二章・東奔西走編 -平社員、不幸の書類を受け取る。-

二章・東奔西走編

平社員、不幸の書類を受け取る。



午前中は要望書とか修繕依頼書なんかをざっと見て

午後から下見をする予定をたててみる。

ランチタイムになっても、両ボスもも帰ってこないよ!

放置プレイ?上等じゃないの、目一杯平和を満喫してやんよ!


今日は昨日下ごしらえに来た厨房の人がお礼にランチを奢ってくれるって

言ってたから、食堂にむかう。



「うん、大盛況だね!商売繁盛万々歳とか素敵すぎる。」



席を探してキョロキョロしてたら、一番奥のテーブルから

手を振る一団が見えた。あれは整備班の人かな?



「おう、がここに来るなんて珍しいな。」



ダブルトレインをメインに点検担当してる人がベーグルを食べながら

ニヤニヤしてこっちを見てる。



「休出で厨房の修繕してたら、お礼にランチ奢ってくれるって言われてさ

人の作るご飯は自分が作るより美味しいからね、お言葉に甘えました!」



とか、課長は相変わらずのバトル接待三昧か?

あの二人、ノーマルはもちろんスーパーでも無敗らしいじゃん。」



「アレだな、いっそこのまま連勝記録更新すればいんじゃね?

バトルレコードで見せてもらったけど、完全に遊んでても勝つんだぜ?」



そりゃそうだ、お互いに自分が得意なバトルの車両に乗ってるんだし、

それでも、手持ちは本気メンバーじゃないんだけどね。



「おーっす!来てたんだな。ホラ、これがお礼のランチだぜ。

課長に聞いたら結構食うって言うから、量も増し増しだぞ。」



なんだか皿から色んなものが溢れてるのは気のせいじゃないよね?

でも、全部美味しそうだから遠慮なくいただくよー!



「すっごい!量もそうだけど美味しそー!

でも、私は仕事をしただけなのに、こんなにしてもらって良いんですか?」



「良いって事よ、はボスの一件でもすげー頑張ってただろ?

その頑張りへのご褒美もプラスしてると思ってくれ。」



そう言って厨房の人は私の頭を撫でて戻っていった。

イッシュに来てから、なんだかよく頭を撫でられるんだよね。

シンオウじゃ結構身長高い方だったんだけど、こっちじゃねー。

マジで種族値の違い、半端ねぇっす。

両手を合わせていただきますをして、まずはローストビーフを口にする。



「うわー、ギアステの食堂の評判が良いってのに納得!

火の通し加減といい、ソースの味といい、変なお店よりずっと美味しい!

うわわ、このあさりのリングイネとか味付け最高!」



一心不乱に手を動かしていたら、何だか視線を感じて顔を上げたら

一緒のテーブルについている整備班の人達がニヤニヤ笑ってる。



「え?もしかして食べたいとかですか?一口なら良いですけど

それ以上は駄目ですよ、私が全部食べますから!」



「ちげーよ、すげえ美味そうに食うなと思ってな。

普通お前位の歳だと、ダイエットだなんだとか言って食わねえじゃん。

それをまぁ、次から次へと食いまくってるしよ。」



に女を求めるのが無駄だろーよ。一口なら良いんだな?

オレ、そのローストビーフ食いてえ。」



何気に失礼な事を言うなこん畜生、でもこんな軽口の応酬も楽しいよね。

ローストビーフをフォークに差して目の前に差し出せば、驚いている。



「タダ飯でしかも美味しい物を食わずにいられるかってんですよ。

ローストビーフですね?ハイ、どーぞ!美味いでしょー?」



「…ワザと…なんてするワケねーよな。無自覚とか無意識とか怖ぇ!

、お前鈍いとか言われた事ないか?」



その言葉に周りの人が何だか頷いてるけどなによ?



「えー、気配り上手だねって褒められるのに、鈍いとかなんでよ?!」



「いや、お前に聞いたオレがバカだったよ。しかしうめーなコレ!」



まだ食べたそうにしてるけど、もうあげないもんねー。

でもギアステの食堂、マジで美味しいな。

今度から弁当作るのやめて、ここで食べるようにしよう。

トマトとチーズのサラダを食べている時に、急にインカムに通話が入った。



『こちら総務部長だ。保全管理課の、至急総務まで来るように。』



インカムでの呼び出しに、皆が一斉に私を見る。

うわー、私なにかやらかしたっけ?心当たりは無い!…ような?

尚もほうれん草のオムレツを食べていたら、皆が心配しだした。



「お前、呼び出しくらってんのに食い続けるとかどうなんだよ?

総務部長の呼び出しなんて、何をやらかしたんだ?」



「またダークライと対決でもするのか?

何度も勝てるような相手じゃねーから、気を引き締めて行けよ。

って、おいおい、まだ食うのか!」



「えー、せっかくのご飯がもったいないですよ!

総務部長さんは逃げないけど、ご飯は逃げます、鮮度が命でしょう!」



大体ご飯時に呼び出す方が悪い!と私が言えば皆があーって顔するし。

絶対完食するまで動かないからね!



『こちらノボリでございます。保全管理課の、聞いておりますよね?

大至急、総務までいらしてくださいまし。大至急でございます。』



…さようなら私の素敵な昼ごはん。ノボリさんのあの口調からして

なんだか怒ってる気がするのは、間違いじゃないと思う。

残り三分の一の美味しいランチを食べますか?と聞いたら

後は任せろと言われたよ。畜生、食べ物の恨みは怖いんだからね!


不機嫌丸出しってわけにもいかないから、平静を装って総務に行けば

人事部長さんが別室の方を指差した。うわー、本格的に嫌な予感がする。



「失礼しまーす。すみません、食事中だったので遅くなりました。

って、お偉方が揃ってるとかどうしたんですか?」



研修室には両ボス、総務部長、がそろい踏みをしていた。

そして、全員が苦虫を噛み潰した様な顔をしている。



「まずはこれを見て、君の意見を聞きたい。」



総務部長さんがくれた書類を見れば、とんでもない写真が写っていた。



「この壁の変色って…、いや、これはマズイですよ!

この色からして、かなり壁の中が危険な状態になってるはずです。

どの部署ですか?早急になんとかしないと火災の原因になりかねません!」



厨房の壁の変色とは比べ物にならない位の濃い変色は、そのまま

熱が伝わってるって事になる。でも、そんな書類もらってないんだけど?



「あのね、その場所は厨房の換気扇近く。」



「は?いやいや、こんな酷い変色してませんってば。

それに昨日、完璧に補修したばかりです。おかしいでしょう。」



「厨房に間違いはございません。正確にはユノーヴァの、でございます。」



「はい?」



「まだ、書類は途中だろう?全部読めばわかると思うぞ。」



慌てて書類を読み続けていけば、その中身は

先日インゴさんが視察をした時に、厨房の状態を見せて説明を受けた後

ユノーヴァに戻って自分の所の厨房は?と見たらこの状況だったらしい。

そして、各専門業者の見積が出てるんだけど、ビックリしたよ!



「何この見積もり…ふざけてるの?馬鹿なの?」



ダクトチェックと保温材の交換、ボードの張替えになんで5日間?

こっちは1週間とかよく恥ずかし気も無く、こんな見積もり出せるよね。

そして、金額も驚いた。これ、絶対暴利でしょ?

公共機関機密事項の、秘密厳守の徹底に対する保証金とか何ですか?

材料の単価とかも絶対にぼったくりしてる。



「こんな業者がいるとか、保温屋のプライドってものが無いの?

なんでこうも質の悪い職人…ううん、悪徳業者が多いのかなぁ…」



厨房は向こうでもやっぱり利潤の大きい所だから出来るだけ

休みにしたくないって、一日休んだ場合の損失が書いてある。

うわー、これは休ませたら痛いでしょうね。


そして、こっちに視察に来た時の材料の単価や、改善計画の書類の件が

書いてあって、そっちでそれが出来るのなら、こっちもやって欲しい…

はい?もう一度書類を見れば、滞在中の宿泊費も材料も全て用意するから

うちらに出向してこいだと?あの二人は一体何を考えているのー!



「…はこの件についてどう思うの?」



「こんな低レベルの業者しかいないとは考えられないんだがな。

それでも、この状況は急がなきゃまずいだろう?

後は、この手紙が入ってきていてな…完全にしてやられたんだよ。」



そう言ってギアステのマークの入った用紙を差し出した。

文章は…良かった、こっちの言葉だった。



〈当施設の男子トイレに配置したオムツ換えスペースの視察と

データーベースから転送した書類をどの様に活用したかの報告も兼ねて

ライモンシティ、ギアステーション内の施設設備保全管理課職員の

ニンバスシティ、ギアステーションへの出向を要請する。〉



…これはインゴさんからですね。畜生、随分簡単にデーターベースに

アクセス許可してくれると思ったらこういう事ですか!



〈低レベルな業者に、大事な施設の修繕を任せることは難しく

先日視察した際、そちらの施設の保全状況に大変感銘を受けました。

その時に拝見した厨房施設の修繕案の日程であれば、

当施設における損失も最小限に食い止めることが可能でございますので

是非ともご協力をお願いいたします。〉



…こっちはエメットさんですね。ガッツリと正規の要請書とか。

これは、うちらの判断だけで動けるものでもないでしょう。



「これは私がどうこう判断すべきものではありません。

皆さん方は、この件をどうなさるおつもりですか?」



「この様な状況で、さぞやあちらでも不安な状況が続いてるでしょう。

そして、業者の余りの酷さに閉口してしまいました。」



「うん、だからボク逹は保全管理課の意志を尊重しようと思ってる。」



「ここまで外堀を埋められてしまっては、どうしようもないだろうしね。

君達が抜けるのは今の状況で非常に辛いが、それも止む無しだろう。」



「あんな状況を見ちまったのなら、見て見ぬふりはできない。

それにあんな見積もりを出す業者達だ、まともな仕事はしないだろう?

向こうも困り果てての要請だと思うからな、受けたいと思ってる。」



確かにねー、あの状況を放置するなんて職人としては無理だわ。

でも出向って形には、問題が色々あるんだよね。



と、後はの二人で行った場合は日程はどの位必要?」



「突貫して2日半、もしくは3日の見込みになるだろうな。

そして、が同行した場合は1日半にできるだろう?」



「…ユノーヴァまでって、空を飛ぶで行けるでしょうかね?

暫くは飛行機だとか乗り物はパスしたいんですよねー。」



「「「あ…」」」



そうなんだよ、問題は私の乗り物酔いだよ!

イッシュに来るのでさえ大変だったんだからね、もう勘弁して下さい。



「熱絶縁関係は全てに一任していると、課長から聞いている。

受けると決めたのだったら、一度向こうと話をした方がよさそうだね。」



「執務室のボク達のパソコンからなら、向こうとライブチャットができる。

ボク達も色々と聞きたい事も、言いたい事もある。」



「えぇ、これから役職会議がございますので、その後ででも?」



「この件は私に任せるといいましたよね?あの状況を考えれば

今からすぐに、色々と下準備とか段取りとかをして急ぐべきでしょう。

黒ボス、会議に参加する前にパソコンを貸してもらえませんか?

皆さんが会議をしている間に、全て済ませてしまいたいと思います。」



もう、こうなったらやるしかないでしょうよ。

ホントに…なんでいつもこうめんどくさい事が次から次へと起こるかな!