-課長予定の男の印象 後編-

序章 番外編

課長予定の男の印象 後編




インカム越しにボス達が食事から戻ってきた事が伝えられた。

俺は予め用意しておいた様の作業服や必要な道具を持って

ボス達の執務室へ再度立ち寄った。

ノックをして中に入ると3人はコーヒーを飲みながら食事の感想なんかを

談笑していたらしい。

俺が様に修繕用の材料が既に届いてることを伝えて作業服を渡した。

着替えたいと言う彼を黒ボスが自分たち用の仮眠室へ案内する。

へぇ、本当に仲良くなったんだなぁ。あの黒ボスの口調がちょっと砕けてる。

隣に立っている白ボスに目を向ければいつも以上のスマイルだった。



「ボス達、すっかり様と仲良くなったみたいですね?」



「うん!ボク達ご飯の後でのライブキャスター買うの付き合ったりした。

それからね、友達になった!」



どこかくすぐったそうにクスクスと笑いながらコーヒーを飲んでいる

そんな白ボスを見てると、こっちまで釣られて笑顔になるなぁ。

そうしている内に、着替え終わった様が戻ってきて、俺はちょっと驚いた。

さっきまでの人懐っこさ全開の雰囲気は多少残ってはいるものの

顔つきが全く違う。これは俺がよく知っているものと同じだ。

道具類を腰袋に入れてる間に色々と説明をしていくと。

顔つきが更に変化していく。そう、これは『職人の顔』だ。

成程、これはこれからの仕事ぶりを見るのが楽しみだね。

説明が終わった後で、様は白ボスと笑いながらハイタッチをして

ボス達の部屋を俺と一緒に後にした。
 


「随分ボス達と親しくなられたんですね。」



俺がそう言うと、様の顔が着替える前のものに変わって笑顔になった。



「えぇ、友達になって下さいって言われたよ。っと、どうもこの服装をしてると

堅苦しい口調が苦手だなぁ…普通に話していいですか?勿論、俺に対しても

敬語はいりません。見た所同じ職人の様ですし…ね?」



あぁ、やっぱりそうなのかと俺は妙に納得した。

笑って頷くを見て俺も口調を変えることにした。正直俺もしんどかったんだ。



「友達か…ボス達には部下は沢山いるけど、友達って聞いたことがないからなぁ

あの人達、若くしてあんなポストに収まっちゃたから結構人間関係で

しなくていい苦労をしてきたからね。昔から彼らを見てきた俺からも

仲良くしてやってくれると嬉しいよ。」



「あぁ、やっぱり? でも、根っこの部分は擦れてないっつーか、

凄く人が良いよなぁ…俺、ああいう連中結構好きだな。

どっちも人付き合い自体が苦手っぽそうだけどな。こんな立場なら仕方ないさ。」



おや、あの短時間でそこまで見ていたなんてちょっと驚いた。



は人あたりが凄くいいよね。そして上の立場とかもわかってるっぽいから

もしかして、以前はそう言う役職についてたのかい?」



「あぁ、自分で独立して人を使ってやってたりもしたからな。

あの二人程じゃないが結構揉まれてきた…って、ちょっと待ってくれ。」



社員食堂用の厨房の場所まで来たは急に立ち止まって中を覗きだした。

そして、ある場所…そこはなんとなく壁が変色して恐らくは油かな?の所で

ライブキャスターでその部分を撮影した。



「ここの責任者って、今いるかな?ちょっと話がしたい。」



「責任者は私だが、何か用かい?」



どうしたんだろうと不思議に思ったけど、それはここの責任者もそう思ったのか

自分から出てきた。



「ちょっとお聞きしたいんですが、この変色って油とかの汚れですか?

それとも、段々と気がついたら色が変わってきたとかでは?」



「よくわかったね、後者の方だよ。でもそれがどうかしたのかい?」



険しい顔つきのの口からとんでもない言葉が飛び出して

俺も、厨房責任者も顔色が変わった。中を見たいと言ったから許可をすれば

の予想は大当たりだったらしい。

すぐにボス達の所に行ってこの件を掛け合いたいと言った責任者に

先にやる事があるから、終わったら迎えに来る事を告げてその場を後にする。



、よくあんな場所がわかったね。」



「あぁ、普通なら有り得ないんだけどなぁ…こっちの消防法って甘いのか?

シンオウだったら絶対通らない代物だよ、あれは。」



苦虫を噛み潰したような顔をしたの足がまた止まった。

おいおい、今度もまたなにか見つけたのかい?そこはボイラー室だった。



…中に入ってみるかい?」



「あぁ、ちょっと確認を…いや、マジで勘弁してくれよ。」



俺達が中に入るとボイラー管理者とその面々が丁度休憩中だったのか揃っていた。



「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。何か用があるなら俺が聞くが。」



管理者が眉をひそめてこっちに向かってきた。

ここの面々は仕事が凄く出来るんだが、取っ付きにくくてちょっと苦手だなぁ。

そんな事を思っていたら、またの口から爆弾発言が飛び出す。

管理者だけじゃなく、他の面々も顔色が変わった。

に詰め寄って解決法とかを聞いてたけど、ボスに直談判しに行くって

これまた、厨房と同じような事になったから

後で寄るから厨房で責任者と一緒に待っててもらうように告げて後にした。



「なんだか、結構めんどくさい事になってる気がするのは俺だけかなぁ?」



しかめっ面がとれないの顔を覗き込みながら俺が聞くと彼は首を振る



「いや、俺もそう思ってるから。しかしここの設計者は現場ってものを

全く把握してねー奴だったんだろうな。作業工程とかそういう事を考えたら

まず有り得ないんだが…。イッシュの建築ってこんなもんなのか?」



「俺の担当は車両だからねぇ、其の辺はあまり詳しくないよ。

でも、現場をしらない人間が設計とかする事って結構あるよなぁ…

そしてそのしわ寄せは必ずこっちにくる。」



俺の言葉にうんうんと大きくは頷いた。



「全くだよ。少しは現場出て勉強しろってんだ。例の水漏れもな、

原因はそこなんだよ。配管が設計通りだと細すぎて絶対問題起こすからって

恐らく担当した設備会社で変更したように見えたが…詰めが甘すぎてなぁ…」



中途半端な仕事をする奴はこれだから…といってため息をついていた。

うんうん、の気持ちよくわかるよ。ホント困るよなぁ。

やっとD‐3ポイントまで来ると、そこに修繕用の材料が置いてあった。

はそれぞれの材料のチェックを済ませてから天井の中に入っていった。

ゴトン、ガタンと音がしてはしばらく止まりを繰り返し、

今度は最初に俺がみた開閉口の方に近づいていたので脚立と立ち入り禁止の

ポールをそっちに移動して待機する。

いよいよ音が近くなってきたのを見計らって、開閉口を開ける。

あー、すんません。助かるーと言う間延びした声にちょっと笑ってしまった。


ついさっきまでは、お手並み拝見とか言っていたけどもうわかった。

は優秀な職人だ。彼の目はあっという間に不具合を見つけて

そしてその対処法まですぐに割り出す。

これは、俺達車両整備班の連中と同じだ。うん、良いね。気に入った。



「よし、水漏れしていた場所だけじゃなく、今後問題が起きそうな場所にも

余った材料で補強しといたんで、ここでの水漏れの心配はもう無いっすよ。」



やりきった!と満足げな顔をしてが戻ってきた。

俺が礼を言うと、職人として当たり前の事をしただけだと帰ってきた。

流石に独立して、頭をはってやってきただけはあるね。


ボス達への報告に戻る前に厨房に寄ると、既にボイラー管理者が図面を持って

待っていた。ちょっと休憩しなさいと厨房責任者がくれたコーヒーを飲みながら

俺達はに色々質問していた。



「へぇ、は旅をしてるのかい?私も昔はそうだった。旅はいいよね。」



「なに?今日イッシュに着いたばかりだぁ?うはは!それでこんな事して

お前さんも人が良すぎるんじゃねぇか?ま、俺はそう言うの嫌いじゃないがな。」



厨房責任者とボイラー管理者が揃って笑顔でに話しかけた。

これって、ある意味異様な光景だよなぁ。まったく職種の違う上の連中が

揃ってコーヒーブレイクを楽しむなんてさ。まぁ、楽しいけどね。



「えぇ、しばらくはここで落ち着こうかと思ってるんだが。

バトル施設が多いからライモンシティを拠点にしようかって考えてるっす。」



はバトルも好きなんだ。それならライモンシティはお勧めだよ。

何処に住むとか色々と当てはあるのかい?」



俺がなんの気なしに聞いてみたら。がのほほんとした口調で答える。



「いやぁ、今日ここに着いたばっかりだし泊まる所すら決まってないですよ。

どうせなら、何か仕事しながらここを拠点にあちこち行ってみようかと。」



この言葉に厨房責任者とボイラー管理者の眼が光ったのを俺は見た。

多分俺も同じだと思う。ここギアステじゃ優秀な人材はいつでも大歓迎だ。

休憩を終わらせて、ボス達の執務室へ全員で向かった。

はボイラー管理者から受け取った図面を険しい顔で眺めながら歩く。

その後ろで俺達3人はお互いの顔をみて頷きあった。

俺達の目標はただひとつ、彼をギアステに引っ張る事。

公共施設でもあるから色々問題はあるが、そこはボス達になんとかしてもらおう。

ともかく、こんな近年稀にみる職人気質で優秀な人材を他所にやるなんて

廃人施設の名が廃る。ここはバトルだけじゃなく職人の廃人施設でもあるんだ。


サブウェイマスター執務室と書かれたドアの前に立った俺達だが

ノックもそこそこにボイラー責任者が派手な音を立ててドアを開ける。

初手はたいあたりか…うん、基本だね。

修繕箇所の報告も放り投げて、俺達は口々にをギアステに就職させろと

ボス達に嘆願した。黒ボスはあっけにとられた様子だったけど、

白ボスはそんな様子をみてちょっと機嫌が悪くなったようだ。

いつものスマイルが微妙に怖いんでやめて下さい、白ボス。


から、修繕の報告と原因と、新しく見つけた問題箇所の説明を聞いて

両ボスが顔色を変えた。色々と一通り説明が終わった後でボス達が目配せし

そして、次にオレ達に白ボスが目配せをする。

どうやら、ボス達も考えてた事は一緒らしい。それなら大丈夫だろう。

3人で一礼してから執務室を後にする。

それぞれ戻ろうとしてしばらく歩いていると向こう側からクラウドがきた。



「なんや、珍しい組み合わせでなんかあったんか?」



それぞれの顔を見て不思議そうな顔をしてるクラウドに向かって。

事の経緯を説明すると堪えきれないかのように笑い出した。



「うはははは!違う職場の上が雁首揃えて嘆願しよるとか前代未聞やないか?

そらボス達も驚くってもんや、の奴、やりよったな!」



他の2人は先に仕事に向かい、俺とクラウドは通路の端に移動して

話を続けていた。本当にクラウドの言うとおり前代未聞だよ。



「でも、も職人やったか。話だけ聞いとったらそれもえらく優秀やんけ?

それやったら、もうボス達が逃がす訳はないわな。」



「そうだねぇ、両ボス…特に白ボスの交渉術はマスターボール並みだからね。

どっちみち、がここで働く事になったら結構面白くなりそうだ。」



俺の言葉にクラウドも楽しそうに頷いた。



「せやな、きっとボス達にとっても、良い刺激になるんと違うか?

それに、結構修繕とか改善要望の書類があったはずやから、これは

ギアステにとっても悪い話やないやろうしな。」



そう言うとクラウドは片手を上げて歩き出した。俺もそれに応えるように

手を上げて自分の職場へと歩き出す。

だったら良くも悪くもこの濃い職員達相手に上手く立ち回れるだろう。

むしろ、色々と振り回すかもしれないなぁ。

そんな事を想像して、俺は思わずクスッと笑ってしまった。


俺達は良い結果の報告しか聞くつもりはないですからね。

だからボス達、ゲットに向けて全速前進して下さいね。



  後書き
オリキャラ視点の番外編でございました。誰得なんだ?とセルフツッコミ搭載
そしてクラウドさんのコガネ弁は偽物臭がプンプンでございます…(滝汗)
ギアステーションはトレーナーの廃人施設だけじゃなくて
技術系職員さん達の廃人施設でもあれば面白いなぁと思って書いてます。
仕事が好きなサブマスの周囲には、きっと同じような人が集まるんじゃないかな?
ここまで、読んでいただきありがとうございました!