一章・孤軍奮闘編 番外
悪戯心としっぺ返し 前編
喫煙所スペースで、もう何本目かわからないタバコに火をつける。
流石にブッ倒れた後のタバコは効くかもしれない。
軽い目眩に壁にもたれかかりながらこれからどうしようか考える。
正直言えば、考えたってどうしようもないんだけど。ホントどうしよ?
「おや、はまだ帰ってなかったのでございますか?」
ドアが開いてここのトップの人…ノボリさんが入ってきた。
あのド派手な制服?から私服というか通勤服に着替えたこの人は
確かに超イケメンでハイスペックな雄だよねー。
これは親衛隊とかできるの、ちょっとわかる気がする。
「今お帰りですか?お疲れ様です。ちょっと考え事してました。」
入口からちょっと奥に入って場所を提供する。
胸ポケットからタバコを出して火をつける姿も様になってるね。
イケメンは何をやってもイケメンだよねー。
「考え事とは、例の大掃除でございますか?
何かお困りの事がございましたら、なんでも言ってくださいまし。」
「あー、そっちの話ではないんですがちょっと…いえかなり困ってます。」
一気に煙を肺に吸い込めば、ちょっとクラっときてふらつく。
やばい、また怒られるからごまかさなくちゃ!
や、からよく怒られてるからそれなりに耐性はあるけど
ノボリさん、マジ怖かったです!のマジギレと同じ位でした!
「私で何かお力になる事は可能でございますか?
一人で困っているよりも、誰かに話してみると案外解決するものですよ?
後、一気に吸い込んではまためまいを起こしますのでおやめくださいまし。」
あら、バレちゃってた?何気に人をよく見てるのは流石上に立つ人かな。
なんたって、だけじゃなく、まであっという間に仲良くなったし
確かに凄く良い人だってのはわかるけど、それ以上に純粋ぽいよね。
「ノボリー、迎えに来た。あれ?まだいたの?って、とは?」
「……は私が着替えてる間に先に私の家に行って待ってるって
んで、は冷蔵庫の中身でヤバそうなのがあるからそれ取ってから
私の家に行くって言ってました。」
あ、二人がおんなじ顔でこっち見てる。
すぐに、今の状態に気がついたのはクダリさんの方だった。
口が微妙な形になってるし、肩が凄く震えてますよ?
「クダリさん、可笑しかったら笑った方が良いと思いますよ。
私にしたら、マジで笑えないんですけどね。」
ノボリさんが不思議そうにクダリさんを見つめているって事は
まだ気がついてないんだ。まぁ、普通なら有り得ないから仕方ないよね。
「あの…ねっ、聞いてもいい?は自分のっ…家の場所知ってるの?」
半分以上笑いながら聞いてきたクダリさんの言葉にノボリさんも気がついたね
顔を背けているけど、やっぱり肩がプルプル震えてますよ?
「いーえっ、全く知りませんよ?だって今日こっちに来たばかりですから!」
「あはははは!何それ!!置いてきぼりくらったの?」
「クダリっ…そ、その様に笑っては…失…礼でございますよっ!クッ!!」
とうとう我慢できなくなったみたいで二人共爆笑してるし。
それにしても大口開けて笑っててもイケメンは崩れないってか畜生め!
「もうね、このままバックれてやろうかと思ってた所なんですよ。
二人共すっごく当たり前みたいに先行くって言うもんだから、
こっちも、はいよーって送り出したのは良いけど、先に道を教えておけと。」
「フフッ、失礼しました。ですが、達とでしたらすぐに連絡が
つきますので、今から迎えに来ていただきましょうか。」
ノボリさんがライブキャスターの画面を操作しようとした時に
その手をクダリさんが止めた。ちょっと待って下さい、何するんですか。
「ねぇ、いっその事ホントにバックれちゃわない?場所はボクん家。
あのね、の家もボク達の家もおんなじマンション。だから、ね?」
うわー、上司とご近所とか普通だったらマジ勘弁!と言いたいけど
こんなイケメンなら毎日目の保養になるから、いいかもしんない。
「…クダリさん、バレたらとのダブルでお説教と言う
すんごいペナルティ喰らいますけど、それでも…やっちゃう?」
そうだよね、その位やらなきゃこの怒りは解消しないかも。
ただ、後で絶対怒られるのはわかってるんだから、道連れを作ろうか。
「オッケー、その代わり怒られるときはも一緒!」
「あなた達は…でも、まぁ面白そうではございますねぇ。」
何気に真面目そうに見えるノボリさんがそう言うとは思わなかった!
こうなったら一蓮托生で巻き込んでやろうか。
怒られる対象が増えたほうが、ダメージは分散されるからね!
ノボリさんのタバコを持っていない方の手をがっちり両手で握れば
ビックリした顔でこっちを見てるし。
「ノボリさん、みんなで怒られれば怖くない!…はずですよ?」
「そこで疑問形でございますか!
えぇ、共犯者も同罪でしたらいっそ、乗った者勝ちと言うものでしょう。」
「んじゃ、コッソリとボク達の家に出発進行!」
私が親指を上に立て笑えば、二人共同じ様にしてニヤリと笑う。
うわー、おんなじ顔するとやっぱ双子!よく似てるわぁ。
*********
ライブキャスターが鳴り、クダリが通話ボタンを押せば
離れていても聞こえてくるのはの声。やはり慌てておられる様ですね。
「、と?慌ててるっぽいけど、どーしたの?
え??? ボク達、今家に帰って来たばかりだから…。
うん、わかった。頑張って探してね。」
いつもと変わらない顔でクダリが応答しております。
こういうところは流石でございますね。私でしたらすぐにバレてしまいます。
リビングを見れば、私達のポケモンとのポケモンが仲良く遊んでます。
私のヒトモシとシャンデラとのムウマは特に気があったのか
先程から何やら楽しそうに話をして笑っております。
バルコニーへタバコとサイコソーダを持って出てみれば
が外をぼんやりと眺めておりました。
「今、達から連絡がありましたよ?」
サイコソーダを渡して、私もタバコに火をつけます。クダリは吸わないので
いつも一人でしたが、二人でと言うのも良いものですね。
「うん、聞こえてた。それにしてもクダリさんすごいですね。
私の事を知ってるとも知らないとも言わないで、普通に対応してましたよね?」
笑いながらサイコソーダを飲んではまたタバコに火をつけます。
吐き出した紫煙がライモンシティの夜空にフワリと広がっていきます。
「うわ、タバコくさい! 二人共すっごく慌ててた。
でもさ、ボクももそんなウッカリさんだって思わなかった。」
「そうでございますね。どちらも冷静沈着、質実剛健という感じでしょうか
ですから、この様な事をするとは想像もつきませんでした。」
私とクダリが手すりにもたれ掛かりながら、思ったことを口にすれば
はタバコを咥えながら指を振ります。それは行儀が悪いですよ?
「お二人共、まだ付き合い浅いからわかってないんですよ。
あの二人は弱肉強食、喧嘩上等、唯我独尊で突っ走りますからね。
いつか友達になった事を後悔するかもしれませんよ?」
「それは絶対にありません。確かに付き合いは浅いでしょうが
私にしてみればこの様に深く付き合える方はいなかったのです。
むしろ私は突っ走るお二人の横でいっしょに走ってみたいですね。」
「うん、一緒だったらきっとすっごく楽しいと思う!
その時はもみちづれにしちゃうよ?」
一瞬で想像したのでしょうか、怖い怖いといって自分を抱きしめております。
それにしても、すっかり元気になられた様で私安心いたしました。
「それにしても、お二人はいつ気がつかれるでしょうかねぇ。」
「あー、もしこのまま気がつかれないで諦められたらどうしよ?
有り得る、となら勝手にどっか行った方が悪い!とか言って
サクッと諦めて放置プレイされる可能性は十分にある。」
が手すりに突っ伏して唸っております。
まさかそんな事を、と言えば するんですよと即答されました。
妹分だと言っておられた割に放任主義でございますね。
「その時はここに泊まっていけばよろしいでしょう。
それとも、ある程度しましたらネタばらしで連絡しましょうか?」
バルコニーで泊まる?とかそんな真顔で聞かないでくださいまし。
その様な非人道的な事を私達がするわけがないでしょう。
「うーん、どっちにしろ怒られるのは確定だけど
どっちの方がマシかなぁ…一番いいのは明日の朝出社した時に
夜遅くに探しきたお二人に見つけてもらって、そのまま泊めてもらった…
この案だと、私が有利で逆に二人を怒れるという特典付きなんですけどね。」
「二人共朝まで探してたらそうは行かないと思う。
はこっちに来て結構経ってるから探す場所とかわかってる。
やっぱり保護してるよって連絡するのがいいかな?
そしたら、ボク達は怒られない!」
クダリの提案に成程と納得してみれば、が言いだしっぺが
裏切るとか無しでしょう!と怒って詰め寄っております。
「大丈夫ですよ、ここまできたら最後までご一緒しますから。
と言いますか、今日あれだけ怒られてるから耐性できてるでしょう?」
「一緒に烈火の如く怒ってた人が言うセリフですか?
ダブルで鬼の形相で罵詈雑言食らった時には、今日が私の命日だと
覚悟しましたよ?その位怖かったんですから!」
自業自得でございます。と返せば言葉に詰まっておりますね。
えぇ、あの時はマジギレさせていただきましたので。
「あー、ノボリと仲良くケンカしている所悪いけど、
最悪のパターンがあるの忘れてる。」
「えー、これ以上最悪とか有り得ないんですけどー ってどんな?」
私とがクダリの方を見てみればなにやら顔色が悪いですね。
すこし夜風に当たりすぎたでしょうか?
「ボク達が匿ってるのが見つかってバレちゃう。」
無言で下を指差したので私とがバルコニーから顔を出して下を覗くと
そこにはバックに紅蓮の炎でも背負ってる様なとがおりました。
二人は私達に向かって、待てとぶっ潰すというジェスチャーをしてから
エントランスホールへ入っていきました。…大変危険でございます!!
「ぎゃー!最悪のパターンがキター!!!ちょっ、クダリさんなに一人で
逃げようとかしてるんですか!影踏みしてでも逃しませんからね!!」
「ボクそろそろ眠くなってきたから自分の部屋戻るだけ。
ここノボリの家、ボクは関係ないって事にしたい。怖い、怖すぎる!!」
二人共、今更慌てても仕方が無いのでございますよ?
ここはすっぱり諦めて潔く怒られるのが一番いい様な気がいたします。
私はタバコに火を点けて深く一息吸いました。あぁ、おいしいですねぇ。
「ノボリさん、現実逃避ですか?まぁ、もう好きにして!って感じなので
私にも一本わけてくださいよ。」
胸ポケットからタバコを取り出しに渡して火をつければ
ゆっくりと一息吸い込んで、おいしいですねと言われました。
えぇ、これが最後の一本にならないようにお互い祈りましょうか。
「二人共悟りきったとか…もう良いけどねっ!
ボクも仲間にいれて欲しいけど、むせるからパス!…あ…」
ドアフォンがなり、控え目なノックの音が聞こえてきます。
この様子ですとそれ程怒ってはいらっしゃらないのでしょうか?
「「…さっさと開けねぇと、壁ごとドアをブチ抜いても良いんだぞ…」」
…前言撤回でございます。既に逆鱗の準備が出来上がっらっしゃる様です。
私の背中でシャツを掴んでとクダリが怖い…とか言っておりますが
乗った私達は全員同罪でございますよ?
さぁ、腹を括ってドアを開けて全てを受け入れるといたしましょうか。