-一章・孤軍奮闘編:お騒がせな部下の登場-

一章・孤軍奮闘編

お騒がせな部下の登場



医務室から戻った後は書類整理を始めましたが、思うように進みません。

達から話を聞いていたとはいえ、の乗り物酔いは尋常ではない。

身体の冷たさ、ライブキャスターで見たときよりも遥かに青白い肌の色

脈の弱さ、速さ、呼吸も浅く私に出来る事はただ流れた汗を拭うだけ。

病院に行こうと言っても大丈夫だからの一点張りで、余計に心配しました。

今頃どうされているのでしょう?少しは良くなっていればよいのですが…



「ノボリ手が止まってる。ちゃんと集中して。それじゃないと終わんない。

が心配なのボクも同じ、だけどボク達じゃ何も出来ない。」



クダリが呆れたようにため息をつき、コーヒーを持ってきてくれました。

そうですね、こういう時こそ自分にできる事をキチンとしましょう。



「ありがとうございます、クダリの言うとおりでございますね。

あの様な状態のお客様を見たのは初めてではないはずなのですが

やはり知っている方だからなのでしょうか、動揺してしまいました。」



「ボクも同じ。凄くビックリしてどーしたらいいか、わかんなくなっちゃった。

後ね、もっとビックリしたのはノボリが具合の悪いに怒鳴った事と

医務室でずーっとを抱っこしたまんまだった事。」



クダリの言葉を聞いて、もう少しでコーヒーを吹き出すところでした。

ノボリ汚い!と言われましたが未遂です。セーフでございます!

記憶を振り返ってみれば、確かに私、を怒鳴っておりました。

そして、眩暈が酷くてベッドに寝かせる事の出来なかった彼女を

確かに…ずっと…膝の上に抱えておりましたぁあああああ!!!



「ノボリ、やっと気がついた?後ね、その赤い顔気持ち悪い。

夢中でしてた事だし、そこまで気にする事ないと思う。

それとも他にになにかしちゃったの?」



一瞬で血液が顔に集まったかのように熱くなり、赤くなっているという

自覚はありましたが、気持ち悪いとは心外でございます!

他に何か…あぁ…そうでございますね、やらかしましたとも。

の衣服を緩めて楽にさせるために、ベルトと下着のホックを

外して、ブラウスのボタンもそれなりにはずしましたが?!

しかーし!緊急事態でもあり、これはすべて医療行為でございます!

決してやましい気持ちがあったわけではございません。

ですが、ここでクダリに教えてしまうと色々煩くなりそうなので

私、黙秘権を行使致したいと思います!



「…なにかしちゃったんだね。ノボリ、ボクに内緒事できない。

でも、なんとなく想像つくから聞かない事にする。」



「えぇ、そうして頂けると、私、非常ーに!助かります。」



やはりクダリを騙すことは無理でございました。

私もう、疲れ果ててしまいデスクに突っ伏してしまいました。

クダリにだらしないとか言われましたが知った事ではございません。



「失礼します。今から出社になりますんで。宜しくお願い…って

黒ボス、どうしたんですか?具合でも悪いとか?」



が作業服に着替えて戻ってまいりました。

と、言う事はもいくらか体調が戻られたのでしょうか?



「色々とやらかして疲れてるだけだから、そっとしといたげて?

はもう大丈夫?元気になった?」



「えぇ、薬が効いて今は寝てます。起きたらこっちに来ますんで。

後、ちょっとの着替え渡してと交代してきますので

来て早々ですが、少し席を外させてもらいます。

これ…近くのデリで色々買ってきたんで、もし、昼飯がまだだったら

と一緒に食べてください。」



そう言って、は紙袋を持って執務室を出て行かれました。

眠れるくらいには回復されたようで良かったです。

そう言えば、ゴタゴタしていてすっかり昼食を忘れておりました。

デスクから顔を上げれば、すでにクダリは紙袋を開けて物色中でした。



「あ、ノボリ復活?落ち着いたみたいで良かった。

安心したらお腹減った!が来たら一緒に食べよ?」



「えぇ、そうしましょうか。なんにせよ回復されて良かったです。

本当に私、無理矢理にでも病院に引き摺っていこうか悩みましたから。」



大きく背伸びをして、ふとハンガーを見ればコートがありません。

そうでした。にかけたままでございましたね。

ロッカーに替えが入っていたはずですから、バトルの呼び出しがきましたら

そちらに着替えることにいたしましょうか。



「うんうん、ボクも救急車呼ぼうか真剣に悩んだもん。

でも大変だよね、あんなに乗り物酔いが酷かったらどこにも出かけらんない。」



「いや、そんな事ないですよ?事実、は俺達と一緒に

他地方でリーグ挑戦してますからね。」



クダリの話に答えるようにが入ってきました。

紙袋を開けて、二人共どれを食べますか?と聞かれたので

肉で!と答えたら笑われてしまいました…はて、なぜでしょう?



「それにしても、がお医者さんとかビックリした!」



「食いっぱぐれのない資格をと思って取ったんですよ。

リーグ制覇に挑戦しながらドクターコースに通ったりで大変でしたけどね。」



サーモンとクリームチーズのベーグルを頬張りながら

サラッと話しておりますが、凄い事だと思うのは私だけでしょうか?

アボカドとシュリンプのサンドウィッチを口に運び浅漬けの

グリーントマトのピクルスをつまんでそんな事を考えている時に

ドアが開いて、が入ってきました。



「おー、お騒がせ女。もう復活したのか?」



「うっ…、十分反省してるからもう許して…

えっと、この度は大変ご迷惑をお掛けしてすみませんでしたぁあああ!!!」



の絶対零度を受けてやや顔が青ざめておりますが、先程の

驚くような青白さからはかなり良くなっておりますね。安心しました。

は私達に向けて、額が膝についてしまうのではないかと思うような

お辞儀をしてあやまられております。



、顔色とか良くなってるみたいで良かった!もう大丈夫?

後、お腹空いてない?サンドウィッチとかあるから一緒に食べよ?」



「えっと、クダリさん…でいいのかな?ありがとうございます。

正直目が覚めたらお腹が空いてそっちで眩暈がしちゃいました…って

痛い!ゴメンってば、ちゃんと体調管理するから頭叩かないで!」



、マジで容赦ないでございますね。

私がその位にしておいてあげてくださいましと言えば、凍える眼差しが

返ってきました。これはちょっとキツいものがございますね。



「黒ボスも、あれだけ心配していたでしょう?

でもね、原因は全部コイツの自己管理の無さなんですよ。

乗り物酔いが酷いのがわかってるくせに、まともな食事も

睡眠時間もとらないで、荷物整理とか残務整理とかしてたツケがきたんです。」



はい?今なんとおっしゃいましたか??



「だから、前にも言ったでしょう。は一人になると

ロクに飯も食わないんだって、昔からこうやって俺とに怒られてるんだから

いい加減学習しろってんだよ、お前は!」



に言われては小さくなるを使ってボソボソとゴメンナサイと

言っておりますが…これは怒られても当然でございましょう。

えぇ、私も猛然と腹が立ってきましたが?



…先程も言いましたが、貴女という人は馬鹿でございますか?

そもそも、乗り物酔いが酷いなら前日から体調を整える必要があるでしょう!

それをいくら急だとは言え睡眠や食事を削っていいものでは無いでしょう!」



「えっと、でも凄く急ぎの所が…「お黙りなさい!!」…ハイ…」



が何か言い返そうとしておりますが、言い訳など聞きたくもありません

本当にどれだけ私が心配したと思って…私が?いえ、私達ですね。



「貴女のポケモン達がどれだけ心配していたと思っているのですか!

この子達をその様なくだらない理由で悲しませるなど言語道断でございます!!」



そう言うと、私の言葉に同調するように彼女のベルトについたボールが

一斉にカタカタと揺れます。私の横にが立ち、を見下ろします。



「流石に4匹同時に泣かれたから、その辺は猛省してるよな?

だけどな、お前こっちに来た早々上司に迷惑と心配かけてどーすんだよ!

体調管理も出来ねぇで、仕事がきちんとできるわけねぇだろう!

いい加減にしろ、お前はもっと自分を大事にしやがれ!!」



の後ろでクダリとがなにやらコソコソ話していますが

どうせ、私の説教が長いとかでしょう。

よろしい、後で二人にも説教をお見舞いしてやりましょうか。



の言う通りでございます!もっとお身体を大切にして下さいまし。

そして二度とこの様な事が無いように約束して下さいまし。」



私が小さな子供に話しかけるように屈みこんで話せば、小さく頷かれて

その後で本当にすみませんでした。とまた頭を下げて謝られます。

その頭をポンポンとあやす様にと撫でてあげました。



ももう反省してるから許してあげて?後、早くご飯食べないと

休憩時間無くなる。ボクまだ少ししか食べてないからお腹すいてる。

もお腹すいてるから一緒にたべよ?これ、美味しいよ?」



「はい、クダリさんにもご迷惑かけてすみませんでした。」



「もう、その話はおしまい!今度から同じ失敗しないようにすればいい。

後、二人も言ってるけど、はもうちょっと自分を大事にしてね。」



にパストラミのサンドウィッチを渡して私達と同じ様にクダリも

その頭を撫でております。がくすぐったそうにそれを受け取りました。



「あ、えっと…ノボリさん?コート有難うございました。

後、今後からは気をつけます、本当にすみませんでした。」



コートを私に手渡したあとにもう一度深々とお辞儀をする。

どうやら、本当に反省している様でございますね。



「コートの事はお気になさらずに。私も言いすぎた所がございますので

こちらこそ、大声で怒鳴ったりしてしまい申し訳ありませんでした。」



コートを受け取り、謝罪の言葉を伝えると驚いた様にそれは仕方がないとか

私が悪いので怒って当たり前ですとか慌てております。


今まで黙って私達の様子を見ていたがパンと手をうって

の方に歩み寄りました。



「さて、謝罪はもう十分だと思うし、こいつも反省してるんで許して下さい。

両ボスには、俺の部下がお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。

早速自己紹介をさせて下さい。ホラ、前に出る。」



に背中を押されて私とクダリの方へ一歩前に出てきたの顔に

先程の表情はなく、と共通するような仕事モードの顔に見えました。



「改めまして、熱絶縁施工…保温関係を主に担当させて頂くです。

イッシュにはまだ来たばかりですのでわからない事が沢山ありますが、

一日でも早く慣れて、仕事に頑張りますのでよろしくお願いします。」



深々とお辞儀をしてから、私達の前に手を差し出す。



「ボク、クダリ。ダブルのサブウェイマスターしてる。

が乗り物酔い酷くなかったらバトルしたかった!でも我慢する。

これから、色々とめんどくさくて、大変な事があるけど。

ボク達もサポートするし、守るから!だからよろしくね?」



クダリがブンブンと音がする位に手を振っております。

が小柄なので、身体がフラフラしてるのでやめておあげなさい。

二人でニッコリ笑いあったあとに、こちらを向いてが手を出しました。

私は手袋を外して、握り返しました。先程までは氷のように冷たかった手は

今はほんのりと暖かく、私の手の中にスッポリと収まってしまっております。



「私、クダリの双子の兄でシングルのサブウェイマスターをしております

ノボリと申します。遠い所をようこそいらっしゃいました。

これから一緒にギアステをバトルサブウェイをより良い物にする様

共に頑張ってまいりましょう。」



クダリとから固すぎるーと声が上がっておりますが、普通でございます。

私が少し力を入れて握れば、ニッコリ笑ってそれ以上の力を込めてきました。

何気に同様負けず嫌いですね。ここではその位が丁度宜しゅうございます。


色々と問題やら何やらがございましたが、

なんにせよこれで新部署設立の役者が揃いました。

これから、色々と大変でしょうが、お互いに支え合い助け合って

前進していきたいものですね。