二章・初志貫徹編
求めよさらば与えられん
俺等は話し終わった後、四人が口を開くのを待ち続けた。
こっちの世界に来てから、かなりの歳月が流れているが
この話をしたのはこいつらが始めてだ。
余りにも非現実めいていて、俺等の存在を否定するって言うなら
それはそれで仕方が無いだろう。
はテーブルに頬杖をついて、は膝の上に両手を乗せて
四人の反応を待っていた。
「自分が大好きな人達と、急に離れ離れになるって辛い事。
ボクもノボリもそれを知ってる。辛かったね。大変だったね。」
最初に口を開いたのはクダリだった。
を見るその目から、涙がこぼれ落ちるのを慌てて袖口で擦る。
「達もとばっちり?そんな感じで向こうでの人生滅茶苦茶にされて
すっごく大変だったと思う。でも、ボクはそれに感謝しちゃう。
そうじゃなかったら、ボク逹はこうやって出会えなかった。」
「えぇ、不謹慎だとは思いますが、私は神ポケモン達に感謝いたします。
貴方達をこちらの世界へ連れてきてくださって有難うと…ね。
私達にとって、貴方達は大切な友人…仲間…で、ございます。
それは、今の話を聞いても変わることはございません。」
そう言って二人はソファーを降りて絨毯の上に座り込み
テーブルを挟んで俺等と真正面から向かい合った。
「前にに言った事がある。それをもう一度、今度は三人に言う。
皆と出会えて良かった。友達になって良かった。キミ達が大好き。
キミ達が大切。この気持ちは今の話を聞いても変わんない。」
「私も、例え天使であろうと悪魔であろうと、モンスターや幽霊であろうと
どの様な姿になっても、貴方達は貴方達であって私の大切な友人でございます。
外見だけではございません。中身や過去の貴方達の全てを含めてです。
それが貴方達でございましょう?何度でも言います。
貴方達が大好きです。大切です。私は自分から友人をやめるつもりなど
この先、何があっても絶対にございません。」
二人の言葉に、俺は不覚にも何も言う事ができなくなった。
俺等を見つめる瞳は、嘘偽りのない真っ直ぐで力強い光が見える。
今なら俺もこの状況を作ったディアルガ、パルキア、アルセウスに
素直に感謝出来るかもしれない。
向こうの世界で、俺等とここまで関わりあう奴はいなかった。
それが、こっちの世界ではこうやって知り合えたんだからな。
「二人ダケ良い所を持って行かないで欲しいナ。
ボクも同じ気持ちダヨ?過去なんて世界が違ってテモ色々あるヨネ?
コッチもアッチもそれは変わらないカラ。問題無いヨ。
ボクは、今ここにいるキミ達を見ているんダヨ。それで良いデショ?」
エメットがソファーの背もたれに身体を預けて笑っている。
確かに、世界が違おうが人に過去はついてまわるんだ
それがどうした?っていう事なんだろう、こいつらしい。
「……貴女に聞きたい事がアリマス。
向こうの世界?で死ぬ事を望んでその通りになりましたネ?
モウ一度、彼等が再び消えた時ニハ、繰り返すのデスカ?」
そう言えば、インゴはの話を聞いている間ずっと
こんな感じで、どことなく怒ってるみたいだったな。
確かに、こいつのとった行動は褒められたモンじゃないが
更に追求する程の事なんだろうか?
「インゴさん?」
「答えなサイ。今デモ貴女は全てを拒絶し続けるのデスカ?」
ノボリとクダリは訳が分からないといった表情をして見ているが
エメットはなんだか複雑な顔をしているな。
これは、インゴの考えている事がわかってるって事なんだろうか?
「…そうですね、向こうの世界であれば私は繰り返します。
でも…こちらではそれは難しいですね。
だって、向こうではいなかった…私を慕ってくれているポケモン達がいます。
大好きなこの子達を悲しませる事はできませんよ。
それに、貴方達がそれを許してはくれないでしょう?
狡い言い方ですが、これがインゴさんの質問への答えです。」
ネイティとムウマを撫でながら答えたを見て、
納得したのか、インゴが満足そうに目を細めた。
「That'll do…それが聞ければ十分でゴザイマス。
ワタクシは気に入ったモノは人であろうと手放さないノデ、覚悟ナサイ。
、、オマエ達も同様でゴザイマス。Conclusion、結論デス。」
上から目線は相変わらずってのが、こいつらしくて俺等は笑っちまった。
俺等の一世一代をかけた告白はなんともあっさりと受け入れられた。
かなり拍子抜けした感が否めないが、それもアリなんだろうな。
「、お聞きしてもよろしいでしょうか?
とはこちらの世界の人間になったと言っております。
では、貴女は?以前から言っている完全勝利するというのは、その…」
ノボリが言いにくそうに切り出した内容に、他の三人もハッとして
を一斉に見つめた。
「えぇ、私がこっちの世界の人間になるためのミッションです。
本来であれば、こっちの世界ででもこうして生きる事はできなかった…
私の寿命は、元々長くはなかったらしいんですよ。」
伏し目がちに、ため息と共に出た言葉に俺は驚いた。
ちょっと待て、その話は知らない。
も驚いてを見てから、俺を見ているが聞いてないぞ。
「どっちみち、大発作で亡くなる事になってたらしいんですよ。
本来であればこっちに来る時、私の場合は死んだ時の姿のまま
大人のままでトレースされて送り込まれるはずだったんですけれど
それをアルセウスが捻じ曲げたんです。それじゃあんまりだろうってね。」
「、てめぇそんな大事な事を今迄黙ってるなんざどういう事だ?!
そんなに簡単に出来るモンじゃねぇってのは、俺達も知ってるんだよ。
だからか?だからてめぇのミッションだけとんでもねぇモンなのか?!」
「やめろ!責めても仕方がないだろう?!
、俺等はその話を知らない。アルセウスとの間に何があった?
あいつはお前になんて言ったんだ?」
がの胸倉を掴んでくってかかるのを、慌てて止める。
今はそんな事をするよりも、話を聞くのが先決だろう。
場合によっては、俺もあいつらを全力でぶん殴る事にするぞ。
「あっちでの私に、無茶苦茶感情移入しちゃったらしくってさ
んで、持病を持っていない時の姿にまでさかのぼって復活させたんだって。
元々凄く慈悲深い神様だったらしいよね。だからなんじゃないの?
当然、そんな事をしたら世界の歪み?そんなのは尋常じゃないんだから
それなりのミッションをって事になったっぽいよ。
後から全力でアルセウスに謝られたもん。すまんかったって。」
「すまんかった…で済ませて良い問題じゃねぇだろう!
ったく、神様なら神様らしくしてろってんだ。
まぁ、そう言う事で捻じ曲げたってんなら、感謝してやっても良いが
それは一発ぶん殴ってからだな。でなきゃ腹の虫がおさまらねぇ。」
「それについては俺もに賛成するぞ。
、反転世界に行って、そこでアルセウスを出してくれるか?
二人がかりで感謝しながらフルボッコにしてやる。」
俺等の言葉にだけじゃなく、ノボリ逹も青ざめた顔をしてるが
当たり前だろう?人の一生を左右するような事を簡単にやりすぎなんだよ。
神様だろうがなんだろうが、やって良い事と悪い事があるだろう。
「だが断る!神様って言っても、今は私の手持ちで可愛い子なんだからね。
それに、ミッションについては私も納得してるんだからオッケーだよ。
っと…ノボリさん、ごめんなさい。すっごく話が脱線しちゃった。」
「いえ、それは…別によろしいのですが…
神ポケモンを、殴るとかフルボッコとか可愛い子と言う貴方達が凄すぎて
私、息をするのも辛い!状態になってしまいました。」
「あはは、ですよねー。でも神ポケモンって言われてても
根っこはポケモンです。全てのポケモンは愛すべき存在でしょう?
っと、さらに脱線しそうなんで戻しますね。
私のミッションについては詳しい事は言えません。
ただ、私達がどうしてリーグ制覇をしてきたか?そこに理由があります。」
それについては説明しても大丈夫だろう。
全ては過去の話で後日談として言えばすむんだからな。
俺ももの言葉に頷いて、姿勢を正した。
これからの話は、多分こいつらにとってはぶっ飛ぶことになりそうだ。
「まぁ、その話を聞いた上でこれからののミッションを
予想してもらえれば助かる。聞かれても答えないからな。
それは俺もも同じで、サポートはできても最後はこいつの問題だ。
そうじゃなきゃ、ミッション自体が不成立になるから気をつけて欲しい。」
一応俺がこの件についてだけは釘を刺しておく。
そうじゃなきゃ、この人の良い連中は絶対手を出そうとするだろう。
だが、それは世界を更に歪める原因になっちまうんだからな。
同時に頷いたその顔は、最初に話し始めた時の様な悲痛な表情じゃない。
それだけでも、話した事は間違いじゃなかったと心の中で胸を撫でおろした。