一章・共闘!ギアステ大掃除編 番外
小鳥は願う 後編
身体が痛くて、とっても寒くて目を開けたら、ボクは箱の中にいた。
寒い、寒いよ。暖かくなりたいよ。あのニンゲンはどこ?
こんな箱キライ。壊してお外に出てみる。
周りに沢山のニンゲンがいる。怖い、怖い、逃げようとした。
でも、身体が痛くて動けない。寒くて動けない。
『ネイティ、大丈夫か?怖がるな。俺等はお前に何もしない。』
ボクの前に大きなニンゲン。あのニンゲンが大切って言ってた雄。
何もしないってホント?怖い、イタイ、寒い、あのニンゲンに会いたい。
邪魔しないで、ここはキライ。ボクのキライなおウチと同じ匂いがする。
ここのニンゲンはキライ。イタイ事をしたニンゲンと同じ目をしてる。
沢山のニンゲンの中にあのニンゲンはいないの?どこにいるの?
『…あいつを探してるのか?ここにはいないんだ。
まだ、ちょっと会わせられないんだよ。すまないな。
あいつが元気になったら会わせてやるから、待っててくれ。』
大きな手がボクの頭に触ろうとした、ヤメテ!
あのニンゲンは元気じゃないの?ボクのせい?怒ったのかな?
ボクの事キライになったのかな?ボクはやっぱりいらないのかな?
悲しい、寂しい、涙が止まんない。
ゴメンナサイ、もう傷つけないから怒らないで。
ゴメンナサイ、もうチカラを使わないからキライにならないで。
ずっとずっと泣いてたら、大きな黒いポケモンがボクを抱っこした。
あのニンゲンのポケモンだから?すっごく暖かい。
〈哀れな子、泣き止みなさい。私がこれからお前をマスターの所に
連れて行ってあげましょう。その代わり、大人しくできますか?〉
できるよ。あのニンゲンに会えるなら、ボクはできる。
黒いポケモンはボクを抱っこしたまま、どこかに向かった。
真っ白な部屋の中、真っ白なものに包まれてあのニンゲンはいた。
沢山赤い水が出てた両方の手は、真っ白な物でグルグル巻きになってる。
ボクを見て笑った顔は眠ってる。
ねぇ、黒いポケモン。ボクはあのニンゲンの傍に行っちゃダメ?
もう傷つけない。イイ子にしてるから、傍にいさせて。
〈お前が傍にいっても、抱きしめる事も微笑む事もしないのですよ?
マスターはまだ戦闘不能状態のままです。それでもお前は行きたいのですか?〉
うん、ボクはこのニンゲンの傍にいたい。ずっといたいんだ。
ニンゲンの包まれている真っ白なものの上にボクは置かれた。
そのまま、ニンゲンの傍に行く。
ボクのキライなお薬の匂いがする。だけどほんのちょっぴりだけど
ニンゲンの匂いもする。ボクが真っ白なものの中に潜ると暖かかった。
身体だけじゃない、ニンゲンの匂いに包まれて心も暖かくなってきた。
後から、ママと同じ白い服を着たニンゲンの雄が入ってきた。
この雄は、ボクとニンゲンを離した雄だ。また離すの?イヤダ、ヤメテ。
でも、その雄は今度はボクを離さなかった。どうして?
ずっとニンゲンの傍にいるけど、ニンゲンは眠ったまま、起きなかった。
他のニンゲンが傍にきて、ゴハンをくれたけど、怖くて食べられなかった。
ボクのゴハンにはよく変なお薬が入ってたんだ。だからゴハンはキライ。
でも、お腹が凄く空いてきて身体にチカラが入らなくなってきた。
他のニンゲンが木の実も持ってきたけど、怖くて食べられない。
動くのも辛くなってきた頃にボクの傍に見た事のないポケモンが来て
変わった匂いのゴハンを持ってきた。
〈あの…アナタ、ゴハン食べてない。お腹が空きすぎると死んじゃう。
そんな事したら、お母さんが泣いちゃう。だからゴハン食べて?〉
〈そうそう、ご主人様の作られるゴハンは美味でございますよ?
坊ちゃんもきっとお気に召される事間違いございません。〉
不思議な匂いのゴハンを見たら、いつもとは違って食べたいって思った。
でも、変な薬入ってない?このゴハンはナニ?ボクは知らない。
お母さんってナニ?ご主人様ってナニ?あのニンゲンはマスターじゃないの?
〈幼子よ、我々は母上…このマスターのポケモンである。
これは母上が我々の為にと作った物。毒など入っておらぬ。
安心して食べるがよかろう。今はお主も英気を養うのだ。〉
このゴハンはあのニンゲンが作ったの?母上ってナニ?
ボクの知らない事がイッパイ。不思議なゴハン、でも大丈夫。
あのニンゲンが作ったゴハン。それならボクは食べられる。
ドキドキしながらゴハンを少し口に入れた。
固いのかなって思ったゴハンは簡単に割れた。
口の中に入れれば、ボクの好きな味がする。ゆっくりと飲み込むと
体の中から暖かくなる様な気がして、夢中でゴハンを食べた。
なんとか、あのニンゲンの作ったゴハンなら食べれるようになって
ボクはすっかり元気になった。ずっと寝たままのあのニンゲンも
やっと目を覚まして、ボクを見てとってもびっくりしてた。
でも、すぐに前に見た時と同じに笑ってくれて、抱っこしてくれた。
やっぱり暖かいな。身体もココロも暖かくって、気持ちがいい。
あのね、ボクはニンゲンがスキ。ずっと一緒にいたい。
だけど、ニンゲンにはボクの言葉がわからない。
ボクは頑張って、スキって気持ちと一緒にいたいって気持ちを
わかってもらえるように、ニンゲンの傍にずっといた。
ニンゲンのポケモン達は、最初はニンゲンを戦闘不能にしちゃった事
すっごく怒ってた。だけど、皆がボクを可哀想って言うんだ。
皆、ニンゲンに助けてもらったんだって言ってる。
だから、ボクの気持ちがわかるんだって。皆も寂しくて悲しかったって。
ボクも助けてもらえるのかな?助けて欲しいな。
ニンゲンが元気になると、沢山のニンゲンが来た。
ニンゲンがボクをギュッと抱っこする。その前を雄が2匹立っている。
雄たちは凄く怖い顔をして沢山のニンゲンを怒ってる。
ナニを言ってるの?ボクを頂戴ってナニ?危険ってナニ?
同じ事を繰り返すって?犠牲を増やすなって?ボクにはわかんない。
ボクはこのニンゲンと一緒にいたいだけ。でもダメなの?
イヤだよ、ボクはもう寒くなりたくない。イタクなりたくない!
怖くて泣き続けているボクをニンゲンはまだ白い物がとれない手で撫でた。
『あのね、ネイティ。あなたは自由になりたくない?
その為には、今覚えている技を全部忘れて違う技に変えなくちゃならない。
あなたはとっても強いけど、今の技は自分の命と引き換えに使う物なの。
あなたの命を縮めてしまった力をもう使って欲しくない。
私が絶対にあなたを守るから…傍に居て欲しいな。』
命を引き換えってよくわかんない。自由ってナニ?よくわかんない。
でも、傍に居て欲しいってホント?ずっといてもいいの?
ニンゲンがそっとボクの前にボールを出した。
ボクは知ってる。ママはこのボールを壊した。
ボクは知ってる。ボクはどのニンゲンの物にもなってない。
ボクは知ってる。このボールに入るとこのニンゲンの物になる。
ナニかをニンゲンがお話しようとしたけど、待ってなんてらんない。
急いでボールのボタンをクチバシでつついた。
赤い光がボクを包んで、ボールの中に吸い込まれた。
その中はボクを閉じ込めてた箱と違う。暖かくて、気持ちがいい。
でも、ボクは知ってる。もっと暖かくて、気持ちがいいものがある。
ボクは知ってる。もう寒くならない。
ボクはネイティって言うんだって、ニンゲンが言ってた。
ボクは知ってる。もう悲しくならない。
ニンゲンって呼び方はやめろって他のポケモンに言われた。
皆仲間なんだって、仲間ってわかんないけど皆ニンゲンと同じ優しい。
ボクは知ってる。もうイタイ事はされない。
一生懸命考えて、ボクはニンゲンの事をお母さんって呼ぶ事にした。
お母さんはママって事だって言うけど、ママとお母さんは違うよ。
ボクのママはボクを捨てたけどお母さんは違う。
ボクを守るって言った優しくて、暖かくて、大好きなニンゲン。
ボクは知ってる。ボクは普通のポケモン達と違う。
だからお母さんはボクの覚えていた技を全部忘れさせた。
サイコキネシス、テレキネシス、テレポート、ひかりのかべ
これがお母さんが教えてくれた技
ボクは知ってる。時々お母さんが泣いてる事。
どこか痛いのかな、苦しいのかなって心配してたら
大姉ちゃん…お母さんをマスターって呼ぶリザードンが違うんだって言った。
小姉ちゃん…お母さんをご主人様って呼ぶハピナスが辛そうにした。
大兄ちゃん…お母さんを母上って呼ぶルカリオも頷いた。
むーたん…お母さんをお母さんってよんでたムウマは一緒に泣いてた。
ボクは知った。お母さんは昔?を思い出して泣く。
お母さんを好きなんだって言う神様達が教えてくれた。
ボクは考えた。お母さんがずっと笑っていられるようになる方法。
ボクは考えた。ボクに出来る事はないのかな?
守られるだけじゃイヤダ。幸せじゃないお母さんはイヤダ。
ボクはネイティオに進化出来るんだってお母さんが言った。
ボクは知ってる。お母さんを守るには進化して強くなればいい。
でも、ボクはお母さんに抱っこされるのがスキ。
頭の上に乗って、いつでも傍にいたいから進化をやめた。
お母さんがちょっと悲しそうな顔して、ボクも悲しくなったけど。
ボクはこのままで傍にいたい。ずっと一緒にいたい。それがボクの願い。
───「アレ?ネイティ、寝てるのに笑ってるけど…。」
「なんでございましょうか…涙の跡もついております。」
お母さんのおトモダチの白兄ちゃんと黒兄ちゃんの声がする。
ボクはゆっくりと目を開けた。いつの間にか眠っちゃってたんだ。
「嘘っ?!ネイティ大丈夫?どこか痛いの?苦しいの?」
お母さんの頭の上からお膝の上に抱っこされる。
僕の前には心配そうな黒兄ちゃんと白兄ちゃんの同じ顔がある。
お母さんがずっと住んでたおウチを出て、ここにきて倒れた。
いくらボク達がお母さんを呼んでも、答えてくれなくって
ボクと仲間はすごく心配した。
その時にお母さんを助けてくれた二人のお兄ちゃん。
いきなりお母さんに近づくから、ボクはビックリして
ホントはやっちゃいけないってお母さんから言われていた
ニンゲンにボク達のチカラを使う事をしちゃったんだ。
身体の動きを止められてすごく辛そうにしてたのに
『 お願い!信じて!!』
『 お願いします!!信じて下さいまし!!!』
二人のコトバはお母さんがボクに言ったコトバと同じ。
二人の顔はお母さんがボクを最初に見ていた顔と同じ。
白兄ちゃんはボクのお母さんと同じ様にボクの為に泣いてくれた。
ボクとトモダチになってって言われてビックリしたんだ。
お母さんと同じ笑い方でボクを見る黒兄ちゃんの手が
すっごく気持ちが良くってビックリしたんだ。
心配そうにボクを見るお母さんと白兄ちゃんと黒兄ちゃんに
大丈夫だよって、返事をする代わりに歌ってから
白兄ちゃんの頭の上に止まって目を閉じる。
お母さんが安心した様に息をつくのがわかる。
黒兄ちゃんが優しくボクを撫でてくれる。
白兄ちゃんの頭の上に乗るのもスキ。
あれからずっとボクを守ってくれるお母さんがスキ。
黒兄ちゃんに撫でられると凄く気持ちが良くってスキ
ボクは知った。お母さんと一緒に楽しい事、嬉しい事、綺麗な事
ボクは知った。仲間達と一緒に楽しい事、嬉しい事、綺麗な事
ボクは知った。優しいニンゲン、トモダチになれるニンゲンがいる事
ボクはシアワセ。辛い事も痛い事も悲しい事もなくなったから。
ボクはシアワセ。大好きなお母さんがいつも傍にいるから。
ボクはシアワセ。仲間が出来てひとりぽっちじゃなくなったから。
ボクはシアワセ。ニンゲンを嫌いなままでなくなったから。
ずっとずっとシアワセだといいな。
ずっとずっとシアワセになりたいな。