-序章・まだ見ぬ部下の情報収集-

序章

まだ見ぬ部下の情報収集



バトルは私達の勝利で終わり、駅に着くまでの空いた時間をいつもの様に

シートに座ってトウヤ様とトウコ様の楽しいお話を聞いておりました。



「あのね、…シンオウのチャンピオン代理ってどんな人だったの?

バトルとかも気になるけど、他に…うーんと例えば乗り物酔いが酷いとか

普段はどんな感じなのかな?」



クダリが2人にポケットから棒付きのキャンディを出して渡しながら

聞いております。それにしてもあなたはいつもお菓子を常備してますね。

でも、私も気にはなっておりました。が勧める方ですから

それなりの方だとは思うのですが、女性でございます。

私達の職場にも女性職員はいらっしゃいますが、まともに仕事をされてる方など

極々一部しかいらっしゃらないのです。そしてその方々も、私達が

その頑張りにお声をかけようものなら、他の女性達からのおぞましい仕打ちに

あわれてしまい、結局は潰されてしまうのです。

女性蔑視などする気はなくても、あの独特な雰囲気は好きになれません。

そういう事もありまして私、少々…いえ、かなり女性が苦手でございます。



「あれ?クダリさん、どうしてさんが乗り物酔い酷いって知ってるんです?

私達、前に話した事ありましたっけ?」



「いきなりどうしたんですか?」



もらったキャンディを早速口に入れてお二人が同時に首をかしげます。

性別こそ違いはあってもそのあたりは流石双子にございますね。

私とクダリもその様に思われているのでしょうか?



「うん、ちょっと事前調査? 乗り物酔い、そんなにひどいの?」



自分もキャンディを口に入れるだけでなく私にもいただけるのですか。

私、甘いものは好きですので受け取りますけど。



「うん、だからもっぱら移動は空を飛ぶかテレポートだって。

そういえばさんの手持ちの色違いリザードン凄かったなぁ。」



「吹雪の中を空を飛ぶとか信じられなかったけどねー。楽しかったけど。

トウヤのレシラムといい勝負とか、あの子、凄く強かったよね!」



お待ちくださいまし!色違いのリザードンにも非常に心惹かれますが

それよりも聞き捨て出来ない事をサラッとおっしゃいませんでしたか?



「なにそれ!トウヤ、伝説のポケモン出したの?」



「トウヤ様…伝説のポケモンはそう簡単に人目に触れさせてはいけないと

アデク様やアララギ様にもご注意を受けておりましたでしょう!」



希少種、まして伝説クラスのポケモンについてはどの地方においても

トップシークレット事項でございます。強大な力を持つ彼等が悪用でも

されれば、ひとたまりもありませんからそれは至極当然な事でございます。



「勝手に出てきてしまったんですから、しょーがないんですよ。

でも、さんは全然驚かないどころかあいつの毛繕いとか始めるし。」



「なんでも、ポケモン達に懐かれやすいんだって言ってましたよ?

野生のポケモンとかでもそばに寄ってきちゃったりとか。

リングマが来た時は驚いたけど、さん普通に撫でてたし。」



おかげで色んな見た事のないポケモンに出会えてラッキーだったよね。と

顔を見合わせて笑っておられます。そう言うレベルでは無いと思うのですが。



「そういえば、バトルレコーダーを拝見した時はその…とても威圧的で

冷たい印象を受けたのでございますが…」



画面に映るトウヤ様を見つめる瞳は絶対零度の冷たさをお持ちになり

尚且、指示出しの冷静さと的確さが素晴らしくて…

女性に申し上げる言葉ではございませんが非常に男前でいらっしゃいました。



「ノボリみたいな仏頂面だった!ボクそれで覚えてたから、さっき見た時に

雰囲気が違ったからすぐにはわかんなかった。」



「え?さんイッシュにきてるんですか!オレもう一度バトルしたいんで

是非合わせてくださいよ。次は絶対に勝つ!!」



「前にいつかは必ずイッシュに行くからその時はよろしくねって言ってたけど

あれ、本当だったんだ。私、ポロックの作り方教えてもらいたい!」



お馬鹿さんですね…やっちゃったーという顔をしてももう遅いですよ。

ですが、クダリには彼女の顔が仏頂面とは言え、私と同じにに見えたのですか。

普段でしたら頭に拳骨のひとつでもお見舞いするところですが、あの様な表情が

私にも出来ているのだとわかったのでやめておきましょう。



「ライブチャットでチラッと見ただけ。んで、って冷たいの?怖いの?」



「まさか!すっげー優しい人ですよ!!」



「むしろ優しすぎて色々貧乏くじ引いてそうな…ね?」



二人がすごい勢いで首を横に振ってクダリの言葉を否定しています。

クダリもうまく誤魔化せてホッとしているようでございますね。



「前にも話したと思いますけど、あっちに行った時期がシンオウ冬祭りとかって

すげーでかい行事と重なっちゃって。ポケモンセンターどころか泊まる所が

全く無くて困ってたオレ達を泊めてくれて、結局こっちに帰ってくるまで

ずっとお世話になっちゃったんですよ。」



「私達の手持ちのお世話もしてくれて、さんが作ったポフィンのお蔭で

ポケモン達も絶好調だったし、現地の限られた場所しかいないって

ポケモンをわざわざ見せに連れてってくれたりしたんです。

こんなお姉さんいたら良いね!って2人で話してたんですよ。」



私達に、シンオウでの出来事を楽しそうに話している姿だけを見れば、

あれだけの偉業をなされた人物と同じとは誰も想像できないでしょう。

イッシュの英雄として名前が広がってしまって、一時二人の周囲には

その偉業のおこぼれに預かろうとする下世話な人々も寄ってこられました。

まだ、心根が柔らかな多感な時期でございます二人が心配で、

他の地方にでも武者修行に出ては?と進言したのは私達でございます。

なんにせよ、気難しい方では無いとわかっただけでも収穫でございますね。

私達の仕事はサービス業でございますので、いくら設備担当だと申されても

仕事ができる方だと申されましても、個人プレーをされる方では困りますから。



さんにはオレ、救われたんですよ。ホラ、イッシュの英雄なんて言われて

色々周りがオレを見る目が一気に変わったでしょう?オレは今までと同じなのに…

オレ、シンオウに行ってた時もそれ引きずってたんだけど」



「『後悔してないならそれで良いんだよ』だっけ?自分のやりたい事、

自分がしなくちゃいけない事、自分にしかできない事をやったんでしょって

それに結果がついてきただけだから後ろを振り向く必用はないよって…ね?

あれからトウヤ、ウジウジ悩まなくなったもんね!」



確かにトウヤ様は武者修行から戻られてからは何か吹っ切れた様でしたが

成程、そう言う事があったのでございますか。



「なにそれ、カッコイイ!」



「そうなんですよ!さんって女の人なのにカッコイイんです!

私も、あんな人になりたいなぁなんて憧れてるんですよ。」



クダリの言葉にトウコ様が拳を握りしめて同意されます。

トウヤ様もそれに頷かれた後、ふと思い出したかの様につぶやかれました。



「理想と現実は元々ひとつであるべきなんだって、

まるでオレとアイツのドラゴンの事を言ってるみたいだったな。

理想を持った時に現実と言う名の真実が目の前に見えてくる。そうしたら理想を

叶えるように自分が動けば良いんだって。そして、ひとつの理想が叶ったら、

次の理想を見つけて進んで行けば良いんだよって…

そして、それを繰り返してただ前を見て行けば良いだけなんだよって。」



とても深いお言葉にございますね。成程、これは女性だからと言って

胡乱な目で決めつけようとしていた私がお恥ずかしい。



「でもね、その後が笑っちゃったよねー」



「うんうん。オレ達が、さんカッコイイ!って言ったら

私は過去を振り返らないんじゃなくてすぐに忘れて振り返れないんだよって

だから、真似すんなよ?って…こんな感じ?」



その時の様子を再現されているのでしょう、そんなお二人がおかしくて

私達も思わず笑ってしまいました。

なんにせよ、お会いするのが楽しみになったのは確かででございます。