人公になってそのデーターでプレイをしていたんだ。

人気のあるモンだったんでな、シリーズ化してたんだよ。」



四人が眉間に皺を寄せるが、仕方ねぇだろう。

自分達はここで生きているのに、それを否定されてる様なモンだしな。



「データーだけの世界って、ちょっと納得できない。

ボク逹はちゃんとこの世界に生きてる。」



「クダリさん、例えばですけど自分達がゲームをして遊んでるとします。

そして、いきなりそのデーターの世界へ生身の身体ごと飛ばされたと考えては?

その世界では死んでもリセットは効きません。

だって、そっちの世界の中に入ってしまったら、そこが自分達の世界観と

同じ様に変化してしまうんですから。つまり、私達も同じなんです。」



「成程、それが所謂平行世界と言うものなのデスネ?

一方デハ架空の世界、もう一方が現実と認識シテモ逆転する事もアル?」



「インゴの言う通りだ。ポケモンは向こうの世界ではゲームのキャラクターで

お前達もそうだったんだよ。もっともインゴとエメットって言うのは

ノボリとクダリの別名…そのゲームソフトの別地域での呼び名だったんだ。」



向こうの世界で知っている事を言えばノボリが過剰に反応しやがった。



「私達とインゴ達が同一人物など…想像したくもございませんね。」



「ノボリ酷くナイ?それはボクのセリフ。」



俺達からしてみれば、そんな事は大した問題じゃねぇんだが

当人にしてみれば深刻なモンなんだろう。

だが、似たり寄ったりだと思うのは俺だけじゃねぇと思うんだがな。



「まぁ、平行世界ってのは色々あるみてぇだからな。

そういう事も無いわけじゃねぇと思う。問題はそこじゃねぇしな。

俺達はシリーズ化されたソフトを最初からプレイしていた。

つまり、こっちで起きた出来事を全て主人公としてプレイ済みだったんだよ。」



今思えば俺は初代から草タイプを選んでたんだよなぁ。

フシギバナのあの風格に惚れて選んだのも懐かしい記憶だ。

そしてBWに至る…最初にサブウェイマスターを見た時は笑ったが

今目の前に、その人物がいるこの状況も笑えるんじゃねぇだろうか。



「ところがだ、プレイしていたストーリーはこっちの世界じゃ

まだどれも起こってねぇときた。そこにアルセウスは目をつけた。

俺達の知っているストーリを、こっちでそのままトレースすれば

世界の歪みも改善される。そして、俺達もこっちで存在できる。

もっとも、主人公達はそれぞれにこっちの世界で生まれているからな。

その主人公達が、俺逹の知ってるストーリー通りに動いてくれれば良い。」



こんな言い方するのは好きじゃねぇんだが、この世界では

俺達は未来を知る者って事になっちまうからな。



「えっと、ボクちょっと混乱してるかもしんない。

皆は、主人公としてプレイしていた事をこっちの主人公達にさせたって

そう考えればいいのかな?」



「こちらの世界の人物が必ず、貴方達の思う様に動く保証はないのでは?

その場合はどうされたのでございますか?」



確かに、そう簡単に介入する訳にもいかねぇはずなんだが、その辺は甘かった。

この世界にとっては人間がどう動いたかって事より、ポケモンがどうなったか。

そっちの方を重要視したと考えれば辻褄があう。



「俺等の知っている話は二通りなんだ。

伝説級のポケモンが絡むもの、悪の組織が絡むもの、その両方もあったか…

そんな感じだったんで、こっちの主人公達の性格…まぁ正義の味方だろうな。

そういうものを持ってるから、それぞれ勝手に動いてくれても

大体が俺等の知ってるストーリーをトレースしてくれたんで、助かったぞ。」



「そして、ストーリーを合致させる事…これが俺達のミッションだったんだ。

はカントー、はジョウト、俺はホウエン、はシンオウ…

それぞれに振り分けられて、そして動いて、ミッションを達成したんだ。」



「各地での大事件については、私達も聞き及んでおります。

では、その全てに貴方達が関わっていた…そう言う事でございますか?」



ノボリの問いに俺達は頷いた。

手持ちは向こうの世界のまんまだったんだ。

俺ももメインの子達は6Vだから、かなりこっちが有利には動けたしな。

廃人道も捨てたモンじゃねぇ。



「そっか、そう言う事に関わるんだったら

皆がマスターランクのトレーナーって、納得できるかもしんない。

それじゃないと、そんな大変な事出来ない。」



「デモサ、のMissionが無いヨ?」



「イッシュで起きた、プラズマ団と伝説のポケモン絡みだったのデハ?

イエ、違いますネ。ソレではMission Complete してるハズ…。」



イッシュに来て知り合った双子の少年少女の顔を思い浮かべる。

今思えば、俺がトウヤ君になってプレイしていたとか笑っちまう。

それでも、プレイしていた時は主人公になりきって話を進めていたし

結末についても、これはちょっとスッキリしねぇだろうと

達ともツッコミを入れていた。



「俺達もそうだと思っていたんだがな、実際の所は違っていた。

まぁ、トウヤ君達が大活躍してくれて出番がなくて助かったぜ。

一応に頼んで、いつでも動けるようにはしていたんだがな。」



「ネェ、つまりはのMissionってこれから起きる事?

キミ達はこれから何が起きるノカ…未来を知っているって事ナノ?」



エメットがを驚いた表情で見つめている。

他の3人も似たり寄ったりの顔つきをしていやがるな。

はゆっくりと目を伏せた。それは肯定していると受け止めたんだろう

全員の口からため息が出た。



「それじゃ、ボク達が簡単に手を出せないはず。

うん、わかった!でもできる限りの協力はさせてもらう。」



「えぇ、それは元々考えていた事でございますからね。

ですが、も手を出せないと聞いておりますが?」



どこまでも前向きにひた走ろうとするこいつらに思わず笑っちまった。

そこは信じられねぇとか思うところじゃねぇのかね。



「そうですね…詳しい事は言えませんけど

これから先のストーリーを知っているのは私だけなんですよ。

向こうの世界で最新のシリーズで、私はプレイ済みです。

は買うとは言ってたけど、結局は買えなかったんだよね。」



「おう、俺等は予約してなかったからな。

まさか発売日からしばらくしても在庫が無いなんて思わなかったぞ。

それでも、買った時にサクサク進めたかったから色々調べてはいたがな。」



「あぁ、俺もも未プレイだがストーリー自体はわかってる。

だが、こっちの世界にきて詳しい内容が思い出せねぇ部分もあるんだ。

それは俺達がこっちの世界の人間になったせいじゃねぇのかって

アルセウスが言っているんだがな…つまりは世界に淘汰されてるんだよ。」



自分の持っている記憶が、世界だかなんだか知らねぇが、第三者に勝手に

いじられるってのは気に食わねぇが、仕方が無いんだろうな。



「あー、なんだかんだで結局全部言っちゃった?

ホントならここまで話すつもりはなかったんだけどなぁ…」


がそのままテーブルに突っ伏しちまった。

人間不信の塊だったこいつが、覚悟を決めて話せるだけの人間が現れるとは

正直俺もも予想だにしてなかった。

その頭をクダリが撫で始める。そしてノボリもだ。



「ふふっ…ねぇ、ボクわかっちゃったかもしんない。

の軽口とかって、ボクのスマイルと一緒で自分を守る為でしょ?」



「非常にわかりにくいですが、そう考えると全て納得してしまいます。

、これからはその様なものは必要ございませんよ?

本音でどんどんぶつかっていただけた方が、私達は嬉しゅうございます。」



「マジで勘弁してくださいってば、長年被ってきたきたチョロネコを

そうそう簡単に剥がせるるワケないじゃないですかー!」



クスクス笑う声を聞きながらテーブルに額をつけたまま首を振るなんざ

なんとも器用な事をしやがるこいつに、エメットが頬杖をつきながら

ニヤニヤした表情で見つめている。



、耳まで真っ赤ダヨ?ホントのキミってShy Girlなんダネ!

前のもCuteだったけど、今の方がずっとイイヨ。」



「…エメットさん、言っておきますけど見た目はこうでも

実際の精神年齢っていうか、そんなのは貴方よりもずっと上なんですからね?

そんなおばちゃんを可愛いとか、ふざけんなですよ。」



「無駄に年を重ねただけでゴザイマスネ。

精神年齢が大人のLadyが、ソノ様な態度を取るわけが無いデショウ?」



インゴに止めを刺されて撃沈したを見て全員が笑う。

なんだかんだでこんなぶっ飛んだ話を全部受け止めちまったこいつらは

正真正銘の大物だと改めて感心しちまった。

それはもだったらしくて、拍子抜けした顔をしてやがる。


ムウマもネイティもの感情に釣られてすっかり疲れたんだろう

ネイティはクダリの膝の上で、ムウマはノボリのシャンデラのそばで

安心しきった表情で眠っちまっている。



、貴女は話したくなかったと思いますが、

私達は聞いて良かったと思っております。

先程も申しました様に、貴女達が私達の大切な友人である事には

なんら変わりはございません。それだけは忘れないでくださいまし。」



ノボリの言葉に他の連中も頷いた。

それを見たは、この部屋に入ってきた時の沈痛な表情とは違って

スッキリした顔をして、受け入れている。

それだけでも大きな収穫だったんじゃねぇかと、俺もも思った。


まぁ、グダグダ考えたってなる様にしかならねぇんだし

これで自身が、ミッションクリアに積極的になってくれれば

それで良いんじゃねぇのかね?