一章・孤軍奮闘編
課長、問題発生に頭を抱える
執務室のドアがノックされ、ひどく疲れた様子のが入ってきました。
この時間でしたら、新人教育の真っ最中ですのにどうしたのでしょう?
デスクに突っ伏しているを見ながらクダリと顔を見合わせてしまいました。
「どーしたの?今、新人研修の時間。具合悪い?大丈夫?」
何も言わないにしびれを切らせたクダリが傍に行って顔を覗き込みます。
私も書類整理をしておりますが、手につきません。
「…わ…た…」
「え?何?? よく聞こえなかった。もう一回言って?」
「終わったんだよ…。オリエンテーションと一緒に三日分の新人研修まで
詰め込みやがったんだよ。プリントの束が尋常じゃないと思ったらこれだ。」
指差したプリントの束をクダリがパラパラと捲るうちに顔色が変わりました。
確かに、オリエンテーションにはありえない量だとは思ってましたが
まさか新人教育の、それも三日分を一気に詰め込むとは…
見込みがあり彼のやり方にもついてくる事のできる人物は徹底してしごき上げる
やはりあの方はやらかしてくれましたか。
「部長さんの鬼畜っぷり皆知ってる事、でもボクが驚いてるのは
これ全部覚えたの?こんなの初めてでそっちの方が信じらんないんだけど!」
「なんだったら、一言一句口調も真似てお二人に言いましょうか?
記憶力には自信があるんで覚えてますよ。畜生…あの狸…クソオヤジめ…」
椅子にもたれかかり不敵な笑みで拳を握るのは怖いのでおやめくださいまし。
それにしても、これだけの量を全て記憶しているなど
私、そちらの方が驚きでございますが?
「ボク達でも丸一日かかった!…いっその事次の職員募集の時に
試験受けてホントの正職員にならない?ていうか、なろうよ。」
「…今はお断りします。俺達はまだ一つの場所に落ち着けないんです。
最悪とんでもない喧嘩をふっかけて完璧につぶして勝たなきゃなんないんですよ。
もちろん、ここにご迷惑かける様な事はありませんのでご安心を。」
が力なく笑い、目でこれ以上は聞くなとおっしゃってます。
私もクダリも非常に気にはなりましたが、恐らくこれは踏み込んではいけない
の部分なのですね。お聞きする事は今はやめておきましょう。
「しっかし、これからの時間どうすっかな…色々と覚悟してたんだが
それが全部必要なくなったかと思うと一気に力が抜けちまった。」
「あ、それだったら。ハイ!これ渡しておくね。」
クダリがに鍵を渡しました。あぁ、昨日忘れていた社員寮のですね。
いっその事、今日は早上がりにして生活環境を整えてもらいましょうか。
「、こちらの方は本日はもうよろしいですから寮の方に行って
色々と生活環境を整えられてはどうでしょうか?
元々、まだ正式な仕事始めではないのですから問題はないですよ?」
「寮っていっても別に管理人とかいない。普通のアパート。
最低限の物はあるけど、きっと色々必要な物たくさんあると思う。」
私は後ろの棚からタウンマップを取り出してに
ホームセンター等のあるショッピングモールのページを見せます。
「こちらであれば必要なものすべて揃えられると思います。
地図は…ここでございまして。ギアステの場所がこちらでございます。
そして、寮の場所がこちらですのでそれ程遠くはないのですよ?」
「営業時間は…あぁ、これでしたら定時で上がってから行きますよ。
仮とは言え、仕事は始めたのですからそこは筋を通さないと駄目です。」
…何気には頑固でございます。だけではなく職人と呼ばれる
ここの職員たちもそうでございますが、二言目には筋を通すとおっしゃります。
堅苦しいと言われる方もいらっしゃいますが、私は好ましいと思いますね。
「どっちみち、やることは山程あるのでボチボチやっておきますよ。
オリエンテーションの時にちょっとした問題みつけたのでそれとかね…
フフフ…さっき指摘した問題改善に対する意見書類作って持って行ってやろうか…
やってやる…超難題ふっかけて頭かかえさせてやる…」
そう言うと、パソコンを起動させて何やらすごい勢いで書類作成を始めました。
その様子は鬼気迫るものがありまして、私もクダリも側にはできれば
…いえ、絶対に近寄りたくないと思ってしまいました。
「ノボリ…ボク、は絶対怒らせたらダメな人ってわかった。」
「同感でございます。あの方に喧嘩をふっかける事が可能な人物など
今まで出会ったことがございません。マジでハンパねぇでございます。」
二人でコソコソと話をしてお互いに頷きあってから自分たちも仕事に戻ります。
しばらくしたところで、のライブキャスターが鳴りました。
ボタンを押して画面を見たが悪人すら逃げ出しそうな笑顔になってます。
「あぁ、総務部長どうかされましたか?なにか研修で忘れた事でも?」
、貴方は本当に命知らずでございます。私こちらに就職してまだ
古参と呼ばれるほどではありませんが、彼に真っ向勝負をかけた人物を
見たことなど、一度たりともございません!
「はい…いや、俺もこれから来る奴も一応3級は持ってます。
成程、それは尤もです。ちなみにそちらの経理の方で2級を持ってる方は?
…そうですか…ですよねぇ…あぁ、そう言っていただけると助かります。
ですが、心当たりが無い訳ではありませんので。
ただ、そうなると、もう1名こちらで働かせていただく事になるんですが…
えぇ、必要なのは十分理解してます。わかりました決まり次第連絡します。」
ライブキャスターを閉じたは急いで何かを検索はじめました。
目当ての画面をみつけ、色々と見た後で額に手を当てて、肩を落としました。
「、部長さんに話し聞いた。なんとかなりそう?」
「今年の試験の募集はとっくに過ぎていました。次の募集は来年で
とてもじゃないが決算までには間に合いません。人員追加の話は?」
「うん、聞いた。そっちは大丈夫だし、の方が駄目だったら
部長さんが探してくれるって言ってるよ?どうする?」
クダリが何やらライブキャスターで話し終わったあとでに詰め寄ります。
何か…起こったんでしょうけど、私にもわかるようにご説明くださいまし!
「あのね、ノボリ。の部署に専門の資格をもった経理士をいれないと
部署が立ちあげられないって。部長さんから連絡がきたんだ。」
それは一大事でございます!
しかし、経理方面でしたらここにもいるのでは?と聞き返すと
なんでも建設業専門の経理を扱える方はいらっしゃらないそうです。
それは確かに額に手を当てて肩を落としたくもなります。
「俺もも3級の建設業経理事務士の資格はあるんだが、決算もできる
その上の2級…建設業経理士の資格保持者がいないとダメらしいです。
年2回は資格試験が行われるからどうかと思ったら募集が終わってて
それでもう一人雇う必要がでてきたんですよ。
あてがなきゃ紹介すると言われましたが、それはお断りしました。」
私達の仕事もかなりの数の資格を保持しなければ行えませんが
の仕事もそうなのでございますね。
それにしても、経理にも種類があるなど、私初めて知りました。
「増員の件は問題ないかと…お知り合いにその資格をお持ちの方は?」
「一人います。俺が以前シンオウで頭はってた時にとらせました。
ただ問題は…そいつが今どこにいるかわからないって事なんです。」
とうとうが頭を抱えてしまいました。
えぇ、この様な状態では私もクダリも同様に頭を抱えたくなります。
「取り敢えず、心当たりを片っ端からあたってみます。
それで駄目だったら総務部長に頼んで紹介してもらう形で良いですか?」
「、目が死んでる。うん、全部任せるから好きにして?」
「えぇ、少しでもが仕事をしやすい環境になるのでしたら
私達は助力は惜しみませんので、全速前進して下さいまし。」
大変な問題ではありますが、何事もやってみなければ始まりません。
まずはできる事を全てやり遂げて、それからの話でございますね
「ボス達はどうぞ仕事を続けてください」
私達に向けられたの笑顔がより力なくなっております。
仕方が無い事でしょう、昨日イッシュに来たばかりで、今日から仕事を始めて
そして今、とんでもない問題に直面しているのですから。
クダリと一緒にデスクに向かい書類整理を始めましたが
正直気になって仕方がありません。書類の文が頭に入ってきません。
はライブチャット画面を開いたのか何か話を始めました。
声からして、ですね。探してる方とは二人のお知り合いでしょうか?
「、お前って建設簿記の資格2級ってとってたか?
あ、そっか…いや、こっちで仕事すんのに決算処理できる2級の資格が
必要なんだとよ。だからお前だったらもしかしてと思ったんだが。
あぁ、そうだよな、そんな暇ねぇわな。」
成程、も持ってないのですか。しかしチャンピオン代理だけではなく
その他にも色々と資格もってるなんてきっと努力家なのでしょうね。
「それじゃ、が今どこにいるか知ってるか?
いや、俺ん所にはあの野郎、連絡なんざよこさねぇよ。…わかってる。
…はぁ?マジでか?!おう、ちょっと待て俺のライブキャスターの番号…
あぁ、こっちに連絡くれるように頼んでいいか?おう、すまねぇな。
あ?そんなモンは知らねぇよ。首に縄つけてでも引っ張り込む!
おう、わかった。んじゃまた何かあったら連絡する。したっけな。」
って確かの従兄弟様ではございませんでしたか?
確かとと同じマスタークラスのトレーナーと言ってた様な
その様な方がここに来られるのでしたら、是非バトルをしたいですね。
クダリが珍しく仕事に集中しているので、慌てて私も仕事を再開します。
なんとかなりそうなのでしょうか?、是非とも頑張ってくださいまし!
のライブキャスターが着信を伝え。彼が通話ボタンを押して
色々と話をした後で何だか困った顔をして電源を切るのが見えました。
苦笑いをしながら額をおさえておりますが、どうしたのでしょう?
クダリの方を見たら、書類整理の手が止まってました。確かに気になりますね。
その後、パソコンに向かいライブチャットを開始された様でございますね。
「おう、久しぶりだな…うわぁ、二人共旦那似か?めんこいなぁ!って
今はその話をしてる余裕はねぇんだよ。って、ギーマさん?
お久しぶりです。結婚式以来っすかね?えぇ、俺は元気ですよ。」
ギーマ様とは四天王のギーマ様の事でしょうか?
確かギーマ様はある女性と壮絶なバトルを繰り広げて
その相手と結婚したと聞いております。確か奥様のお名前は……?!
もう私、これ以上どうやって驚けばいいのか見当もつきません!
のコネクションが凄すぎて、息をするのも辛いでございます。
横でクダリも口を開けたまま放心して固まっております。
「んで、本人はどこに?って…久しぶりだなおい、1年ぶりか?
お前までイッシュに来てるとか思わなかったぞ?…あぁ?リーグに挑戦中?
もうそこまでやりやがってんのか?!…おう、実はな…」
時々怒鳴るような音声も聞こえてきたりもしますが、が笑ってるので
喧嘩にはなってないのでしょうか?
それにしても、どちらも声がよく似ておりますね。お顔も似てるのでしょうか?
どうやら話は終わった様で、がパソコンの電源を切ってこちらを見ました。
「、どうだった?資格持ってる人見つかった?来てくれるって言ってた?」
クダリが待ちかねた様に問い詰めております。私も聞きとうございます!
「明日、昼頃にはこっちに来てもらえるようになりました。
…俺の従兄弟です。ちょっと癖はあるのですが
仕事に関しては文句のつけ用がないほど完璧にやる奴ですから。」
私達にそう言って疲れきった様には笑いました。
えぇ、お疲れ様でございます!しかし問題は解決したので良かったですね。
それにしても、様とはどの様な方なのでございましょう。
バトルもしてみたいですが、と同様に仲良くして頂けると良いですね。