-序章・ダメ出しされた上司達-

序章

ダメ出しされた上司達




トウヤ様達と別れた後、私達は執務室に戻って驚いてしまいました。


「クダリ、私夢でも見ているのでしょうか…?」



「二人で同じ夢見てる?ボクも思ったけど、ノボリ現実見なきゃダメ。」



達が使うデスクが入り少々手狭になってますが、そうではなくて

私たちが出る前に、部屋中にあった書類が綺麗に整頓されているのです。

それも重要度、緊急度によって付箋の貼られたファイルに纏まって、

それらが更に別な各部署ごとの名前が書かれたボックスに分けられて入ってます。

広さはあるのに雑多なイメージがあった執務室がスッキリしているのです。



「あ、この書類失くしたと思ったやつ。」



クダリが自分のデスクにある書類の束を見てつぶやきましたが…

貴方、書類をなくすとか言語道断でございますよ!

とりあえず、ボールホルダーを外し、コートと制帽をハンガーに掛けて

所定の場所におきました。新しくボールホルダーを掛けるフックがつけられており

ふむ…これは機能的でよろしゅうございますね。



「すっごい!これなんてビフォー アフター!!」



あぁ、その様なテレビ番組がございましたが。言い得て妙でございますね。

それにしてもあの時間の間でここまで整頓されるとは…

クラウドと、マジでハンパねぇ!で、ございます。



「お、二人共戻ってきてたか」



がカラーボックスを片手に部屋に入ってきました。

あれは確か引き出しの取手が外れており廃棄処分する予定だった物です

しかし、今は新しく取手がつけられそして各棚に小さな仕切りがついてます。



、これ廃棄処分にしようと思って隅っこに置いてたやつ?」



クダリが興味深げに新しくなったカラーボックスを見つめております。

白と黒のチェック柄のそれはあなたのお気に入りでしたものね。



「おう、クラウドに聞いたらそうだって聞いたから、ちょっとアレンジして

書類なんかの一時置き場にしようと思って持ってきたんだ。

まだまだ使えるのに投げる…あーっと、捨てるなんて勿体無いだろ?」



、あなたそんな事までできるとは…いったいどこまで器用な方なんですか

私、あなたが『実は地下鉄も運転できるんだぜー』とかおっしゃられても

もう驚かないかもしれません。今日は彼のお蔭で驚いてばかりでございます。



「一応、クラウドに聞きながらやったから大丈夫だとは思うんだが、

なにか問題とかはないか?一応それぞれの書類とか目を通したものは

どこに置いたかってのは覚えてるから言ってくれ。」



「いえ、全くもって問題はございません。それにしてもこれだけの片付け…

私達が言うのもなんですが、大変でしたでしょう?」



「ボク達、片付けるの実は苦手。だからすっごく助かった!」



クダリがの手を握ってブンブンと音が聞こえそうなほど振ってます。



「キチンと法則?みたいな感じでそれぞれ置いてあったからそれ程でもないぞ。

あれだ、二人共ゴチャゴチャしてても自分でどこに何ががあるかわかってたろ?」



パソコンを起動させて動作チェックをしている彼にクダリも私も頷きます。



「でもな、自分がわかってるからそれで良いと思うなよ?

書類取りにきた部下がこれだったら困るだろう。そんな上司じゃダメだ。」



「でも、ちゃんとボク達場所の説明してる。それにほとんどの書類は皆

ボク達がいる時に取りに来る。だから問題なし!」



クダリがに説明した後、彼は目元が少々細まり鋭くなりました。



「それじゃ、ダメだってんだ。自分達がいなくても仕事が滞りなく出来る様

上司である二人がキチンと示すべきだ。下のモンに負担がかかるだろう。

後、クダリ。お前宛の書類がノボリより多いんだが…どういうことだ?

お前の方が忙しい役職なのか?」



「仕事量は私達二人の間にそれ程の違いはございません。

クダリはまとめて取り掛かるタイプでございますので。」



私が代わりに答えますと、クダリはどこかバツが悪そうな顔をしました。

えぇ、先程も言いましたが、やれば出来るのに困ったものでございます。



「あぁいるよなぁ、そういうタイプ。あんまり下の者をヤキモキさせんなよ?

後ノボリ、お前の所もやたらと書類が多いんだが…この書類って必要あるのか?」



ダンボール2箱にびっしりと無造作に入れられたそれらを、私、確認しました。

これは、全部終了しているものでございますね。



「いえ、こちらにある書類に書かれている事は全て解決しております。」



「だったら、さっさとシュレッダーかけちまえよ。これだけの為に

一体どんだけスペース使ってたと思うんだ?」



「いえ、でも…もしかしたら何かにまた使う事があるかもしれませんので…」



私が中の書類を見ながら説明しましたら、はため息をついてしまいました。

はて、私…何かやらかしてしまいましたでしょうか?



「ノボリは物が捨てられないタイプなのか。ったく、揃いも揃ってめんどくせぇ」



怒ってる?今まで別にこれでやってきたから大丈夫だよ?」



「えぇ、私も誰にも迷惑かけてないと思って今までやってきておりますが?」



頭をガシガシと掻きながら何やら面倒臭そうにしておられる

私達は顔を見合わせてしまいました。



「二人共、俺のダチにそういう所ソックリなんだよ。

なんて言うか…デジャヴ?って言うか…ホント、ほっとけないんだよな。」



そう言って笑われた顔が困っているようで、どこか嬉しそうに見えました。

彼はご友人の事を話すときにこういう表情をよくされます。

なぜでしょうか、私に小言を言われても気になりません。

普段ですと、人にアレコレと言われる事は非常に不愉快になるはずですのに。

クダリの方を見ればどことなく嬉しそうにさえしております。



「こうして知り合ったのも何かの縁だ。こうなりゃ、とことん付き合うぜ。

ノボリもクダリも!お前ら、そういうのがどれだけ部下の負担になるかって

わかってんのか?これからはそういう所を叩き直してやるから覚悟しろ!」



「ぎゃー、痛い、痛いってば!」



「当たり前だ!痛くしてんだ。愛のムチだ愛の!」



クダリの頭を拳骨でグリグリしながら笑っておられるを見ておりますと

どちらが上司なのか、これではわかりませんね。

クダリも痛がってるのは確かでございますが、なにやら楽しそうにしております。

私も、そんな二人を見ると心がホッコリと暖かくなってまいります。



のご友人と申されますと、先程トウヤ様とお話された時に言っていた

従兄弟様でございますか?」



従兄弟と聞くと、どうしてもあの2人を思い出して気が重くなりますが。

その方はきっと違うのでしょうね。私、少し羨ましく思います。



「いや、っつーんだがな。色々とやらかしてくれるんだよ。

そして、はノボリと同じく物だけじゃなく、なんでも…捨てられなくてな。

結局は自分で自分の首を絞めちまうタイプなんだよ。

んで、は本能と煩悩に逆らわないタイプ。なんでもそつなくこなすクセに

自分の好きなこと以外はどうでも良いってタイプなんだ。…クダリみたいだろ?」



ひどい!ボクちゃんとやる時はやる!」



クダリが顔をちょっと赤くして反論しておりますが、説得力は皆無でございます。



「でも、エンジンかかるまで時間かかるだろ?そして、自覚がないんだよ。」



「そっくりでございますね。」



「だろ?」



二人とも酷い!と、まだ言っているクダリを放置して、私はデスクに向かって

本日の業務日報をまとめる事にしました。



「あ、そうだ。はこの後時間ある?ボク達もうすぐ仕事終わるから

さっきの書類の中のこのチェックした分はよくわかんないから一緒に買いに行こ?

後ね、不動産屋に行ってさっさと部屋見て、良かったら契約しちゃおう?」



クダリもデスクに向かい、残りの仕事を片付け始めます。

この分ですと本当に早く仕事が終わりそうですね。なによりでございます。



「そうしてくれると助かるが、いいのか?デートとかないのか?」



クダリから渡された書類のチェック項目を見ながらさらに何かメモをして

おります。横から覗いてみればそれぞれの種類ごとにマークをつけている様です。



「カノジョとかいない!だから全然オッケー!!」



「二人ともモテそうなのに、厳選しすぎなんじゃね?」



「私はどうも女性が苦手ですので…」



「なんだ、女性問題でトラウマでも出来た感じか?それともつまみ食いしすぎて

飽きちまったクチか?」



それ、ちょっと酷くない?まぁ、ボクも来るもの拒まない時もあったけど

すっごく忙しいから付き合う時間なんてない。」



「そういえば、クダリは一時女性関係が乱れた事がございましたね…

別れた女性がストーカーになってジュンサー様のお世話になってからは

流石に懲りたのか、ピタリと落ち着きましたが。」



横でおしゃべり!と叫ばれましたが事実でございますので。



「私もそこまでなのはありませんが、待ち伏せされたり等多々ありまして…

ですから非常に言いにくいのですが、が連れてきたい方が女性と聞いて

ちょっと尻込みしていたのでございます。」


私達の話に女ってそういう所怖いよなとおっしゃられた言葉に

クダリの顔つきが変わりました。凄く真剣な表情をして、どうしたのでしょう?



「あのね、ボク達確かにモテる!そのお蔭でここの女子職員とかも

結構めんどくさい感じになってる。がきたら多分色々言われたりとか

ひどい事されたりとかすると思う。だけど、ボク達を守るから。」



あぁ、そうでございました!今回ばかりは黙って見てはいられなくなるでしょう。



「女の嫉妬ややっかみはどこにでもあるからなぁ、でもアイツもそんなに

ヤワじゃないしオレも目を光らせるが頼むな。」



「もちろん、最大の努力はいたしましょう。…っと、私の仕事は終わりましたが

クダリ、あなたの方は…終わったようでございますね。」



最後に私のサインを入れた後、日報を引き出しにいれて片付けます。

クダリも完成書類と書かれたボックスに何枚かの書類を入れて席を立ちました。



「どーせなら買い物と契約終わった後にまた一緒にご飯食べよ?

今から色々用事済ませたら丁度いい時間になる!」



「そうだな、今度は二人の行きつけの店があったら教えてくれよ。

後、どうせなら軽く飲める所だとすげー嬉しい。」



「ボクあまり飲まないけど、いい店知ってる!静かで雰囲気も良い。」



「私も心当たりがございますので、ご案内いたしますよ?」



私達の提案に嬉しそうな顔でが手を叩きました。



「二人とも、店のチョイスとかセンス良さそうだから楽しみにしてるな。」



「センスはどうか知らないけど味と居心地の良さは保証する!」



「では、急いで着替えてまいりますので、少しお待ちくださいまし。」



クダリが手を振ったのに応えて、も笑顔で手を振り返します。

用事云々よりも、私としてはそちらの食事の方が楽しみでございます。

あぁ、これではまた彼にそんな上司じゃとダメ出しされてしまいそうですね。