一章・共闘!ギアステ大掃除編
おうちでご飯
鍋の湯気越しに友人達が笑いながら過ごす風景を見る…
つい先日までの私達の生活には考えられなかった光景ですが
見ているだけで、私の心もホッコリと暖かくなります。
キッチンで、使った道具の洗い物を手伝いながら横をみれば
がフライパンを揺すり、チキンにソースを絡めております。
料理上手とは本当ですね。下準備から調理までに全く無駄がありません。
そういえば、こうやって女性が料理をする姿を見るのは
自分の母親以外では初めてではないでしょうか…
母も大変料理上手で、いつもキッチンをまるで踊るかの様に
クルクルと動き回っては料理を作っておりました。
今となっては、それも思い出でしかありませんがね…。
フッと自嘲めいたため息をついてしまった私に気がついたのか
が不思議そうな…そして心配そうな顔でこちらを見てました。
あぁ、貴女もクダリと同じで他人の心の動きに敏いのですね。
「、洗い物は大体終わりましたが他に手伝える事は?」
誤魔化す様に話しかければ、しばらくの沈黙の後でニッコリと笑って
首を横に振ります。そういう何も言わない、という優しさも助かります。
はフライパンの火を止めてチキンを取り出して切り分けると
ボールの中に入った卵をひとつ、器に入れてソイソースと見た目は同じ
何かのソースをかけてスプーンと一緒に私に差し出してきました。
「料理してる人の特権、味見です。コッソリ食べて下さいね。」
いたずらっ子の様な仕草に釣られて笑いながら受け取れば
彼女はスープを盛り付けてその中に卵をひとつずつ落としていきます。
その様子を見ながらスプーンで受け取った卵を割れば中からは
粘度の強まった黄身がトロリと溢れて私はそれを一緒に口に入れます。
黄身の濃厚な味と白身のトロ味加減とかけられたソースの絶妙さに
暫し言葉を失ってしまいました。
そんな私の様子をみては一層笑みを深くしております。
「これは大変美味しゅうございますね。」
コッソリとに囁けば、はまな板の上を指差します。
そこには先程切り分けられたチキンが二切れ残っておりました。
「あれを、まずは何もつけないでそのまま、次にその卵を絡めて
食べてみてください。きっと美味しいと思うんですよね。」
が私の耳元でコソコソと囁かれましたので
まず始めは何もつけずにチキンのみを食べてみます。
ガーリックの利いた甘辛いソースがチキンの味を引き立てて
これも美味しゅうございますね。
その後、言われたとおりに残りのチキンを手にしていた卵へ
軽く絡めてから口に入れて驚きました。
ガーリックの刺激を卵が柔らかく包み込んで全ての風味が
一体となり口の中に広がります。
「、これはスーパーブラボーにございます。
やはり貴女は料理がとてもお上手でいらっしゃいますね。」
「いやいや、騙されちゃダメですよノボリさん。
卵はお湯に突っ込んだだけだし、チキンだってソースと絡めて
焼いただけなんですからね?誰にでもできるでしょうが。
でも、お口に合ったみたいで良かったです。」
二人でハイタッチの真似事をしていると、視線を感じて振り返れば
クダリ達3人がこちらを見て何やらコソコソとしております。
私だけ味見として料理を食べていた事がバレたのでしょうか…。
「さて全部出来上がったので、あそこの飲んだくれ3人に
さっさとご飯を食べさせちゃいましょうか。」
は気付かなかった様でございますね。
えぇ、きっと3人ともすごい勢いで食べる事は間違いないでしょう。
出来上がった料理をクダリ達の待つテーブルへ並べます。
それにしても、ここまでにかかった時間は30分程でしょうか。
その間に合計4品を作り上げるの手際には驚かされました。
テーブルの上の料理を見てクダリの目が輝きます。
「うわー、美味しそう!ねぇねぇ、これってシンオウ料理?」
「いや、クダリさん残念ですが普通に私達が食べてるご飯です。
どっちかっていうと和食メインですが、そこはおうちご飯なんで
なんでもアリですよ。」
全員で席につき、夕食が始まります。
改めて、チキンを口にすればガーリックの利いた少し甘めのソースの
香ばしさが広がり食欲を更に増してくれます。
「このチキンはガーリックが聞いていていくらでも食べれそうですね。
ソースは何を使ってらっしゃるのですか?」
「それはガーリックをみじん切りにしてお酒と醤油…ソイソースと
砂糖を混ぜたものなんですよ。ホントはみりんが欲しかったけど
こっちじゃ売ってなくて残念です。
照り焼きって言う調理法でガーリック抜きのソースは肉以外にも
魚にも使えるし、ソースもアレンジがきくので便利ですよ?」
ふむ…、ソースも具材もアレンジ可能とは素晴らしいですね。
後でレシピをお伺いする事にいたしましょうか。
「このスープの中のポーチドエッグ?すっごいトロトロで美味しい!
ボクはエッグを崩して食べるほうが好きかもしんない。」
「クダリ、これは温泉卵って言うんだ。
ポーチドエッグは作るのがめんどくせぇが、これは熱湯にぶち込んで
18分位かな?放置すれば簡単にできるんだぜ。」
の説明の通りでございましたね。
これは色々な料理に使えそうですし、作っている間に他の作業が
出来るのも大変素晴らしいものだと思います。
を見れば、ほかの料理には手をつけず、
スープにパンを浸して食べておりますので、
やはりまだ体調が完全には回復してらっしゃらないのでしょうね。
それでも食べる量は少し増えているようで、安心いたしました。
「揚げ出し豆腐、久しぶりに食った!酒の肴によし、飯のおかずによし
万能選手だよなー。俺はもうちょっとショウガを入れるかな。」
この料理も初めて食べる物ですが、ベースの食材には殆ど味が無いけれど
上からかけられたソースでしょうか?それが上品な風味を出しており。
確かに薄味ではございますが、の様にショウガや他のトッピングで
十分美味しくいただける程度のものですので問題は無いでしょう。
きゅうりのピクルスの様な物を摘めば、ほのかな塩味と酸味が口に広がり
何を使ったのか聞けば梅干というものだとか…
これは口の中をさっぱりさせてよろしいですね。
これも後でレシピを聞く事にしましょうか。
私達が凄い勢いで料理を食べているのを見て、がちょっとホッとした様に
大きく息を一つついて目を細めました。
全てを食べ終わった後、後片付けを始めようとしたを止めて
代わりに今度はがキッチンへ立ちました。
クダリが手伝うと言いましたが、片付けの下手な奴は休んでろと言われて
ちょっとへこんでしまった様でございますね。
「の片付けには誰もかなわねぇんだ。気にしないで飲むぞ。
ノボリもまだ飲んでないだろ?食前のビールも良いが食後もアリだぜ?」
そう言っては私とクダリのグラスにビールを注いでくれました。
その後で、においしい水をグラスに注ぎます。
「はビールっていうかお酒飲まないの?あ、まだ体調悪いから?」
「いえ、飲めないんですよ。えっとですね身体が受け付けないんです。」
「ふーん…そう言えば、さっきキッチンでノボリと何コソコソしてたの?」
「あぁ、作る人の特権で試食という名の味見をしてもらったんですよ。
ちょっとアレンジして食べてもらいました。」
クダリが含みのある笑みを浮かべて聞いてきましたが、
は全く気にする風でも無く、普通に話して先程の内容を説明します。
ボクも食べたかった!とごねるクダリの頭を撫でる様子は親子の様ですね。
「いや、すげぇ雰囲気がなんつーか新婚さん?そんな感じっぽいなって
俺とクダリとで話してたんだよ。」
飲みかけたビールがもう少しで鼻から逆噴射する所でした。
に汚ぇぞと言われましたが、辛うじてセーフでございます!
むせて咳き込む私の背を擦りながらがうんうんと頷いております。
「確かにこんな奥さんなら理想かもしんないですよねー?
ノボリさん、バリバリ働いて食べさせてあげるので嫁にきますか?」
「…、貴女は私の性別すら無視しやがるのでございますか?
第一私、仕事が生きがいでございますので辞めるつもりはございません!」
と私の性別が逆であれば考える余地もあったかもしれませんが
現段階におきましては私男性をやめる気は毛頭ございません。
私が睨みつければ、は振られちゃったーと泣き真似を初めて
今度はクダリが、彼女の頭を撫でて慰めております。
そんな気など1ミリもございませんのに、よくおっしゃいますね。
後片付けが終わったがリビングに戻ってきて、飲み会の再開で
全員で理想の相手の話やポケモンで例えたら等、話に花を咲かせました。
これが恋バナと言うものなのでしょうか?
気楽に話し合える友人達との時間はどの様なものでも楽しいですね。