めぐりあい
ファントムの誕生
目が覚めたのは病院で、真っ白な壁と天井と全てが白で囲まれた場所
よくある場面だけど、私はこんな病院を知らない。
たくさんの薬を飲んでたけど、その必要がないからって
退院して向かったのは自分の家と記された住所にあった一軒家で
ごく普通の家だけど、私はこんな家を知らない。
どうしてなんだろう、なんで私だけなんだろう…
父さん、母さん、弟のはどこにいるの?私の家はどこにあるの?
ここじゃない、ここにはあるはずが無い。だって、だってここは
ポケモンのいる世界なんだもの!
ずっとそれを認めたくなかった。
だけど、極々当たり前とでもいう様に存在している彼等を見て
私の存在が当たり前じゃないってわかったのは
自分の家となってる場所の自分の部屋らしい中にあった
トレーナーカードを見てからだった。
こんな文字知らないのに、どうして私は読めるんだろう?
名前は…私の名前、そしてが…それが私の名前
年齢も生年月日も何もかも同じ。
だけど私はであって、じゃない。
入院してる時にジョーイさんが教えてくれたのは…
はポケモン達と旅に出ていたみたいだった。
途中で自分の生まれた町に戻る機会があって、家族と会うはずだったらしい
だけど、その家族はが見てる目の前で事故にあって死んでしまった。
その事をはずっと悔やんでいたらしい。
自分で自分の命を絶つ真似をする位に、自分を責めていたらしい。
私…はそんな過去なんてない。
家族は健在で、私の世界にポケモンはいないから旅にだって出てない。
だけど、旅行中で車に乗っていて…そこで私はポケモンで遊んでいたんだ。
私が覚えている最後の光景は、真っ白な霧の中の眩しい光。
あれは…多分だけど対向車の、それもトラックみたいな大型の
ヘッドライト…だったと思う。
そのまま正面衝突かと思った時に父さんがハンドルを左に切って
運転席の後ろに座っていた私の横を、更に大きくなった光が包んだんだ。
そして、気が付いたときは病院のベッドの上だった。
私はじゃなくてになって、ポケモンのいる世界にいる。
デスクの上にはボールが6個…これは手持ちのポケモン達の物だろうか
恐る恐るボタンを押せば出てきたのはよく知ってるポケモン達で
ゲームの中での私の手持ち達だった。
トレーナーカードはノーマルカラーで、ジムバッチは3つ…
これは私のカードでもバッチでも無い。
私のカードはゴールドでジムバッチは全種類取得済みだし
チャンピオンに勝って殿堂入りもしていたはず。
どうしよう…頭が混乱してきた。どこからどこまでがなの?
なにもわからない、だけど私はここに居る、ここで生きている。
向こうに行きたい、向こうに戻りたい、だけどそれはいつできるの?
どうすれば良いんだろう…このままずっとここに居なくちゃいけないの?
と言う私がここに居る事で、はどこにいるの?どうしているの?
心配そうに私を見つめるポケモン達をボールに戻してから
途方に暮れたまま、私はずっと泣き続ける事しか出来なかった。
と言う私がになって、わかった事はそんなに多くなかった。
わかった事のひとつめはここがシンオウ地方だという事
どうやらギンガ団との争いなんかは終わっているという事。
シンオウ地方…私の、のいた北海道がモデルになった地方。
シンオウといえば神様ポケモンのアルセウスがいる地方だ。
全てを創ったといわれるポケモンなら、私に起こった事も知ってるかも
元の場所への帰り方も知っているかもしれない。
他に何も手掛かりになりそうなものが無くて、私は必死に旅をした。
全てのジムを巡って、四天王に勝利して、チャンピオンに勝利した。
ポケモンバトルはゲームとしてプレイしていた様なものじゃなかった。
臨場感、ポケモン達とのやり取り、その全てが私を魅了した。
だけど、殿堂入りだけは辞退させてもらった。
もし、向こうに戻る事になったら…がこっちに戻るはずだ。
ここまでやったのは全てとしてだから、その痕跡は残したくない。
私はこの世界では存在していない…幽霊みたいなものなんだから…
ようやくアルセウスと対峙する事になって、今までの事を全て話すと
アルセウスは面白そうに私を見つめてから、ゆっくりと首を横に振った。
『我が力の及ぶのはこの世界のみ。異質な存在には関与できぬ。』
「じゃあ私は……もう、戻れない…の?
ねぇ!ディアルガやパルキアに頼んでとかって、出来ないの?!」
『異質な存在に我等が力は及ばぬ…時に人の感情は計り知れぬ力を持つ
我には汝が現世の汝と入れ替わった存在に見ゆる。
現世の汝が再びこの世界へ戻る事を望めば、汝の望みも叶うやもしれぬ。』
アルセウスの言葉に私は絶望するしかなかった。
という人間は自分を否定して命を絶とうとしてたんだから
ここに戻りたいだなんて思わないはずだ。それじゃあ、私は…
「私は…もう元の場所に戻れないって言うの?」
突きつけられた現実にどうする事もできなくて、私はその場に膝をついた。
涙が止まらない…父さん、母さん、…大好きな家族と、もう会えないの?
そのまま泣き続けていた私にアルセウスが慰める様に近づいて
『汝が死すれば、現世の汝も戻って来よう。逆もまた然り。
なれどそれでは意味無き事。奇異なる哀れな人の子よ…
我等は此方の存在を認めよう…現世の汝に代わり、生を送るが良い。』
つまり、という私はこの世界にいらないって事なんだ…。
生きていようが死んでいようが、という存在はここで……終わった。