じゃない世界の訪問者達
うちの連中を無事に…かどうかはわからないが、元の世界に帰して
取り敢えず俺とは、再び応接室に通された。
ここの両ボスはチャレンジャーが来たので席を外している。
「えっと、ジュニアさん。
ちょっとお聞きしたいんですが、ジュニアさんがハイリンクした時って
泊まる所ってどうされてるんでしょうか?」
「俺は親父の家に泊まらせてもらってるけど…
そっか…、二人共これから泊まる場所の確保しなきゃならねぇよなぁ。
って、さん砂糖入れすぎ…じゃないのかよ!」
3つめの砂糖をいれながらが話を切り出した。
そうなんだよ、今後…ここでの仕事をするまでにどうするか。
それが問題だったりする。
「ポケモンセンターも、トレーナーカードが使えるかわからないし
だからここのギアステに仮眠室があったら、お借り出来ればラッキー?」
俺等の服装は仕事中だったから、作業服とツナギ姿だ。
足元は安全靴だし、これじゃあちょっと外に出るわけにはいかないだろう。
最悪風呂は諦めるが、寝る場所だけはなんとか確保をしたかった。
「いや、流石に仮眠室になど泊める事は出来ません。
こちらでホテルを手配しますので、ご利用されてください。」
「それはダメですよー。そんな無駄なお金使っちゃダメです。
仮眠室が無理なら、ここのソファーでもオッケーですよ?
こういうの私達慣れてますんで、皆さんが出勤されるまでの間
ここで寝かせてもらいましょう。そうしましょう。」
駅長さんとが押し問答をしている時に
ジュニアさんがポンと手をたたいて思い出したように提案してきた。
「ソファーでも良いってんなら…親父の家に泊めれば良いんじゃねえの?
俺はシンゲンと、晩飯一緒に食おうぜって約束してるから
そのまんま泊まっちまうと思うし。どうせ、今日だけなんだろ?
あのソファー寝心地は使ってる俺が保証するぜ?」
「えぇ、明日の夜から作業に入って突貫で終わらせる予定です。
作業終了予定は明後日の午後を予定してますし、色々と下準備や
解体も必要になるので、その位から始めないとならないでしょう。」
尚更今日ゆっくり寝ておかなきゃ不味いだろと言う駅長さんを
無理矢理丸め込んで、なんとか了承してもらう事に成功した。
取り敢えず、寝る場所ゲットでひと安心したぞ。
それから、食堂の厨房で責任者の人と打ち合わせをして
駅長室を借りて書類としてまとめあげる作業に追われていた。
書類が完成した時に、ここの両ボスが私服姿で中に入ってきた。
「お父さんと二人とも、仕事終った?迎えに来たよー。」
「あぁ、丁度二人から作業予定表と工程表を貰った所だ。
それにしても、施設保全管理か、うちでも検討してみるか。」
駅長さんが書類をファイルして、机の上に置いて着替えに向かう間
ここの両ボスに買い物に行きたいと伝えておいた。
「何が必要なものがございますのなら、用意させてくださいまし。
お二人共勝手の違うこの状況で大変だと思いますので、わたくしたちで
なにかお手伝い出来る事があれば、なんでもおっしゃってくださいまし。」
「必要な物っちゃそうですね。洗面道具と後は下着ですけれど…
ホントに用意してくれるんですか?」
がニヤニヤしながら言えば、二人共動揺しまくってるし。
俺も同じ物が欲しいが、用意されたくないから気持ちだけ受け取っておく。
そんな感じで、着替え終わった駅長さんも交えて近くのショップで
必要な物を買った後でお宅にお邪魔させてもらった。
が手伝うと言って駅長さんと一緒にキッチンで晩飯の支度を始める。
俺はボス達と一緒にソファに座っていて、色々と質問攻めにあっていた。
「えーっ!シンゲンがバトルトレーナーの統括部長でおじさんなの?
こっちのシンゲンはぼくたちと歳が近いよ。」
「ジャッキーがギアステのシステム管理責任者でございますか。
そちらのジャッキーもギアステに住まわれているのであれば、
ある意味では適任かもしれませんが、それでも、わたくしたちは
彼に外の世界を是否見て欲しいと願っております。」
「ラムセスが熱い人なんて信じらんない!
あのね、こっちのラムセスはスーパードライ!誰も勝てない!」
「色々と違いがあるんだな…、でも二人共きちんと恋愛してるってのが
俺は一番驚いた。なんてったってうちのボス達ときたらその辺がなぁ…」
「、その話もっと詳しく!向こうのノボリも奥手なの?」
「クダリ、わたくしに失礼でございます!
そちらのクダリは来るもの拒まずではないのでしょうか?」
「ノボリひどい!今はそんな事ないんだから、若気の至り?
ノボリだって結構色々あったの、ぼく知ってるんだからね。」
「二人共、どっちも失礼じゃないのか?
ノボリは以前朝礼で、自分の好みを手持ちのシャンデラの様な人って言うし
クダリは一時そんな感じの乱れた時期があったみたいだな…。
だが、どっちもガッツリ肉食系男子だし経験値もそれなりだぞ?」
俺が向こうの二人の恋愛事情を話すと、大笑いしてるし。
でも、こっちの二人も経験値で言えば似たようなものかもしれないな。
「おいおい、そっちの朝礼はそんな事も話すのか?
オラ、飯が出来たぞ。クダリはテーブルの上を片付けろ。
ノボリ、取り皿を用意してくれ。」
「いや、さん。あの時は色々とゴタゴタしてたんですよー。
でもあの朝礼は今でも伝説として、職員達に語り継がれていますけどね!」
さんとが盛り付けた料理を並べ始める。
サーモンと野菜のスープにカブのあんかけ、豚肉の生姜焼きにだし巻き卵
そして白飯とか…俺等はご飯の国の人だから、すげぇ嬉しいぞ!
全員で手を合わせていただきますをした後で銘々におかずに手を伸ばす。
「このサーモンのスープは色んな野菜が入ってるし、塩味が丁度いい!
ねぇねぇ、バター落としても食べてもいい?」
「クダリさん、大正解ですよ!ホントは塩味よりも味噌味の方が
メジャーなんですけど、郷土料理なんです。お口に合って良かった!」
「俺は味噌味の方なら食ったことがあるが、塩味も美味ぇな。
この料理が郷土って事は、二人共北の地方出身か?」
「俺等はシンオウの出身なんですよ。確かに味噌ベースが有名だが
俺は塩の方が好きだな。この生姜焼きも甘めのタレが良いですね。
さっと茹でた千切りのキャベツを飯の上にのせて、その上に肉をのせてから
マヨネーズをちょいとかけて、一気にがっつきたくなる!」
「シンオウか、るーるるるーとか言ってキタキツネを呼ぶドラマが…っと
悪ィ、ちょっと似て非なるシンオウを舞台にしたドラマを知ってるんでな。
別な世界の話とかしちまってすまねえな。」
「二人共びっくりしてるけど気にしないでね
お父さん、前から時々こうやって、わからない事言ってた。
ぼくたちも今は良いけど、前は良く頭にハテナマークつけてた。」
「いや、気にしてないですよ。どんな形でも思い出は大切ですからね。
面白そうなんで、さんもどんどん話してかまわないですよ?」
「そうそう、思い出はプライスレスですよー。」
そういう気持ちはよくわかる。
さんが一瞬寂しそうな表情をしたのを見て、ノボリが話題を変える。
「このカブの煮物でございますか?は様が作られたのですか?
見た目も凝っておりますし、やはり女性が作るものは繊細でございますね。」
「作り方は豪快ですよー。サーモンの切り身をスプーンでこそげ落として
それから包丁でダンダンって叩いてミンチにして
袋の中にそれとくりぬいたカブの部分をみじん切りにしたやつをぶち込んで
調味料を入れてグリグリ袋を揉んで混ぜてからカブに詰めるんですから。」
「それでキッチンから、まるで大工でもしてる様な音がしたんだ。
でも、味はとっても優しい感じでぼくは好きかもしんない。」
「私はさんのだし巻き卵の虜になりましたよ!
私はどうしても固めになっちゃうんで、ほうれん草とか海苔を入れて
一緒に巻いて作るほうが多いんですよねー。」
「それも美味いな。さんの作ったものは俺でも作れそうだから
レパートリーが増えてすごく助かるし嬉しいぜ。」
「よく言えば手早い、ぶっちゃければ手抜きのレシピなら任せて!」
全員が笑いながら、和やかに夕食を堪能した。
その後でシャワーを借りてすっかり寛いだ状態で夜が更けていく。
俺等が他地方のリーグ制覇者ってのが会話の流れでバレたり
がシンオウでチャンピオン代理をしてたって暴露したり
まるで初めて向こうの二人と会った時に戻った様な錯覚になる。
その位こっちのノボリもクダリも同じ様に純粋で、そしてそんな二人を
育てたさんは凄いと正直思った。
「んじゃ、毛布ありがたくお借りしますね。
うわーい、ジュニアさんの言ってた通りで寝心地良さそう!」
「、ほんとにここで良いの?ぼくのベッド使っても良いんだよ?」
「様もわたくしのベッドをお貸ししますよ?お客様にこのような場所で
お休みいただくなど、とても心苦しいのですが…」
「俺等は客じゃないんだから気にしなくて良いぞ。
問答無用で転がり込んだんのに、こうやって寝床を提供してもらえるんだ
それに明日も二人は通常業務がテンコ盛りなんだろ?
それこそソファーになんて寝かせるわけにはいかないからな。」
それぞれから二人で毛布を受け取ってさっさとソファーに潜り込む
おやすみと言えば、やっと諦めてくれたみたいで皆部屋へ戻っていった。
時計の針が時間を刻む音がやけに部屋の中に響き渡っている。
流れる時間にすら置いていかれた様なそんな錯覚すらしそうな空間で
俺は何だかいつまで経っても眠れないでいた。
「、眠れないのか?」
「寝心地は問題ないんだけど、これからの事が問題ありすぎるからね。」
同じ様に、寝た気配の無いもうひとつのソファーに声をかければ
は起き上がりそのままソファーに腰掛けた。
「確かに、あいつらには仕事が終わればすぐ戻るって言ったが
それが答えなのかは終わってみなきゃわからない事だしな。」
俺も起き上がり、薄闇に浮かぶの不安げな表情を見つめる。
確かに確証なんて無い。やってみなきゃわかんないってのは
なんとももどかしいもんだが、絶対戻らなくちゃならないんだ。
テーブルを見れば、俺等のボールホルダーで5番目のボールが
それぞれに赤く点滅をしていた。
さすがにここじゃ出せないんで、俺はなだめるようにボールを撫でる。
「確かにここも居心地が良いが、俺等がいる場所じゃない。
俺等のあるべき場所は、いなきゃならない場所は向こうなんだ。」
俺の言葉にボール達が一斉に答えるように揺れる。
も自分のホルダーに手を伸ばし、そっと撫でる。
「そうだね、ちょっとこの状況に今更ながらに不安になっちゃった。
うん、どんな事をしても帰ろうね。
それじゃなきゃ私、またノボリさんに正座付きでお説教されちゃう。
うし!最悪な時は神頼みしてでも戻ってみせる。
その時はお願いね?…アルセウス。」
が5番目のボールを取り出し、そっと抱え込んで毛布に潜り込む
大丈夫だ、任せろとでも言う様にボールが小さく揺れて赤く光った。
「最悪の時は、マジで頼むからな。…ディアルガ…。」
俺も、同じ様に5番目のボールと一緒に寝の体勢に戻る。
神様のイタズラでこっちに飛ばされたっていうんだったら、
こっちも神様で対抗してでも戻ってやるさ。
手のひらからボール越しに体温が伝わるような気がして
なんだか安心して俺は瞳を閉じた。