二章・初志貫徹編 -事実は小説よりも奇なり-

二章・初志貫徹編

事実は小説よりも奇なり



未だにしゃくり上げながら泣き続けるを、が膝の上に乗せる。

よく頑張ったと言って、ガキの頃と同じ様にその頭を撫でている。

コイツは昔からには甘かったからな。

さて、それじゃあ昔話でも始めようじゃねぇか。



「ここから先は俺が話をさせてもらうが、それで構わねぇな?」



未だに驚きを収めきれていねぇ表情が、話が終わった後でどうなるか

場合によっては、ここを出て行かなきゃならなくなるかもしれねぇ

そのままソファーに座りなおす気力もなかったんで

絨毯の上に3人で座ったままの体制で四人をみつめた。



「それは…構いませんが…の話はどういう事でございますか?

貴方達が、その…死んでいると?」



ノボリが一番先に我に返ったらしく、聞いてきた。

他の3人はまだ呆然として、の腕ん中のをみつめていやがる。

俺はローテーブルに肘をつけて頬杖をついてから頷いた。



「その言葉のまんまだ。俺達は元のハイリンク前の世界じゃ死んでいる。

だけどな、そもそもの原因はこっちの世界が絡んでるんだ。」



俺はボールホルダーから5番目、パルキアの入ったボールを取り出した。

そのままテーブルの上におけば、今の状況がわかってるみたいで

ボール全体がうっすらとだが点滅している。

煩ぇよ、この件については俺はまだお前達を許してはいねぇんだからな。



「俺達はハイリンク前…日本って所にいたんだ。

そして北海道…こっちの世界のシンオウとよく似た場所にいたんだ。

まぁ俺は仕事の関係で、ホウエン地方とよく似た九州って所に住んでたがな。

俺達の関係はこっちで説明した通り、幼馴染だ。

についてはその後…こっちでいうスクール時代からの付き合いで

歳食ってからも付き合いは変わらないで続いてた。

それで、俺が長めの休みがとれたんで地元に帰ってきたんだが…。」



「その時、たまたま仕事が休みだった俺と、

こいつを迎えに空港まで行ったんだ。

は仕事があったんで、終わった後で合流しようってなっててな。」



俺の言葉を引き継ぐ形でが口を開く。

そうだ、あの時俺は遅めの夏休みをもぎ取って北海道に帰ってきたんだ。

仕事はやりがいもある、上司や同僚にも恵まれてたが、達とは違う。

仲間ってのはそんなもんじゃねぇのかね。



「空港で達と合流したあと、の仕事が終わるまで時間があったんで

どうせなら、ドライブに行こうぜって話になったんだよ。

そしてこいつの車に乗り込んで、近くの峠を走ってたんだ。

そこは道路の横が山肌が丸見えで。俺達はそこで土砂崩れに巻き込まれた。」



四人が揃いも揃って俺の言葉に息を飲んだ。

まぁ、聞いてて気分の良いモンじゃねぇから仕方がねぇか。

俺はそこでパルキアのボールを指で弾いた。



「その場所は簡単にそんな事が起きるはずがねぇんだ。

だがな、こいつら…パルキアとディアルガが大暴れしちまって

その余波が全く関係のねぇ、俺達の世界にまできちまってたんだとよ。

当然、車は多量の土砂、岩石の下敷きになっちまったんだ。

俺達が生きていられるはずなんかねぇんだよ。

あっちの世界で最期に見た景色が真っ黒に襲いかかってくる大岩とか

冗談じゃねぇぞ、ふざけるなってな。」



全く、今思い出しても腸が煮えくり返るってもんだ。

昔から面倒事なんかは結構あったが、最後の最期がこれなんざ

笑い話にすらならねぇだろうよ。


さて、本番はここからだ。

ここから先は、こっちに来てからの話になる。

それは、こっちの世界でだって有り得ないフザけた話だからな。



「あぁ、終わったなと思ったんだが、そうはいかなかった。

俺達は気が付けば、床も天井も壁も無いような変な場所にいた。

そこは…まぁ、責任を感じたこいつらの作った空間だったんだがな。

最初に目が覚めた俺はすぐに他の連中を探した。

そして、有り得ない状況に思わず固まっちまった。

確かに俺も、他の…もその場所にいたんだがな。

どう見たって、それはガキで元の姿じゃねぇ…

昔のを知らなかったら、別人だったと思っちまってただろうな。」



エメットがOh My God!って言ってるが、それは俺達のセリフだってんだ。

ノボリは口元に手を当てたまま眉間にシワをよせている。

クダリは抱きしめていたネイティから手が外れているし

インゴもいつも不機嫌そうに細まってる目が、これでもかって開いている。



「流石にこいつらも不味いと思ったんだろうな。

だが、こいつらの力じゃどうする事もできねぇってんで泣きついたのが

アルセウスで、俺達の状態はアルセウスが作ったモンだったんだよ。

世界の全てを生み出したって神話は伊達じゃねぇってな。」



俺の言葉に、がホルダーからディアルガの入ったボールを取り出し

同じ様にテーブルの上に置く。こいつも色々言いてぇ事があるのか

ボールがなんだが点滅してやがるが、聞く事なんざねぇんだよ。



「まぁ、アルセウスは俺等を元の状態でこっちに復活させるつもりで

色々と頑張ってくれてたらしいんだがな。

俺や、他の連中の身体の損傷が尋常じゃなかったらしくて

まともな部分を寄せ集めて器を作り直したら、ガキの姿だったって事だ。

全能の神様でも無理な事はあるんだと、その時は思ったもんだ。」



「思ったもんだじゃねぇよ。そこで、状況を説明されてぶっ飛んだろう?

俺達のいた世界じゃ、ポケモンの世界ってのはゲームデータ上の話で

実際にポケモン達は存在してなかったんだ。

だが、実際は平行世界として存在してたって言うんだからな。」



ノボリ逹4人の首が同時に傾がった。

流石親戚で双子同士、そういう所で似通うもんがあるんだな。

いきなり突拍子ももない話が連続してるから、ついてこれねぇか?

俺は4人を見ながら頬杖をついてない方の手を振ってみせる。



「あぁ、今じゃちゃんとその辺は理解してるから

想像上の空想の世界だとか、夢オチか?なんて思ってねぇから安心しろ。

てめぇらは、ちゃんと存在してる。それは紛れもない事実だ。

全く、無関係な別世界の人間を巻き込む痴話喧嘩なんざ勘弁しろってんだ。」



「全く関係ないわけじゃないんだぞ。お前、パルキアから聞いてないのか?

あの時4人でダブルバトル中でそれぞれにパルキアとディアルガ出してたろう

それも関連があるんだって、ディアルガは言ってたぞ。」



確かに俺達はの運転中、こいつの3DSを俺が使って

三人でダブルバトルをして遊んでたのは確かだがな。

それが関係してただと?それこそふざけるなってんだよ。



「こいつを俺の手持ちにしたのは、あん時の腹いせをしたかったからで

話すことなんざ、俺には全くないからしてねぇよ。

そんな事でとばっちりくっただと?後でこいつをぶん殴ってやる。」



当時の怒りが再燃して、無性に腹が立ってきた。

後で反転世界で出してから、問答無用でぶっ飛ばさせてもらおう。



「…ねぇ、パルキアって神様ポケモンだって言われてるよね?

ボク、無性に今パルキアを応援したくなったかもしんない。」



「クダリ、奇遇ですございますね。私もでございます。」



クダリとノボリが怖々と俺を見ているが、知るかってんだ。

俺の事は俺が決める。神様だろうが口を挟ませるわけねぇだろうが。



「まぁ、そんな感じでこっちに来ちまったからには仕方がねぇんでな。

問題は、俺達の外見が未成年だって事で色々と補正はさせた。

住む所、トレーナーカード、こっちでの俺達の過去、色々な。

そして、問題はまだあった。この世界にイレギュラーで入り込んだ

俺達をこっちに受け入れさせる為の手段だ。

このままだと、世界の均衡が崩れちまうってんで消される事になるってんで

条件付きで、元いた世界での俺達を抹消して、こっちにトレースした。」



「…ソノ条件がハイリンクミッションみたいな感じって事なのカナ?」



エメットの質問に俺とは頷いた。

の膝の上から抜け出して、俺達に挟まれる様に座っている。

未だ泣き止まないこいつに、ポケットからハンカチを出して渡す。

鼻はかむなと言えば、かまないよ!と返ってきたが怪しいもんだ。



「まぁそんな感じで受け取ってもらえば良いんじゃねぇか?

流石にバトルや安売りなんざ無理だ。こっちでの俺達はいねぇしな。

ミッションは大体俺達がこっちで生きる為に必要な事になった。

そして、俺達はそのミッションをそれぞれにクリアしたんだ。」



流石にこれだけ長く話すと喉が渇いてきたなと、思っていたら。

ノボリがキッチンからおいしい水をグラスに入れて持ってきた。

本当なら酒が欲しい所だが、話す内容が内容だから無理か。

コップに入ったそれを一口入れて、喉を潤してから話を続ける。



「俺達はそんな感じで、こっちの世界の人間になった。

もっとも精神年齢を言えば、実年齢以上になっちまうんだが

そんな事はこの際大した問題じゃねぇだろう?」



四人の顔を見れば、驚いたものから納得したものに変わっていた。

危惧された恐怖とか異様な物を見る顔じゃなかったんで助かった。

だが一人、インゴだけが眉間にシワを寄せて考え込んでいる。



「インゴ、今の話に納得ができねぇか?

それとも、俺達を化物みたいで気持ちが悪い…受け入れられねぇってか?」



俺が話を振れば、片眉を器用にあげてこっちを見返した。

その後でゆっくりと首を横に振り、しばらく考え込んでから口を開いた。



「見くびらナイで頂きたいものデスネ。

伝説のポケモン、神と呼ばれたポケモンが絡んでいるのナラ

ソノ様な事があったとシテモ、納得が出来マス。

オマエ達の事は理解シマシタ。デスガ…の事は触れられてオリマセン。」



「話には順番ってのがあるだろうが。そう急かすんじゃねぇよ。」



四人の視線を一身に浴びて、が身体を強ばらせる。

あーあ、まだそんな風になるなんざ覚悟が足りねぇんだよ。

肩を二回叩いてやれば、意味がわかったのかこっちをみて苦笑いした。



、心配かけてごめん。うん…私なら大丈夫だから。

だから、ここから先の…私がこっちに来た事は自分で話すよ。」



「別に?俺が続けて話しても構わねぇんだぞ。

また泣き始めて進まないとか洒落にならねぇだろうが。」



、お前は少し言い方を考えろ。

、お前が辛いんだったら俺が代わりに話してもいいんだぞ?」



相変わらずは自分の懐に入れた奴には甘いな。

まぁ、俺もこいつの事をどうこう言えねぇって自覚が無いわけじゃねぇ。

俺らの言葉に苦笑いをして、が首を横に振る。



「いや、私が話すよ。二人には言ってなかった事もあるからね。」



あ?この件で俺等が知らねぇ事があるって言うのか?

俺とが驚いてを見れば、グラスに入った中身を一気に飲んで

ノボリ達の方をゆっくりと見て微笑んでいた。



「私がこっちに来たのは、これまた特殊なんですよねー。」



いつの間にか泣き止んで、傍にいたネイティとムウマを交互に撫でながら

はゆっくりと口を開く。


さて、これから先の話もこいつらはキチンと受け止めれるんだろうな?

そうじゃないって言うんだったら、全員ぶん殴って出て行けば良いだけか。

無意識のうちに指を鳴らした俺を見て、がため息をつく。

てめぇだって似たような気持ちなんじゃねぇのかと見返せば

ニヤリとした笑みが返ってきやがるし…やっぱりな。


こういう思考回路は、従兄弟同士だからなのかは知らねぇが

似たり寄ったりだよなと、つくづく似た者同士なんだと思い知らされた。

さて、物語は続く…続くったら続くんだよ。