一章・共闘!ギアステ大掃除編:
白と黒のレゾンデートル
前回に引き続き今回も職員の解雇の報告を朝礼で行いましたが。
職員の間にはその件についての動揺よりも、戒めの意味で流した
と彼女達のバトル…いえ乱闘?そちらの映像の方が
衝撃的だった様でございます。
4対8というより、ネイティは殆ど参加しておりませんでしたので
実質3対8の乱戦を見た職員たちは朝礼が終わった後も
あの場面での切り返し方がとかこの技を出すタイミングが凄い等々
意見を言い合いながら自分達のバトルスタイルと当てはめて
参考になりそうな部分があれば吸収しようとしております。
この様に勉強熱心な部下をもって私も嬉しゅうございます。
思えば結構な人数を解雇したにも関わらず、業務が全くと言っていい程
滞らないという事は、いかに連中が仕事をしてなかったのかと言う事で
今更ながらに、最高責任者としての自分の不甲斐なさを痛感しております。
ですがまだ全ては終わったわけではありません。
主犯格は未だに不明なのです、そして今後のあちらの動きも不明。
このままでは終わらないだろうという事だけがハッキリしております。
しかし、私達もただ指をくわえて見ているつもりはございません。
「ノボリ、以前被害にあった人達からの情報が全部揃った。」
達3名がそれぞれの仕事で執務室から出たのを見計らったかの様に
クダリが分厚い書類を手に総務から戻ってまいりました。
「ありがとうございます。それで何か手掛かりになるようなものは?」
クダリから書類を受け取り全てに目を通すとその中には何名かの名前が
共通して書かれておりました。
「この情報、被害にあった人全員分。
皆ね、自分達と同じ様な目にもう誰もあって欲しくないって言ってた。
ボク達のゴメンナサイもちゃんと伝えた。
そしたらボク達は悪くないって。皆言ってくれた。
悔しいな、皆凄く良い子なんだ。ギアステが好きで仕事が好きだったって。」
クダリが両手を握りしめて俯きます。
あぁ、本来ならば彼女達にこそ、ここで働いて頂きたかった!
「私達がこの方たちに贖罪として出来る事はただひとつ、
これ以上の被害を出さず卑劣な輩をすべて駆除する事でございます。」
「うん、あの子達が好きだったギアステをもっと良くする事、
素敵な場所にする事がボク達に出来るゴメンナサイの形だと思う。」
私とクダリは同時に頷きました。
えぇ、今まで何もせずにいた事は取り消す事はできません。
ですが、その様な馬鹿な真似をする事はもう二度と無いでしょう。
「失礼します。ボス達、ちょっと危ない情報が手に入りましたよ。」
ノックの後にジャッキーが執務室へと入ってまいりました。
彼は事情があってこのギアステから出た事がございません。
ですが、彼のシステム関連に関する能力は恐らくはギアステ…いえ
ライモンシティだけではなくイッシュ地方でも指折りのものでしょう。
ジャッキーが持ってきた用紙にはとあるサイトの情報が印刷されており
その内容の、あまりのおぞましさに私とクダリは言葉を無くしました。
「これは以前から噂になっていたサブマス裏サイトと言うものです。
ここはボス達を神格化して近寄る連中を排除しようとする過激な所で
そして、過去ログも見たのですが…以前被害にあった方の事件と酷似した
内容が載っているんです。それも1件だけじゃなくてかなりの数が…」
この様なサイトが存在していたとは…
過去ログのページを二人で読めば、確かに事件と酷似した内容と
その計画や実行する人物達の話が事細かに残っております。
「ジャッキー、これって普通の人でも閲覧可能なの?」
「…いいえ、パスワード認証制ですね。
それもこの部分は裏の裏と言う形をとってまして
許可を受けなければ入れない仕組みには作られています。
もっとも、素人のやる事ですからボクにしてみたら穴だらけで
拍子抜けしちゃいましたけど。あ、足はつかないので安心して下さい。」
ジャッキーの知識と技術には脱帽するしかございませんね。
しかし、これらをどうしたらよろしいのでしょうか…
恐らくはここに関係している人物は職員にもいるのでしょう。
しかし、すべてハンドルネームを使用している為に特定が不可能
管理者も割り出したくはありますが、こちらも同様でございます。
「ボス達、この事をさんに相談してみるといいかもしれませんよ?
あの人、システム管理とかこっちの方も凄いです。
多分、なにか良い方法を考えてくれるんじゃないでしょうか?」
突然出てきたの名前に私もクダリも驚いてしまいました。
彼はシステムエンジニア紛いの事もできるのでしょうか?
「ボク、さんと結構話をするんですよ。
彼、ドクターでもあるんですってね。それでボクの事情を言ったんですが
今までのドクター達とは正反対の事を言ってて、びっくりしました。」
「ジャッキーが外に出ないって事?」
「彼は何と貴方におっしゃったのですか?」
クダリが渡したコーヒーを一口飲んだ後、ジャッキーは目を閉じたまま
うっすらと唇に笑みを浮かべました。恐らくはその時を思い出したのでしょう。
「困ってる事がないなら別にいいんじゃないかって…
無理したっていい事なんてないんだから、自分の好きにすれば良いって…
フフッ、可笑しいですよね。今までのドクター達はそれじゃダメだって
無理をしてでも少しずつ慣れろって全員口を揃えて言ってたのに。」
「アハ、なんだからしいや。
自分の事なんだから、自分でケリつけなきゃ始まらないんだって感じ?」
よくに言ってる言葉でございますね。
成程、ジャッキーにも確かに当てはまるかもしれませんね。
「ハイ。ボクは外に出なきゃいけないって、ずっと思ってたんですけど
さんは違うだろって。自分で出たいと思った時に出れば良いって
ボク、その言葉を聞いて凄く嬉しかったんですよ。
ずっとここにいるのだろうか…外の世界には何があるのかって
そればかり考えていたけれど、ここにはここの良い所だってある
外だって同じ事だから、難しく考える必要ないって…」
ジャッキーは残りのコーヒーを飲んでから紙コップを潰して
私達を見上げました。その瞳は普段温厚な彼からは想像もつかない様な
怒りに溢れておりました。
「ボクはギアステしか知りません。ここは凄く居心地が良いんです。
大好きなポケモンと素敵な仲間達に囲まれてボクは幸せなんです。
その幸せを壊そうとする人達がいるのなら全力で潰します。
恐らくこれは今後の動向の鍵になるんじゃないかって思ってます。
だからさんにお話してください。」
「わかりました。が戻ってきたら早速お話いたしましょう。
それにしてもがそちらの方も精通してるとは思いませんでした。」
これはたちが戻ってきたら耳に入れておかなければいけませんね。
彼の事です、恐らくはその後、2手も3手も手段を考えるでしょう。
「なんでも友人から色々叩き込まれたらしいですよ?
その人にかかれば、どんな機密だって足取りも残さず入手可能とか…
そんな事ありえないだろうと思ってたんですけどね。
実際に目の前でさんがやってくれたのを見て納得しました。
僕の目から見てもさんのハッキングは凄いですよ?」
「ちょ、ジャッキー待って!ハッキングってどー言う事?!」
クダリが驚きのあまり立ち上がってしまいました。
えぇ、その様な事は犯罪でございます。許される事ではございません!
「あぁ、すみません。言葉が足りませんでした。
ギアステのシステムの穴をさんが見つけて教えてくれたんですよ。
確かに目の前でハッキングされた時は焦りましたけど。
その後すぐに対処法も教えてもらって、セキュリティの強固になりました。」
「結果オーライでございますが、あえて一言付け加えるのであれば
が味方で本当に良かったと申し上げておきましょうか。」
私とクダリがホッと肩の力を抜いたのを見てジャッキーが
またクスリと笑われます。いつもなにかしら思案している彼が
様々な感情を表す事は非常に珍しい事でございますね。
「さん達は敵になんか絶対になりませんよ?
だってボス達の友人でボク達の仲間じゃないですか。」
そう言い残してジャッキーは私たちへ一礼した後に
執務室を後にしました。
「あーもう、すっごく疲れた!
でも、すっごい情報ゲットしたかもしんないね。」
クダリがデスクに突っ伏してしまいました。
えぇ、私も現在同じ体制をとっております。勤務中ですが
今しばらくはこのままでいたい気持ちでいっぱいでございます。
「これは全てにお渡しした方がよろしいでしょうね。
それにしても私達を神格化してどうするつもりなのでしょうか…」
顔を上げる気力もなくそのまま呟けば向かいのデスクから
同じ様に呟きが返ってまいります。
「そんなのボクに聞かないで。ボク達は普通の人間。
ただサブウェイマスターしてるだけ、地下の王者なんて言われてるだけ。
この人達にはホントのボク達なんて必要ない。張りぼての飾りが欲しいだけ。」
いつもでしたらここで、では本当の私達とはなんなのでしょうと
グダグダと考えるのでございますが、今は違います。
私達をノボリとクダリとして見てくださる友人が既にいるのです。
この様なくだらない事に惑わされなくなったというだけでも
多少は前進できたのでしょうね。
「これさ、きっととかがみたら爆笑するだろうね。
ボク達のどこが神様なのってさ。んであたりが悪ノリして
きっとボク達の前で両手を合わせてお祈りとかしちゃうんだよ?」
あぁ、その光景が簡単に想像できますね。
私もクダリも机に突っ伏したまま思わずクスクスと笑ってしまいました。
「えぇ、そしてともきっとノリノリで拝むでしょうね。
その時にはなにか貢物でもいただきましょうか?」
「それってブラボーかもしんない!そうだ、晩御飯でも作ってもらう?
との手料理は食べたけど、のはまだだから食べてみたい!」
トウヤ様とトウコ様がおっしゃるには料理上手でらっしゃるとか…
ふむ、それは良い考えかもしれませんね。
「えぇ、本当に私達を拝むようでしたらそうしましょう。
神様の言葉は絶対で拒否権など許されるものではございませんものね。
そうと決まれば、本日は早く帰れるように頑張りましょうか。」
「最近、書類は溜め込んでないからオッケー!
皆一緒におうちでご飯とか、きっとすっごく楽しい!」
ほんの数日前までは想像すらできなかった事ですが、今は違います。
きっと素晴らしい時間を共有することができるでしょう。
3人に拝んでもらえる様、今からでもそれらしく振舞いましょうか。