二章・東奔西走編 -二日酔いと鉢合わせ-

二章・東奔西走編

二日酔いと鉢合わせ



部屋に差し込む光はとっくに昼の日差しに変わってるんだけど

ボクは未だにベッドから出られないでいる。


一度ポケモン達に御飯をあげるのに起きたけど、大変だった!

ちょっとでも頭を動かすと割れるように痛いんだよ。

二日酔いってこんなに頭痛くなったっけ?

これって初めて飲んだ大吟醸のせいなのかな?

吐き気とか気持ち悪いとか全然ないんだけど、頭だけが痛い。

も二日酔いしたことないなんて言ってるけど

あんなのをボク達以上に飲んでも平気とか、絶対おかしいと思う。


いつもだったら、ボクよりはお酒に強いノボリが来ててもいいんだけど

この時間になっても来ないって事は、ボクと同じなのかもしんない。

ちょっとクセはあったけど、飲みやすかったからって調子に乗りすぎた。

今度大吟醸を飲む時はちゃんと考える。もう頭痛くなるのは嫌だもん。


喉も乾いたし、トイレにも行きたいから頑張ってベッドから起き上がる。

時計を見ればもう少しでお昼になるところだった。

うわー、いくら二日酔いだからって、こんなに寝たのは久しぶり。

今日はキバゴの孵化作業しようと思ったけど諦めるしかないや。


別にフラフラするわけじゃ無いけど、動くと頭が痛いから

ゆっくりと壁伝いに歩いてトイレに行ってから、キッチンへ行く。

冷蔵庫からおいしい水をグラスに注いで一気に飲めば、ちょっと良いかも。

もう一度グラスにおいしい水を注いでから、リビングに置いてある

救急箱から二日酔いの薬を取り出して飲んで、またベッドへ戻る。


ちょっとウトウト眠っちゃったみたいでドアをノックする音で目が覚めた。



「…クダリ、大丈夫ですか?入ってもよろしいですか?」



ノボリもやっと動ける様になったみたい。

ボクも寝る前よりは頭も痛くなくなったから、ゆっくりと起き上がる。

ドアを開ければ、こめかみに手を当てて立っていた。



「二日酔いなんでしょうが、頭痛が酷くて今なんとか起きましたが

貴方は大丈夫ですか? からメールがあって二日酔いにはミソスープが

良いと聞きましたので作ってまいりましたが、飲めますか?」



そう言ってリビングに行ってソロソロとソファーに座るボクに

大きめのマグカップにはいったミソスープを渡してくれた。

いつも二日酔いになると、食べ物の匂いを嗅ぐだけで吐きそうになるけど

今日は違ったからゆっくりと一口飲めば、身体がなんだかスッキリする。



「はぁ、美味しい。ノボリありがと!って、いたたたた…もう最悪。」



「フフッ、ですがこの様にゆっくりした休日は久しぶりでございますね。

私、今日はもう何もしないでのんびりする事にしました。」



「そうだね、今から何かやっても中途半端になる。

それならスッパリ諦めて、のんびりするのが一番いいかもしんない。」



ミソスープを飲みながら、ポッカリと出来た時間をどうしようかって

ノボリと二人でノンビリと考えてたら、急にライブキャスターの着信音が

リビングいっぱいに鳴り響いた。今のボク達には効果は抜群すぎるってば!



「いっつぅ…クダリっ…」



「いったぁい…ごめ…、マナーモードにするの忘れてた。」



片手で頭をおさえながら出れば、のんびりとした笑顔が見える。

今はその笑顔もなんだかムカつくなんて、本人には言えないけどね。



「いたたた、久しぶりだね。ううん、二日酔い。

違う、初めてのお酒で飲みすぎただけ。え?こっちに来てるの?

うん、その位の時間だったら大丈夫かもしんない。ちょっと待ってね。

…ノボリ、アーティがこっちに来てるから一緒にご飯食べようって。

カミツレも今日はオフだから一緒に来るって言ってるけど、どーする?」



「今は無理ですが、夕食時位になれば大丈夫かと…。」



ソファーに横になったままでノボリが返事をくれる。

顔色とかはなんともないから、これはやっぱりただの二日酔いなんだろな。



「ノボリもおんなじ二日酔いだけど、夕方になれば大丈夫だと思う。

うん、この前行ったお店で良いんだ?時間は…うん、それでオッケー。

んじゃ、先についた方は店の中で待ってて。じゃあ後で。」



会話を終わらせて、今度こそしっかりマナーモードに変えてから

ライブキャスターをテーブルの上に置く。

ノボリを見ればちょっと復活したっぽくて、ソファーから起き上がってた。



「出かける予定が出来たのですが、それまでの間は寝てます。

もう、金輪際達のペースに合わせてお酒は飲みません。」



「あはは、ボクも今度からはそうする。

だって、あの二人に付き合ってたらせっかくの休日を

ずーっとベッドの上で頭抱えてなくちゃなんない。

ボクも出かけるまでの間、もうちょっと復活するまで寝てる。」



時間が来たら迎えに来るって言って、ノボリは自分の部屋に戻っていった。

ボクもさっきよりはかなり良くなってるけど、今日はとことん寝ようっと。




どの位寝たんだろ?窓の外はもう薄暗くなってて、ホントに今日は寝っぱなし。

ゆっくりとベッドから起き上がっても、もう頭は痛くなかった。

ブラインドを降ろして、リビングにでてから明かりを点ける。

ポケモン達を出して、御飯を食べさせながら朝は出来なかった体調チェック

うん、皆すっごく元気で安心した!

朝のボクの様子を見てたからかな?すっごく心配そうにしてたけど

大丈夫だよって言えば、安心してくれたみたい。


シャワーを浴びて着替える。アーティもカミツレも服装にはうるさいから

クリーム色のタートルネックシャツと細身の黒のパンツ。

細かな千鳥格子のジャケットをあわせて、後は靴は普通の黒の革靴でいいかな?



「クダリ…っと、準備をしてましたか。気分はどうですか?」



リビングの続きドアからノボリが顔を出した。

青紫のシャツにブルーグレーのブイネック、ノータックのグレーのパンツに

レザーのフライトジャケットか、やっぱりノボリも決めてるね。



「ぐっすり寝たから大丈夫!ノボリは?」



「私もシャンデラに起こされるまで爆睡しておりましたおかげで

すっかり回復したみたいです。それではそろそろ出かけましょうか。」



マンションを出て向かったのは最初にに勧めたお店。

あそこは席が仕切りで区別されてるから重宝するんだよね。


木製のシックなドアを開けて中に入れば、カウンター席に二人はいた。

珍しい事もあるなと思っていたら、二人は誰かとなんだか話し込んでる。

って、ちょっと待って…誰かと思ったら達だし。

ビックリしてるボク達に先に気がついたのはだった。



「ノボリさんとクダリさん?こんばんは、二日酔いは治りましたか?」



「丸一日寝込む羽目になりましたが、なんとか…。

達はカミツレとアーティと知り合いだったのですか?」



「おう、二人共。早速この店贔屓にさせてもらってるぞ。

俺達は初対面だがは違うだろう。」



そっか、はイッシュのリーグ制覇してるんだからジム戦もしてる。

きっとすっごいバトルをしたんだと思ったらその通りだった。



「えぇ、成人男性で他地方からのチャレンジャーなんて稀少でしょ?

その他にも、彼のバトルはキラキラしててクラクラしちゃったのよ。」



「二人共久しぶりだねえ、ボクもにはこてんぱんにされたよお?

ボクの純情ハートに、それはそれは鮮やかに残ってるんだ。」



「人聞きの悪いことを言わないで欲しいな。

バトルは全力を出さなきゃつまらなから、楽しませてもらいましたよ?」



と二人共、一緒に笑い合ってるし、すっかり仲良くなったみたい。

ウェイターさんが、ボク達を席に案内する事で話は終わって、別れた。

奥の方に案内されてからそれぞれにメニューから注文をする。

二人が達とボク達の事を聞いてきたから、ノボリが説明してくれた。

ボク達の部下で友達で、マスタークラスのトレーナーだって言ったら

凄く驚いちゃったけど、仕方ないよね。



「廃人の周りには廃人が集まるってわけね。

ところで貴方達って、あのエキシビジョンマッチにでるんでしょう?

アーティから聞いてビックリしちゃったわ。」



「二人共、表舞台でバトルするなんて思わなかったよお。

でも、マルチバトルならキミ達に勝つトレーナーはいないよねえ。」



「確かに少し前ならそうだったかもしんない。

でも、ボク達の実力が表でどの位通用するのかってのも知りたい。」



これは本音。地下鉄でのバトルって特殊な舞台じゃボク達の独壇場。

じゃあ、それ以外じゃどうなんだろうってずっと思ってた。



「表舞台に出る事で色々と物議を醸すのもわかっておりますが、

私達はそれでも、バトルを極めたいのです。

突き進んだその先に何があるのか、見極める事が出来るチャンスでしょう?

みすみす、それを見過ごしてしまうなんて無理でございます。」



「厳選とか努力値振りを否定する人も少なくないものね。

でもそれだけじゃないって証明する良い機会じゃないかしら?」



「キミ達がどんなにポケモン達を愛しているか、

キミ達を否定する連中に見せてやればいいと思うよお。

応援してるから頑張って欲しいなあ。」



確かにボク達は能力値とかそう言うものを徹底的に突き進めて

ポケモンの育成をする。

それは一般のトレーナー達からは、よく思われてないのも知ってる。

無償の愛情とか絆とかそういうものを重視する人も多いよね。

でも、ボク達とポケモン達の間に絆が無いわけないのに。

そうは思ってはくれないんだ。



「ありがとうございます。勿論目指すは勝利でございますよ?」



「うん、ボク達はサブウェイマスター。勝利することしか考えない。」



アーティもカミツレも、ジムリーダーって事を抜かしても

自分のバトルスタイルを貫いている。

だからボク達も自分を貫いてひた走ってみせる!