-一章・共闘!ギアステ大掃除編:天才秀才唯の人-

一章・共闘!ギアステ大掃除編

天才秀才唯の人



いつもの様に朝礼を終えて執務室に戻れば

が凄い勢いでキーボードを文字通り叩いておりました。



「…えっと、…ねぇ、その書類どうしたの?」



クダリが鬼気迫る雰囲気のに恐る恐る声をかければ

向かいのデスクからが笑いながら人差し指を唇へ当てます。



「…、なにか問題でもあったのですか?

って、貴女もこの書類の山はどうされたのです?」



「原因はなんですよー、総合役職会議に使う資料に不備があって

今、がそれを修正してる最中なんです。

昨日、完成書類を使って模擬のレセプションしたんですけど

その時に色々改善点とか修正とか見つけたんで訂正中でっす。

、データーのグラフ化できたから差し替えしとくよー。」



「おう、こっちも問題点の解決法に関する提案項目を修正した。

んで、こっちとあれを合わせて…あー、文字数多すぎる。」



「必要項目の書き出しは終わったから、そっちの方はに任せた。

俺は設置可能箇所が図面通りかもう一度確認してくる。

もう、期間とか費用とかすっかり忘れてたとか、マジで悪いな。」



成程、総務部長に提出する前に完璧に仕上げられるつもりなのですね。

それにしても、もですがも事務処理や文章作成に

とても慣れてらっしゃるのに、私驚いてしまいました。



「ねぇねぇ、どーして3人ともこんな大変な書類とか簡単にできるの?

は事務系だけど、も違うでしょ?」



「白ボス、俺らのモットーは自分の分野は全部やるなんですよ。

作業だけすればいいわけじゃない、その後業務報告書を書いて

次の作業の確認と工程の目安に繋げる。当たり前の事です。」



「ですです。それに、作業中に気がついた事だって

口頭ではなく、キチンとやって欲しいなら文章にしなくちゃ

口約束とかそんな不確定なものは絶対許したくないですしね。」



の回答に、私もクダリもただ感心するだけでございます。

確かに、書類にして提出してしまえば相手はそれについて検討して

しかるべき回答をしなくてはならないですからね。



「うん、交渉術としては初歩。でもそれがキチンとできない人が多い。

明瞭完結にってなると、もっとできない人が増える。」



「その通りだね。俺も決して完璧に出来てるとは思ってないけど

少なくても自分の要求を通すならその位当たり前だよ。

そんな事も出来ないなんて、お話にもならないね。」



も非常にそういう処理能力が高いですよね。

その点は私も見習いたいと思っております。」



「黒ボスは努力家ですしね。努力は決して裏切らないですから

貴方も俺と同じ様にできると思いますよ。」



はかなりの努力家でございます。書類作成や入力が実は一番苦手で

その後に、苦手だからできないとは絶対言いたくないと

色々と努力をされてここまで来たのだと知った時は、

なにやら私と似てらっしゃる…と思ってしまいました。



のそう言う所はマジで凄いですからね。

俺には到底できそうもないですよ。」



「うるせぇよ、苦手だとか抜かしやがる癖に、

実際には俺以上の成果を、サクッと上げちまうお前に言われたくねぇ。」



恐らくはクダリと同様に、なんでもできてしまう人だと思います。

クダリも、嫌だ嫌だと逃げ回る書類整理でさえ、本腰をいれてやれば

私が必死になって処理した以上の成果をあげるのです。

それは色々な場面でも同様に見られます。

天才肌とでも言うのでしょうね。


そこでふと疑問が浮かび、書式を統一しようと悩んでいる

に視線をむけてしまいました。

それでは、彼女はどちらなのでしょうか?


なんでもソツなくやってしまう、という点においては

と共通するような気もしますが、どちらかというとそれは

彼女の経験から来るもので、天賦の才という物とは少し違う気がします。


では、努力によって得た物かと言われれば、

確かに努力はされていらっしゃる様ではございますが

それが確実に身に付いてるかと言われると、それも違う気がするのです。



は元々がすんごいからねー、天才は何やっても凄すぎて辛い!

は努力型の秀才だかんね、努力は確かに裏切らないけどさー

そこまで成果が出るとかってのが、マジで羨ましいよねー。

もうさ、凡人の私には一緒に仕事をするのがしんどい時もありますよー。」



やっと書式の統一を終えてが書類をプリントアウトしながら

その様な事をおっしゃいますが、凡人というのも違うと思うのですが…



が凡人とかありえない!

ボク、の考え方とか物の見方とか、すっごいなーって思ってる。

さりげないフォローとか、気遣いとかってできない人は結構多い。」



「えぇ、私もそう思いますよ?

貴女のそういう所はもっと誇るべきではないでしょうか?」



私もクダリもデスクに戻り、が整理してくれた書類を見ます。

そこには、メモ用紙に必要部分が抜粋されており、何をやれば良いのかが

一目瞭然にわかる様にされております。

他の職員たちからの設備の不具合についての要望にもすぐに現場をみて

色々とアドバイスをされてる様で、それが評判にもなっております。

その様な事が当たり前の様に出来る人物を、凡人と言えるのでしょうか?



「天才タイプの人はできない人の気持ちがわからないんですよ。

できない人からしたら、どうしてできるのかがわからないから、

堂々巡りで、割と対立したりとかしやすいんですよね。

上司がこうですから、どーしたってその辺のフォローは必要になります。」



が執務室のドアを指差して笑いながらおっしゃっております。

やはりは天才タイプ…と言うものでいらっしゃったのですね。



「んで、努力型の秀才さんは自分が努力して出来る様になるんで

努力してもできない人を努力が足りない!とか言いがちなんですよ。

努力の成果だって個人差があるんですから、それは間違い無いんですけど

自分がそうやってきたという自信があるし、ある意味正論ぶちかましなんで

できない人は、もう意気消沈くらって身動き取れなくなるんですよねー。」



今度はを見て笑いながら、ホント困りますよーなどと言っております。

あぁ、確かに私もその様に思い、時には部下の方々にも言っておりました。

努力してもできない…その様には考えた事もございませんでした。



「間近に天才と秀才がいて、色々と見てますからねぇ…

相手の気持ちを考えて行動しろと説教かましてやりたいですよ。

言葉は一度口に出してしまえば、間違えてたって戻せないんだし

モノも言い様で角が立つと言いまして、同じ事でも言い方によって

相手の気分を良くする事も、悪くする事もできるんですからね。

どうせだったら、嫌な気分よりは良い気分になってもらいたいです。

それが、次の頑張りに繋がる事だって多々ありますから。」



「そんな風に考えたことなかったかもしんない。

でも、言い方で良くも悪くもなるってのはホントだよね。

だからボクはそういう時はちょっとおどけてみせる。

そうすると、相手もあんまり嫌な気持ちにならないからオッケー!」



成程、それはクダリだからこそ出来るのでしょうね。

私ではその様な真似は、到底できそうもございません。



「うんうん、それもアリですよねー。

白ボスは、ちゃんとそういうのがわかってるから凄いと思いますよ。

後は、黒ボスも。後でちゃんとフォローを入れてくれますしね。

そう言うのって結構出来る人がいないから、凄いなって思いますよ。」



「…私…後でフォローなど、しておりますでしょうか?」



急に話が私の事になり、驚いてしまいました。

クダリ曰く、直球で物を言えば良いって訳ではないと

常々注意されておりましたので気をつけてはおりますが、何分口下手ですので

白黒ハッキリとした物言いしかできず、相手を傷つける事が多いのですが…



「やっぱりって凄い!ちゃんとノボリの事わかってくれてる。

ノボリ、すっごくわかりにくいけど、そう言う事ちゃんとしてる。」



「えー、わかりにくくないですよ、ちゃんとわかりますよ。

だって、私は結構黒ボスに怒られてますけど、その後でちゃんと

優しく言い直してくれたり、お詫びみたいにプリントかババロアとか

作ってくれたりとかしてくれたじゃないですか。

そう言うフォローって、普通の人には中々できない事で凄いと思いますよ?」



何か言いたいのですが、うまく言葉が出てきません。

が優しい笑顔で私を見ておられるのが気恥ずかしくて視線を逸らせば

クダリに照れてる!と揶揄われてしまいましたが、反論すらできません。

なんと言えばいいのでしょうか…嬉しくて、心がほっこりと暖かくなる様な

あぁ、やはり私は言葉にする事が苦手でございます。



「アハハ、黒ボスが口下手なのは皆さんの知ってる事なんですから

白ボスもそんな事言って、揶揄っちゃダメですよー。

黒ボスのフォローの上手な事は、ちゃんと職員の皆さんだって知ってます。

でもね黒ボス、怒るときはもうちょっと優しくしてほしいなぁ。」



が私を、怒らせなければ良いだけでございましょう?

それだけ私の事がわかってらっしゃる貴女なら簡単ではございませんか?」



おどけたように言うに乗せられて私が言えば

は、それでも唯の人だからついつい口が滑るんですよー。と言って

クダリやに笑われておりました。


インカムからスーパーマルチへの待機要請の声が聞こえたので

話はそこで終わり、私とクダリは二人で執務室を後にしました。



「ノボリ、ってやっぱり凄い。ボク達には、そんな考え方もできない。

なんだろ、ボクすっごく胸が暖かくなってる。」



スーパーマルチのホームへ向かう途中

クダリが両手を広げてクルクルと回りながら嬉しそうに話します。

私もクダリの様にはできませんが、足取りがとても軽いです。



「私もでございます。あの様に考えて動けると言うのは素晴らしいですね。

私、の言葉になんだか救われた様な気がしております。」



「うん、ボクも!気持ちが軽くなって、ハッピーかもしんない。

は天才でも秀才でも無いかもしんないけど唯の人じゃない。

うーん…上手く言えないけど、すっごい唯の人?」



その言葉が正しいかどうかは、甚だ疑問ではございますが。

なんとなく納得してしまい、二人で顔を合わせて笑ってしまいました。

今まで自分のやってきた事が正しいと、間違いではなかったと、

誰かに口に出して頂けるという事は、これ程までに嬉しいものなのですね。