橋の向こうの光の壁の中から、見慣れた同じ顔が出てくる。
光に負けて閉じていた目を開いて、それからクダリが一気に笑顔になった。
「あっ戻ってきた! よかったー、ジュニアがいるー!」
「先に戻っていたのでございますね!」
駆け寄って来て大げさに抱きしめられて、苦笑する。
「おう。お帰り。そっちも無事に帰ってきて何よりだ」
「びっくりしたよー! バトルしてる途中でが走ってきてさ、ジュニアが消えちゃったって!
話聞いたら多分戻ったんだろうって思ったけど、こっちに戻ったのかニホンに戻ったのかはわからないしさー。
いたー! よかったー!」
俺を抱きしめたままはしゃぐクダリはとりあえず放っておいて、
ほっと胸をなでおろしているノボリに視線を向ける。
「親父は?」
「わたくし達の後から戻るとおっしゃっていましたよ。
ジュニアが心配だから、わたくしたちには先に帰れ、と。
わたくし達はバトルミッションだったようで、すぐ帰れました」
「そうか」
クダリがちょっと思案顔で上をむく。
「でも大丈夫かなあ、お父さん。お父さんに対応する人って、向こうでは誰なんだろ?
ジュニアがさんだったんだから、さんのお父さんとか?」
「いや、多分……さんじゃねえかな」
「おや? 何故そう思うのでございますか?」
「何か似てるだろ、あの二人」
「そう? 確かに二人ともカントー系だけど、そんなに顔は似てなくない?
あーでも、雰囲気はちょっと似てるかなー?」
「雰囲気もそうだけどよ……」
揃ってカントー系の顔立ちの、なんとなく訳有りそうな三人組。
それに、ギラティナ。
伝説のポケモンが周りにうろついてるってことは、まさかとは思うが、親父や俺と同じように……?
だとしたら、さんが俺に対応したように、
課長か、あるいはもう一人の部下の人かが親父に対応してる可能性がある。
いや、考え過ぎか?
首を振って確証のない考えを追い出して、まだ閉じる気配のない光の壁を見る。
しばらく目を離しても大丈夫そうだな。
「ノボリ、クダリ」
「なに?」
「家まで送ってってくれ。テリーたち、家だろ?」
「え、そうだけど……どうすんの?」
「今野球やってんだろ? テリーたち迎えに行ってから、俺もやりに行く」
「ええ?! お父さん帰ってきてないのに!」
「心配ではありませんか!」
目を剥く二人に、呆れて首を傾けた。
「今のとこ、ゲートが閉じる気配もねえし。
帰ってくるまでここでボーっとしてたってしょうがねえだろ。
親父もいい大人なんだから自分でなんとかするって。腹が減ったら帰ってくるだろ」
「そんな家出したチョロネコみたいな……」
「相変わらず父さんに対してはクールでございますねえ……」
光の壁を振り向いて、ちょっと笑う。
「それにセンセイがいるしな。なんとかなるだろ」
「ああ、父さんへの心配<センセイへの信頼、なのでございますね」
「だからってちょっとお父さん不憫……」
兄貴たちはもそもそ言っていたが、やがて気を切り替えて頷きあった。
「まあ確かに、ここでぼうっとしてても仕方ないか」
クダリがゴルーグのボールをノボリに渡す。
「ノボリ、ジュニア送ったげて。んで、一回ここに、ムシャーナのテレポートマーカー持ってきて。
そしたら何か異常があればすぐ来れるでしょ。あとは交代で様子見てよ」
「そうでございますね。ではわたくしとジュニアは一先ずお先に」
「代わりにホームラン打っといてやるよ」
「あはは! よろしく!」
クダリを残してゴルーグの背中によじ登り、飛び立つ。
遠ざかる橋の向こうの光の壁を振り向いて、ノボリが呟いた。
「とはいっても、やはり心配でございますね。すぐに帰って来られるでしょうか」
結論から言えば、たっぷり二時間後に親父は帰ってきた。
しかもやりきった感満載の輝くばかりの笑顔で。
「面白かったぞー。もも、あのもう一人いた彼わかるか? あいつもな。
3人ともリーグ制覇者で文句なしのマスターランクだったんだ。
バトルミッションかもしれねえからってかこつけてバトルしてもらったんだが、
強いのなんの、久々に全力を出しての大勝負だった。いやあ勉強になった。また行きてえな」
子供みたいにはしゃぐ親父と、
「そうだったのー? あーもう自分たちと対戦する前にさんとかとも対戦すればよかったー!」
「惜しいことをしてしまいました……! もう一度行けるでしょうか?!」
悔しがって膨れるクダリとノボリと。
「これだから廃人は」
呆れながら、無事に親父を連れて帰ってきてくれたセンセイをこっそり撫でた。
「ありがとな」
俺の膝の上に顎を乗っけて、ふん! とばかりに鼻息を吹くセンセイがなんとなく得意げに見える。
伝説のドラゴン、ゴツイ癖にちょろすぎねえか。
あのギラティナも、さんに対してはこんな風なのかね。