二章・東奔西走編
ここにいる理由
スーパーマルチ、最終車両の座席で、バトルを終えてから
ボク達とトウヤとトウコは並んでいつもの様に話をしていたんだけど
「ノボリさんもクダリさんも、駄目じゃないですか!
そんな事をやってたら、さんを向こうに取られちゃいますよ!!」
とがユノーヴァに出張に行ってるって話してから
色々と向こうの事を聞かれたから、説明した。
あっちのボスの従兄弟達の事を話したとたんに、トウヤは怒り出した。
「トウヤ様、落ち着いてくださいまし。
正規の手順を踏んでの依頼でなければ、私達も許可などいたしません。
ですが、事は急ぎの物であって尚且つ達も行くと言ったのです。」
「企業って色々と面倒くさい。嫌だと思う事でもやらなきゃなんない。
ボク達だって行かせたくなかった、だけどそれは無理だっただけ。」
大人の世界って面倒くさいー!って二人が叫んでるけど、ホントだよね。
でも、仕方ないやって思うのは、ボク達が大人になったからなんだろうな。
「さんって、強く頼まれたら断れないから心配です。
トウヤ、私これからちょっとユノーヴァ行ってくる!」
「オレも!オレも行くぞトウコ!
大人の事情はよくわかりましたけど、子供には関係ないですからね。
悔しいけど、まだ大人じゃないですから好きにさせてもらいます!」
「お待ちくださいまし!
イッシュからユノーヴァまで、どの位かかるかご存知なのですか?!」
トウヤ達のこういう行動力がすっごく羨ましいかもしんない。
そう言えばボク達も、旅をしていた時は結構無茶をやってたっけ。
最終駅に到着して、ドアが開いた途端飛び出そうとした二人を捕まえれば
丁度ホームを通りかかったがビックリしてこっちを見ていた。
「両ボス、トウヤ君とトウコちゃんもバトルお疲れ様です。
それはともかくとして、この状況は一体どうしたのかな?」
「二人が出張してる事を色々お話したら、ユノーヴァに行くと言い出しまして
こうやって、クダリと二人で全力でお止めしている所でございます。」
「さん、何をのんびりしているんですか?!
さんが向こうに取られちゃいますよ、そんなの私は嫌ですからね!」
「、助けて。二人共暴走列車になってって困ってる。
ボク達だけじゃブレーキになんない、止めらんない。」
「大人の事情で動けない人のブレーキなんて全力でぶっ壊しますよ!
さんも止めないでくださいね、オレは本気なんですから!」
ボク達に襟を掴まれてジタバタしている二人を見て、は笑うだけだった。
いや、笑い事じゃないんだけど!
「トウヤ君もトウコちゃんも少し落ち着こうか。
そうだ、これから休憩しようと思ってたから事務所においで。
昨日作ったマドレーヌを持ってきたから、一緒にお茶でも飲もうか。
話はそれからでも遅くないと思うよ?」
の言葉に渋々頷いて二人は歩き出した。
それにしても、逆鱗の後のオノノクスみたいな二人を元に戻すなんて凄いと思う。
執務室のドアを開けて中に入れば、がデスクの引き出しから箱を出した。
中を見れば、何種類かのマドレーヌが綺麗に入っていて美味しそう!
「今コーヒーを出してあげるから、好きなのを食べてて良いよ。
ボス達も良かったら休憩して一緒に食べませんか?」
断る理由なんてないから、ボク達もご馳走になる。
うわー、焼き加減とか口当たりとか最高!下手なお店のよりずっと美味しい!
「チョコレートのマドレーヌが激ウマです!凄いですよさん!!
さんじゃないけど、嫁に欲しいって一瞬思っちゃいました。」
「それ、も一緒にご飯食べてる時にノボリに言ってた。」
「…ノボリさん、休憩やめてスーパーシングル行きましょう。
オレ、色々な意味で完全勝利させていただきますよ?」
「トウヤ様、私はサブウェイマスターでございますので
そう簡単に完全勝利されるわけには参りません。
むしろ返り討ちにして差し上げますが、よろしいでしょうか?」
「そこの廃人達、休憩の時位はバトルから離れようか。
トウヤ君もトウコちゃんも、心配しているみたいだけど安心して良いよ。」
ソファーの肘掛けの部分に腰を落としながらは笑ってる。
ボク達も色々心配だったからなんでそう言えるのかが知りたい。
何か言おうとしている二人を片手を上げて止めた。
「まず一つ目に、俺達は各地のリーグ制覇を趣味みたいにしてる。
俺は制覇したけど、あの二人はまだ始めてもいない。
この状況でイッシュを離れるのはまず考えられないよ。
尤も、はそろそろジム巡りを考えているみたいだけどね。」
のジム戦とか見てみたいな、そうだアーティとかカミツレの所なら
頼んで見せてもらえるかもしんない。
でも、リーグ制覇を趣味だなんてそう簡単に言っていいのかな?
「二つ目に、ここの職場は三人揃って部署として成立しているんだよ。
誰か一人欠けても、保全管理課は継続出来なくなるからね。
そんないい加減な事を俺達は出来ないし、するつもりもないよ。
大人の事情には色々あるけれど、逆手にとる事だって簡単なんだよ?」
流石さん!なんて言ってトウヤが感動してる。
その横で、ノボリも一緒に頷いていた。そうだった、ボク達にはがいた!
なら、ぜったいにあの従兄弟達の思い通りになんてさせない。
「三つ目、これが最後かな?俺達はイッシュでやる事があるからね、
それを終わらせない限り、絶対にここを離れる事は出来ないんだよ。」
達はボク達がここの正職員を勧めた時にも、そう言って断ったっけ。
だとしたら、インゴ達がどう言ったって首を縦には振らない。
横でノボリがそうでございましたって呟いてるけど、ボクも忘れてた。
「それって、さんも言ってました。さん達も一緒なんですか?」
「オレ達には喧嘩で完全勝利しないとダメなんだって言ってました。
さん、それってお手伝いできますか?さんが心配なんです。」
二人は最初から手伝う気満々だったもんね、勿論ボク達もだけど。
問題はそれを三人…特にがオッケーしてくれるか?って事だよね。
「二人共、の外見と雰囲気で勘違いしてるから言わせてもらうよ。
あいつはいい大人なんだよ?それも面倒事に関しては、百戦錬磨の強者だね。
君達の出番なんて無いと思った方が良い。」
二人の目が見開かれた後で、なんだかやるせない表情になる。
子供の出る幕じゃないって、はっきり言ってるのと同じだもんね。
でも、の話にはまだ続きがあった。
「この件はがやらなきゃならない事で、誰も手出しができないんだ。
そう言う事もあるって、トウヤ君ならわかるんじゃないかな?
実は俺達もサポート役でね。だから、応援はいくらあっても大歓迎するよ。」
その話は初めて聞いたかもしんない。
一体何をするつもりなんだろう?っていっつもノボリと一緒に思ってた。
だけど、ボク達が聞いても答えてくれないと思う。
だから、三人が言ってくれるのをずーっと待ってるんだ。
「…応援だけとか、すっげーイヤだけどさんの言うこともわかります。
わかりました、オレ達は全力で応援させてもらいますから!」
「私も、さんが完全勝利するために全力で応援します。
私達、さんが大好きですから少しでも役に立ちたいんです!」
「ふふっ…、英雄さん達の応援付きなんて心強いよ。
さぁ、二人共安心しただろう?ユノーヴァに行こうなんて考えないで
今度はあいつらがいる時にチャレンジにおいで。」
トウヤとトウコは同時に頷いてから執務室を出て行った。
帰る時に、マドレーヌをお土産に持たされて喜んでる所はまだ子供だよね。
「そういう訳だから、ボス達も不安になる必要はないよ。
あの二人は特に束縛を嫌うからね、二人の…特に黒ボスの態度は逆効果で
それこそ、ユノーヴァの二人の思うツボになってしまうよ?」
ドアが閉まるのを待つようにして、はボク達に言った。
そう言えばは縛られるのが嫌いだって言ってたけど、もなんだ。
っていうか、を縛り付けるのってすっごく大変だと思う。
「、私は別にそんなつもりでは…」
「自覚が無いのは余計にやっかいだよ?
さっきも言った様に、俺達はイッシュを離れるつもりはないからね。
もも、ギアステが気に入ってるんだよ、勿論俺もね。
二人が俺達にここから出て行けと言わない限りはお世話になるつもりだよ。」
「そのような事は絶対に言いません!
私は三人とずっと共に在りたいと思っております。
先の事は全くわかりません、ですがこの気持ちだけは確かでございます。」
「うん、ボクもノボリとおんなじ気持ち。
どんな事があっても、何が起きても、三人とはずっと友達。」
ボク達の言葉を聞いて、は凄く綺麗な顔をして笑った。
その表情はと似ていて、従兄弟同士って似るものなかなって思った。
「トウヤ君達の前で言うと騒がれそうだったから黙っていたけどね、
ここを離れない最大の理由はボス達がいるからですよ。
俺達にとって、二人のその気持ちは凄く効果絶大なんですよ?
最大級の信頼を貰って、それを裏切るなんて事は俺達は絶対にしません。
この先、どうなるかなんて俺には全く予想もできませんが
それだけはどうか何が起こっても覚えていてください。」
の言葉に何か言い返したかったんだけど、上手く言葉が出てこない。
すっごく胸が暖かくなって、それと同時に今迄悩んでた事も飛んじゃった。
だからボクは、とびっきりのスマイルで頷く。
隣のノボリも、いつもの仏頂面はどこ?って感じで笑って頷けば
満足そうな顔をして、も頷いてくれた。
「さて、そろそろ二人が戻ってくる時間だね。
あのお騒がせ娘が何も向こうでやらかしてないと良いんだけど、無理かな。
もフォローをするつもりで、さらに引っ掻き回す事もあるからね。
面倒事は勘弁して欲しいけれど、そうも言ってられないのが辛いよ。」
「こういってはなんですが、それが簡単に想像出来るのがなんとも…
もも、自分から苦労を買って出ると言いましょうか
貧乏くじを引きたがるといいましょうか…で、ございますしね。」
「ノボリ、それを言っちゃどーしようもない。
だって、それがだし。諦めた方が良いかもしんない。」
帰ってきてからの報告が怖すぎるって言って、とノボリは笑ってる。
いや、笑い事で済めば良いんだけどって思うのはボクだけなのかな?
各部署からの書類を見ながら、今日が平穏無事に終われますようにって
祈ってしまうのは仕方がないと思う。
でも、その祈りは届かないんだろうなとも思いながら
書類にサインをして、処理済みのボックスへ放り込んだ。