二章・東奔西走編 -主任のCure&Care-

二章・東奔西走編

主任のCure&Care



ダブルバトルの接待が終わって執務室に戻る時にとすれ違う。

様子がおかしいんで、問い詰めれば渋々白状しやがった。

白ボスはそういうつもりで言うはずがねぇだろうと言えば、

そうなんだけどね、と苦笑いをして首を振る。



「いい加減、くだらねぇ事で拗ねるなんざやめちまえ。

ここの連中はキチンとてめぇを評価してるだろうが。」



「そんな事わかってるよ。ちょっと一服して頭冷やしてくるけどさ、

執務室に残ったが心配なんだよね。

ボス達に喧嘩吹っ掛けてたら止めてくれる?お願い。」



そう言っては俺を拝んでから、足早に喫煙所の方へ向かった。

ったく、止めるのはめんどくせぇんだぞ!



「──問答無用で殴られますね。その位の事をしたんですから。」



執務室に戻れば、案の定萎れた白ボスに向かって追い打ちかけてやがるし。



「ただ今戻りました。…やっぱりてめぇは追い打ちかましてたか。

とすれ違って頼まれたから、ストッパーになってやるよ。」



俺はかなり頑張ったと自分を褒めてやりてぇよ。

を諌めて、白ボスを慰めてってそんな感じでフォローにまわる。

その後の事は、飯を食い終わった後にが白ボスに謝って。

白ボスが更に謝って、この件はやっと終わったんだ。


それからは仕事を進めながら、明日の出張の段取りを済ませて

時々接待の呼び出しを受けて業務を終わらせた。

一夜明けて、出張前に材料業者に発注を済ませ、ある程度の仕事をする。



「Hello、迎えに来たヨ!コッチに来るのはで良いんだよネ?」



インゴの言った通り、きっかり正午に迎えは来た。

相棒はオーベムか…テレポートはタマゴ技だし、よく育ててやがる。



「態々有難うございます。変更はありませんのでよろしく頼みます。」



、その口調はボク嫌いダヨ?いつも通りに戻して欲しいナ。」



「今回は仕事絡みですからね、それじゃ筋が通らないので勘弁して下さい。

それ以外の時は、今まで通りにさせてもらいますから。」



「こんにちは!今日はよろしくお願いします。オーベムもはじめまして!

仕事と普段の区別は必要ですよー。特にうちらはね!」



仕事絡みと聞いて、エメットも納得したみたいだな。



「ノボリとクダリ、今回は要請に応えてくれてアリガト!

ココも忙しそうだケド、コッチも大変だからちょっと二人を借りるネ。」



「困った時はお互い様でございます。

ですが、あまり二人に無理を言わないで下さいまし。」



「うん、こういう要請ならボク達はいつでも応える。

だけど、二人はここの職員なんだから、向こうのやり方を押し付けないで。」



「両ボスとも、俺達は子供じゃないんですから。

エメット、よろしく頼むよ。場所を覚えさせるためにもポケモンは

出して置いた方が良かったよね?」



「ウン。インゴが待ってるカラ、もう行くヨ。じゃあネ!」



エメットのオーベムが淡く光りだして、俺達を浮遊感が襲う。

眩い光が俺たちを包んだ後に、例えようのない衝撃が身体に走った。



「うぎゃっ!」

「Wow!」

「おっと、」



どうやら、目的地に着いたは良いが、着地に失敗しちまったらしい。

折り重なるように、俺達は倒れ込んじまった。

一番下のは、ネイティが押しつぶされない様に両手を使ってたらしく

したたかに身体を打ち付けたみてぇだ。


一番上だった俺が立ち上がると、目の前でインゴが驚いていた。

書類が積まれたデスクが2つの所を見ると、執務室っぽいな。



「ちょ、エメットさん離れて、どいて!重い、重いですー!」



「エー、もうチョットこのままでいさせてヨ!

ッテ細いケドGlamourous!コレハ癖になりそうダネ。」



に倒れ込んでるエメットの顔が丁度胸の位置にあるんで

これ幸いにエメットが頬擦りすれば、色気も糞もねぇ悲鳴が上がる。

この光景はアレだ、パフパフだ。エメットがすげー嬉しそうだな。



「…エメット…蹴り上げられたく無いナラ、直ぐにどきなサイ。」



「Boo!インゴ、代わってあげようか?凄くイイヨ!って、?!」



起き上がろうとしたの身体が崩れ込む。

エメットが慌てて身体を支えて、インゴが驚いてそばに駆け寄った。



「頭か何処か強く打ちマシタカ?、大丈夫デスカ?」



「うー、どこもぶつけてませんので大丈夫…?」



「疑問形自体がおかしいだろうが、ったく、どっちの方だ?

あぁ、エメットはあまりの身体を動かさない様にそのままで。

インゴ、医務室じゃ無くても良い。こいつを寝かせられる場所は?」



について来てもらって正解だったかも…良性の方。

うー、グルグルして気持ち悪い…。」



「隣の仮眠室を使って下サイ。、どう言う事デスカ?」



よし、それなら直ぐに治せるから助かるぜ。

それにしても、昨日から俺は色々と活躍しすぎじゃねぇのか?



「じゃあ、エメットはそのままを仮眠室へ運んで。

寝かせなくていい、むしろ座らせたままに。

こいつの持病みたいなもんです。治せるんで、ちょっと時間が欲しい。」



エメットがそっとを抱えて仮眠室へ向かう。

インゴが先回りをして、仮眠室のドアを開けて中に入り

ベッドサイドに腰を下ろしたの身体を倒れ込まないように支える。



「よし、そのままで動くなよ。右と左どっちだ?」



「右…」



「了解、ちっとばかり我慢しろよ?」



の頭を右に向かせてそのまま仰向けにゆっくりと倒す。

たったこれだけだが、眩暈が酷ぇ様だな。眉間に皺がよってやがる。


反対側のベッドサイドから頭が出た状態にしてそのまま少し待てば

少しの時間で眩暈がとれてきたらしい。

が片手を挙げて合図してきたんで、そのまま今度は顔を左に向けて

右耳の後ろの骨の出っ張り…乳様突起を軽く2、3回指で叩く。


次に襲ってきためまいをやり過ごそうと身体が無意識に動くが

それはインゴが傍でこいつの身体を拘束してるから助かるぜ。


この治療法はすげぇ有効なんだが、顔の向きを変える度に

眩暈の発作がでるんで、やられてる本人にはかなり辛いらしい。

再度からの合図を待って、今度はそのまま左側を下にして

横向きにさせてしばらく待つ。合図が来たらゆっくりと座らせる。



「…どうだ?」



インゴに身体を支えられながら、は何度か首を動かした。



「うん、治ったみたい。インゴさん、エメットさんご迷惑をかけました。

もありがと、帰ったら食堂でパフェ奢るわ。」



、ホントに大丈夫?いきなりでボク、状況がわからないんだケド。」



「持病と言いマシタガ、病院に連れて行かなくても宜しいのデスカ?」

、今の状況をワタクシ達にしっかり説明シナサイ。」



いきなりブッ倒れたようなモンだから、二人共かなり焦ったんだろう。

それにしても、難儀な体質だよな。いや、体質じゃねぇな。

これの原因は、そもそもそんな生易しいモンじゃねぇ。



「コイツは昔から耳の平衡機能に問題があるんですよ。

後天的なモンですが、完治はできません。だから乗り物にも弱いし

今の様なBPPVっていう眩暈の発作を時々起こすんですよ。」



「テレポートの衝撃でって事ナノ?Oh…ゴメンネ?」



「今日は仕事をするノハ無理デハ?休ませるべきデショウ。」



インゴとエメットが心配そうにを見ているが、

本人はもう、症状がなくなったのでいつもの調子を取り戻していた。



「いや、もう大丈夫なんですよー。この発作はさっき

やってくれた事をすれば、大抵治っちゃうんですよね。

だから、今の私はもう普段と変わらないんです。オッケー!です。」



「Hmm…、ソレデが付き添うと言ったのデスネ。」



凄いネ!まるでDoctorみたいだったヨ。」



「前に話していませんでしたか?俺はドクターでもあるんです。」



俺の言葉に、双子は目を丸くして驚いている。

最初会った時はかなりポーカーフェイスだったが、

今じゃ、従兄弟のボス達と変わらない位には表情が読み取れて面白ぇな。



「「Really?」」



「That's sure. 事実だよ。

尤も、もう現場に戻るつもりはないから、資格の上での名称だけどね。

まぁ、二人になにか困った事があれば聞く位はしてあげるよ。」



勿体無いとエメットに言われたが、そんなモンは価値観の違いだろうが。

命のやり取りなんかより、バトルでのやりとりの方が俺にはあってるし

なんの未練ももっていねぇしな。



執務室でコーヒーをもらって、ソファーに座る。

はインゴから紅茶をもらってのんびり笑っている。

こうやって、気心の知れた仲間が穏やかに笑っていられるなら

面倒事でも仕方ないから、引き受けてやろうじゃねぇか。