二章・東奔西走編 -平社員、出稼ぎ中-

二章・東奔西走編

平社員、出稼ぎ中



ユノーヴァに来て、いきなりハプニング発生には参っちゃったよ。

正直、この体質のせいで色々損な事ばかりで嫌になる。

でも、今更そんな事を言っても始まらないから、さっさと仕事をしようっと!



「さてと、早速ですが厨房のお昼の繁忙時間はもう落ち着いたでしょうか?

そっちに行って、状況を確認させてください。」



「宜しいデショウ。脚立や作業に使う物ハ、全て用意してありマス。

図面はコチラで、サイズ等については正しいのかは不明でゴザイマス。」



インゴさんから大体の説明を受けて、エメットさんに案内をしてもらう。

他の職員達には私達の事を通達済みとは言え、特例なんだろうな

すれ違う度に好奇の視線にさらされてるよ!



「ココが厨房ダヨ。」

『Johnny 、彼等が今日話したイッシュの施設保全管理課の職員だよ。

丁度お客様の流れも途切れた様だから、色々点検させてもらうよ。』



おー、こっちの言葉で部下に説明をするエメットさんは雰囲気が違うね。

ジョニーさんと呼ばれた人がここの責任者らしい。

彼は私達に挨拶をして、それぞれに握手をする。



『はじめまして、突然の事で驚かれているとは思いますが、

早急に改修する様に頑張らせて頂きます。

勿論、皆様のお仕事の邪魔にならない事を第一にしますが、

何か問題がある様でしたら、遠慮なくおっしゃって下さい。』



『Bossから聞いた時は驚きました。自分達の事は二の次で構いませんので

ギアステの安全を第一に優先して下さい。』



『はじめまして、それについては勿論です。

俺達はそちらのリスクを減らす為にきたのですから、任せて下さい。』



私とがこっちの言葉で話すのをエメットさんは驚いて見てるし

話せないなんて一言も言ってないもんね、発音に自信はないけど!



「二人共、コッチの言葉が話せるノ?」



「日常会話程度なら、それもゆっくりですけど。

でも、発音に自信がないのでツッコミはいりませんからね。」



「医学書なんかは結構こっちの言葉の物が多いからね。

旅行者が急病で運ばれる事もあったから、ある程度の地域の言葉は話せるよ。」



「ホント、委託業者ナンテ勿体無いヨネ!

それじゃあ、バトルの呼び出しが来たカラ、後は任せても良いカナ?」



エメットさんに凄く感心されたけど、そんな大したものじゃないんだけどな。

了解しましたと言えば、エメットさんは急いでホームに向かった。



『それでは、さっそくダクトの中の汚れのチェックからさせてもらいます。

換気扇から変な音がしたりしませんか?吸い込みが弱いとかは?』



必要な事を色々聞いて、中に入れば向こうの厨房よりもかなり汚れていた。

これはまず初めにダクト洗浄からした方がいいかもしんない。

次に、天井の点検口を開けて中に入る。

ダクトの厚みを確認すれば、全然足りないし。ふざけるなっつーの!


換気扇の吸気部分から、排出口までの長さを測ってメモをする。

図面を見て、ダクトのサイズの確認をしてから手抜きが無いかもチェック。

うん、こっちのダクト業者さんはまともでホッとしたよ。


天井裏から出て、今度は天井のボードと壁のボードの素材を確認する。

これは向こうと同じ物を使っても大丈夫そうかな?

必要な数量を計算して、更にメモに書き込む。



『こちらのボスから厨房の休日が近々あると聞いています。

それを利用して、修繕をしますが事前にダクト洗浄を考えています。

そして、休前日の就業後にこの辺りの荷物類を片付けて欲しいんです。

移動が無理な物は、汚れない様にこちらでします。』



『ダクト洗浄も貴女達がするのでしょうか?』



『いいえ、それはこっちの業者さんにお願いするつもりです。

就業後にやってもらえるので、業務に影響は出ないと思いますよ?』



厨房の管理者さんの質問に答えながら、メモをに渡せば

受け取った内容を確認しながら、材料の発注をするのに部屋を出て行った。



『いくら休日と言っても、次の日の為の仕込みにはこられますよね?

それは大体何時位ですか?…あぁ、それなら間に合うと思います。』



そう話して、場所を食堂に移して図面を広げながら説明をしていく。

あっちでも同じ様な事をしたから、説明自体は楽なんだけど

なんとも、言葉の方で苦労するよ!



『こちらの予定としては、休前日にボードと保温板の取り外しをして

下準備をしてから、休日に作業を全て終わらせるつもりです。

後で、作業の工程表をこちらのボスに提出しますので確認して下さい。』



打ち合わせを終わらせて、食堂を出てから気が付いた。

私、インゴさん達の執務室の場所わからないよ!うわー、どうしよう。

アレだ、とりあえすここは帰巣本能を信じてみよう!


思いつくまま歩いていたら、前の方からインゴさんが歩いてきた。

良かった、これで執務室まで戻れるよ!



、こんな所に何か用デスカ?」



『いえ、食堂を出たのは良いけれど執務室の場所がわからなくて…

それで自分の勘を頼りにここまで来たんです。』



インゴさんも私がこっちの言葉を話せるのに驚いたみたい。

ちょっと眉間に皺が寄ったから、発音とかアレなのかな?



『…無理して、こちらの言葉で話す必要はありませんよ?』



『一応、執務室以外ではこれで通させて下さい。

郷に入っては郷に従うで、ここに滞在中はこちらの言葉を使います。』



やっぱり、どっか変らしい。でもそこは知らないフリをしてもらおう!

インゴさん達だって向こうにいる間は向こうの言葉を使ってるもんね。



『そう言う所は評価できますね。管理者との話は終わりましたか?

他に、何か私達でお手伝い出来る事があれば聞きましょう。』



『換気扇のダクトがかなり汚れています。

これも放置すると火災の原因ですから、洗浄する事をお勧めします。

ただ、日数的に私達は出来ませんので、こちらの業者に頼んでください。』



こちらの業者という言葉にインゴさんの表情が険しくなった。

相当な不信感を持ってるんだろうな。仕方ないだろうけどね。


執務室に戻れば、エメットさんもバトルを終わらせて戻ってきていたから

同じ事を説明したら、同じ様な反応をされちゃったよ!



「どうせナラ、達にやって欲しいナ。それはどうナノ?」



「あっちの業務と平行しての作業はちょっと無理です。」



執務室に戻ったんで、普通に話させてもらう事にする。

脳内変換とか得意じゃないんで、何気に疲れるんだよねー。


エメットさんがデスクの引き出しから書類の束を取り出して

難しい顔をして見始めるんで、私もちょっと覗かせてもらった。

そこには設備関連の会社の名前と代表者が書いてあって、

いくつかの業者の所には赤線が引かれていた。

これは、あのとんでもない見積もりを出した所なんだろうな。

も一緒に覗いていたら、急にある業者の所を指差した。



「これって、の弟子の名前じゃねぇか?」



業者の名前を見れば確かにそうだったりする。

あの子は凄く小回りが利いて、色々と一生懸命だったらか覚えてるよ。

会社名をみたら、シンオウに縁のある名前だからそうかもしんない。



「エメットさん、ここに連絡するのを私がしても良いですか?

もし、うちらが知ってる子だったら安心して任せられますよ。」



「ホント?OK!に任セル。」



こっちの業務用のライブキャスターを借りて

書類に書いてある番号に連絡すれば、凄く綺麗な女の人が映った。

あ、これはちがうかもしんない。あの子、女のコ苦手だったからなー。



『失礼します。私、ニンバサシティのギアステーションで

施設保全を頼まれた者ですが、社長さんはおりますか?

シンオウのと言っていただけると話が早いのですが…』



少し待っていたら、急に見た事のある顔が映し出された。



「姐さーん!マジっすか?!いつコッチに来たんすかー!」



ハイ、の弟子だったよー。

知ってる顔よりはちょっと大人びてるけど、間違い無い。



「こっちには依頼を受けて出張にきたんだよね。

久しぶりだねー、元気だった?つーか、なんでユノーヴァに?」



「シンオウでこっちの子と知り合って結婚したんすよ!

女房の親がこっちにいるから、身寄りの無いオレが来たんです。」



うちら、弟子に先を越されたよ!いや、別に良いけどさ。今は仕事の話だ。



「ダクト洗浄って、君の所でやってる?

もしそうだったら、ちょっと急ぎで頼みたいんだけどなー。

…んとね、ニンバスシティのギアステーションの厨房ダクト。

一週間後に私とでダクト保温とボードの改修するんだ。

その前までにやっておいて欲しいんだよね。

あ、ちょっと待って。トップの人と変わるから話進めて。」



見積とか聞かれたんで、ここから先はエメットさんに渡した。

色々と話をしてから満足そうに通話ボタンを切ってる。



「ウン、良い感じの業者ダネ。明日見積もりに来るってサ。

簡単な料金の説明もあったケド、良心的ダシ任せると思うヨ?」



「それは良かった。見積に来た時にでも言っておいてください。

ダクト保温の時にチェックするから、半端すんじゃねーよって。」



「アハハ、了解。他に今日中にやる事はあるの?」



「そーですね。今日の作業報告書を作る事位でしょうか?

材料チェックはしなくても済みそうなので、省略できるし

本番のダクト保温とボードの張替えの工程表と、計画書は

後日向こうから送らせてもらいますね。」



多分、この二人はあの子の事を気にいると思うな。

の弟子って言うのは仕事の腕もみっちり教えられているけれど

それ以上に、仕事への取り組み方をガッツリ叩き込まれてるからね。


自分の境遇のせいか、身寄りがなかったり、家庭環境に問題がある様な

そんな世間一般では、はみ出し者と言われてる人たちに手を差し伸べて

そして、きちんと自分の足で立って生活出来る様に。ってしてた。



『手に職を持って、尚且資格を持っていれば生きていける。』



ってのが、の持論だし、事実その通りだと思う。

だから、弟子の人達はの事をアニキって慕ってるんだよね。


そう言えば、弟子の子達は私の事も姐さんって全員呼んでるな。

何人かの子達には保温の指導もガッツリしたからわかるんだけど、

それ以外の、一緒に仕事をしてない子達からも呼ばれてるっけ…

なんだろ、なにかしたかな?これってどういう意味なんだろ??



、なんだか難しい顔してるケドどうしたノ?」



エメットさんが隣に来て、聞いてきたんで

疑問に思ってた事を話したら、クスクス笑い出しちゃったよ?



「師匠のが一目置く様な人物だからデショウ?」



「ウンウン、仕事をしてる時ノって格好良いからネ。

きっと憧れトカ、尊敬してたんじゃないカナ?」



「てめぇの男前っぷりに全員が惚れ込んでたんだ。

アニさんって呼ばれねぇだけでも、良かったじゃねぇか。」



そんな事初めて聞いたよ!つーか男前とか男に言われるって、どーよ?

仕事に男女は関係ないけど、微妙に嬉しくないってば!