一章・共闘!ギアステ大掃除編
課長と主任と職人魂
私と総務部長は執務室に行き、全監視カメラの中から
荒らされたの仕事場の一番近くにあるカメラを見つけ
その映像を順次確認しました。
「トウコとが部屋に入ったときは大丈夫だったから
ノボリもうちょっと早送りして。」
私達の部屋に備え付けられてあるモニターはギアステ全部の映像を
見ることが可能な様に設定しております。
手元の専用のキーボードを叩きながら、私はクダリの指示に従います。
「ただ今戻りました。って、総務部長もこちらにいるとか
3人とも揃って、どうしたんですか?」
「今帰りました。総務部長、丁度良い所に。
ライモン総合病院との連携が可能になりそうですよ?
…白ボス、早速向こうが攻撃かけてきたみたいですね。」
とそれに少し遅れてが外出から戻られましたので
クダリが事のあらましを二人に説明しております。
その間も総務部長は画面から目をはなしません。
「黒ボス、ストップだ。」
総務部長が止めた画像には人影が映っておりました。
私が画像を最大限まで拡大するとハッキリと顔も映っております。
「…彼女はたしか整備班の人間じゃなかったかね?」
の来ている作業衣とは少々異なるデザインのそれは
間違いなく整備班の着るものでございました。
「整備班主任、大至急サブウェイマスター執務室まで。
聞こえたかね?大至急だ。」
総務部長がインカムで上司である整備班の主任をこちらに呼び出します。
クダリが説明を終えた後も二人は黙ってモニターを見ておりましたが
がドアへ向かいます。
「、どこいくの?ボク達これから大事な話する。
の事だからもここで話を聞かなきゃいけない。」
クダリがを呼び止めます。振り返ったその顔は
眉間に皺が刻まれており鬼気迫る雰囲気でございます。
「、の所へは俺が行く。
お前は課長としての役目をきちんと果たさなきゃならねぇだろ。
くれぐれも念を押しておくがな、殴るなよ?
後、その手、俺が戻ってきたら消毒してやっからこれで押さえとけ。」
がハンカチをに握らせて部屋を出て行きました。
「ちょ、!血!指から血が出てる?!」
「…あぁ、気にしないでください、白ボス。ちょっと握りすぎて
皮膚を傷つけただけですから。こんなモン、舐めときゃ治ります。」
クダリがの掌にのハンカチを巻きつけていましたが
あっという間に血が滲んできてしまいます。
どれだけ強く握りしめたのでしょう、貴方の怒りはそれ程なのですね。
「失礼します。遅くなって申し訳ありませんでした。
俺の部下が当事者だった様なので、身柄を確保してあります。
この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」
あぁ、インカムでの話を主任も聞いていたのでございますね。
それならば話は早い。さっそく本題に移りましょうか。
「…いや、課長。この度は俺の部下があなたの部下に対して
大変な事をしでかしてしまって申し訳ありませんでした。
俺達整備班の意見もボス達と同じです。
今、その部屋を見てきましたが職人の宝でもある道具を
傷つけるなんて奴は俺達の仲間でもなんでもありません。」
整備班の主任がに向かって頭を下げてますがは反応しません。
ただ、黙って主任を見ているだけでございますが、その身からは
怒りが溢れ出している様でございます。
「…で?当の本人はここに来るんでしょうね?
今後の事についてキッチリお話させていただきたいんですが。」
「えぇ、少々暴れたのでビニールテープで縛り付けて
台車に乗せてこちらに向かってきてるはずです。」
この期において逃げようとされるとはどこまで性根が腐っておられるのか
しかし、ビニールテープで拘束はまだしも、台車に乗せてとは…
「ちょうどいい見世物になるだろう。これに懲りてくれれば良いんだが
多分そうも言ってはいられないだろうね。」
「うん、あの騒ぎの中、様子を見に来てた子がいた。
今回の子は、主犯格じゃないと思うから切り捨てられて終わりだと思う。」
部長とクダリの意見も尤もでございます。
「ー、聞こえっか?当事者が見つかったがどうする?
お前もこっちに来て話をきくか?」
がインカムでを呼び出しました。
『その子の顔見て、街中ですれ違ったりしたら問答無用で潰すよ?
そんなくだらない事で警察のお世話になりたくないからパス!
後ね、今トレーナー職員さん達とか厨房の人とか整備班の人とかが
手伝ってくれて忙しいから平社員は片付けに頑張ります!
後、今もそっちに行かせたからヨロシクー。』
口調は戻っておりますが、内容が恐ろしいです。
もっとも、私がの立場でも同じ事をするかもしれません。
「ただ今戻りました。それと当人も連れてきたよ。
あんまりうるさいんでガラスクロステープで口を塞いでおいたよ。
ホントなら肩の関節でも外して静かにさせたかったんだけどね。」
「失礼シマース。整備班ノ人達ハ、ミンナノ仕事部屋ノ
片付ヲ手伝ッテルヨ。白ボス、コレカラ、駄目ニナッタ
物トカノ見積モリダッテサー。スゴイ金額デ、ビックリダヨー。」
とキャメロンが当事者の女子職員を連れて戻ってきました。
その瞳はすっかり怯えておられる様ですね。でも遅すぎです。
「うん、すっごい金額!金銭面での被害甚大ってホントだった。」
クダリから書類を受け取り、私と総務部長もその額を確認しましたが
えぇ、その数字に目を見張りました。
「キャメロンもクダリも言っておくがな、ここで使う為に用意した
材料ってのは一番良い物なんだ。それだけアイツはここでの仕事を
完璧にこなそうとしてたんだよ。それがこのザマだろ?
おい、アンタ。職人にとって材料ってのは命だろ?
そんな事もわからないで…あぁ、わかっててか?どっちにしろ
とんでもない事をやったんだよ。」
が女子職員の顎に手をかけ上を向かせます。
その表情は子供であれば泣き出すほど鬼気迫っておりました。
「いいか、覚えておけよ。俺等は仕事に誇りをもっている。
それを踏み躙るような奴は、例え大統領だって許さない。
俺もそうだが、が一番自分の仕事に誇りを持ってる。
『アンタ達』は最初からやり方を間違えたんだよ。
まぁ、どんな手を使ったっては折れないぜ?
それでもってんなら、それなりの覚悟でかかってこいよ。」
「そうだね、俺達の中でもは特に仕事に関しては
一切の妥協も容赦もないからね。
の仕事の邪魔なんて、俺達だって絶対にやらないよ。」
のインカムのスイッチがオンになったままでございますので
この話は職員全員に行き渡っているでしょう。
もその向こうにいるであろう相手に最終通告をしてますし。
あぁ、今更泣いたとしても、どうしようもないでしょうに。
「キミにもその位の誇りを持って仕事をして欲しかったよ。
いくら腕が良くても自分や相手の仕事を尊重できないような人は
俺達の職場…いや、ギアステには必要ないからなぁ。
両ボス、彼女の処分はお二人にお任せします。
それから、直属の上司である俺の監督不行でもあるので
俺への処分も甘んじて受けさせてもらいます。」
えぇ、これ程騒ぎが大きくなってしまっては当事者のみの処分では
済ます事は不可能でございます。彼には全く問題は無いので心苦しいですが
これが企業というものなのですから、仕方ないですね。
「では、。当事者であるこの方は懲戒解雇は確定でございます。
しかし、その上司である主任についてはいかがいたしましょう?
降格?減給?ある程度の日数の出勤停止命令?判断は貴方に一任します。」
「黒ボス、その丸なげは勘弁して下さい。
大体、主任がいなかったら車両整備に支障がでるでしょう?
彼はギアステの車両全部を守るって大事な仕事があるんだ。」
がうんざりした顔で私をみておりますが、
ぶっちゃければ、これも全ての筋書き通りでございます。
大掃除に引っかかった部署の上司は3ヶ月間の減給でございましたね。
『ー、両ボス、ちょっとよろしいでしょうか?』
インカムから突然の声がしました。
そう言えばのインカムが繋がったままでございましたね。
『その件についてお願いしたい事があるんですけど。
えっとですね、悪い予感が当たった場合、ダクトの全交換があるんです。
ダクトの発注取り付けとなると時間とお金と手間がそりゃもう
滅茶苦茶かかってきちゃうんですよー。
ここって油圧式のプレスブレーキってありますか?
あれば、それでこちらの発注するダクトを作って欲しいんです。
くだらない処罰よりも、うちらにしたらそっちの方がずっと助かります!』
が額を抑えて首を振って笑っております。
隣でもクスクスと笑っております。えぇ、私も笑いたくなりました。
「あの馬鹿は…何を言い出すかと思ったら…
えっと両ボス、そっちの処分が決まってるんだったら目障りなんで
とっとと追い出してもらえますか?正直同じ場所で息するのも辛いんで。」
「りょーかい、えっと君はギアステにすっごい迷惑かけた!
は納得してくれたけど、もし警察沙汰になってたら大変だった!
一緒に働く人を大切にしないでこんな事をする人はボク達いらない。」
「正直言葉もかけたくありませんが、私達は最高責任者でございますので。
本日付で貴女を懲戒解雇いたします。今後も同じような事が起こりましたら
同様な処置を取らせていただきます。まずは貴女が第一号でございます。」
「ソレジャア俺ガ連レテ行クヨー。サヨウナラ、モウコナイデネ。」
キャメロンに連れられて当事者である彼女は執務室から出ていきました。
「本当ならここで盛大に塩を撒きたいところなんだがな…っと
やべ、インカムのスイッチはいったままだった!
あぁ、今更感が拭えませんが色々とお聞き苦しいものを聞かせて
大変申し訳ありませんでした。
ですが、部下が女性という事を抜きにしてもこれは俺等職人に対して
最大の侮辱行為ですのでこの様な形を取らせていただきました。
今回皆様にかけたご迷惑は仕事にて返上させていただきます。
色々とお騒がせしてしまって申し訳ありませんでした。では失礼します。」
インカムの通話ボタンをオフにしたはガックリと肩を落とし
そのままソファにもたれ掛かってしまいました。
総務部長がお疲れ様と笑って全員にコーヒーを渡しております。
「クラウドから話を聞いてまさかと思ってたけど、スゴイ面子が揃ってるね
俺達整備班の職員も正直この件はなんとかしたいと思っていたんだ。
だから整備班の職員全員、例の件には全面的に協力する事になってる。
しかし、まさか第一号がうちからとは思わなかったけどなぁ。」
コーヒーの入った紙コップを見つめながら整備班の主任が肩を落とします。
「誰だって、自分の部下がそんな事しないだろうと思いたいだろう。
もっとも、私もそうそう傍観してはいられないんだがね。
はっきり言ってうちはほかの職場よりも女子職員が多いから
何人いなくなるか想像しただけでうんざりするよ。」
「その時は部長、しばらくの間 給料なしで働く事になるでしょうね。」
「それは勘弁してほしいな。そうだ、その時は私もこちらで
働いてその埋め合わせをしよう。それでも構わないだろう?」
「ギャー!部長さんと毎日一緒に仕事なんて絶対嫌!
ボク毎晩悪夢にうなされそう!すっごい悪夢見そう!」
部長、、クダリの会話に笑いながら整備班の主任は
一口コーヒーを飲んで少し落ち着かれたようでございます。
何分仕事に対して、この方も誇りを持たれておりますので
そのショックはとても大きかったと思います。
「あはは、頑張ってください白ボス。
えっと、俺の処罰だけどダクト制作を引き受けるって事でいいかな?
家族を養ってる手前、出来れば減給は避けたいんだなぁ。」
「…俺等はむしろそっちの方が大歓迎だぞ、でも後悔しても知らないぜ?
立ってる者はカビゴンでも使え!がモットーだからな。」
「了解、出勤停止で暇になるよりは、忙しい方がずっと良いよ。
油圧式のプレスブレーキは小型のやつが今は殆ど使わないで置いてある
必要があればやり方を教えるから使えるようになっておいても損はないよ?」
「それは凄ぇ魅力的だな!もうちょっと暇になったら頼む。
まだ確定じゃないから最悪の事態にならないように祈っててくれ。」
なんにせよ、取り敢えず第一関門は突破でございますね。
皆様方にもこれ以上はご迷惑とご心配をかけるわけにはまいりません。
降りかかる火の粉には全力で反撃させて頂きますとも。