2015 Valentine Day------物語をはじめよう (エメット編 )

2015 Valentine Day

物語をはじめよう (エメット編 )



いざエメットさんの家に!と思って玄関を開ける前に振り返ってみると
そこには脱ぎ散らかした服とかラッピングペーパーの切れ端が散らかってる
流石にこのままじゃ酷すぎるよね…玉砕して家に帰ってきたらこの状況とか
惨めな気持ちがもっと惨めになっちゃいそうで、もう一度部屋に戻って
散らかったものを片付け始めてたら、不意にインターフォンが鳴った。

リビングのドアフォンのモニーター画面のスイッチをオンにしたら
そこにはこれから会いに行こうとしてるエメットさんが映っていた。


ー、エメットダヨ!ちょっと開けてもらっても良いカナ?』


部屋の片付けをしてて良かった!突然の訪問にすごくビックリしたけど
待たせちゃ悪いからすぐに玄関を開けると目の前が赤くなった。


「Hello!急にゴメンネ!ソノ前にコレ、受け取ってヨ。」


赤の正体は今にも咲き始めそうな蕾の真っ赤なバラの大きな花束だった。
相変わらず女性の扱いに慣れてる。花束にはトゲなんて無いはずなのに
私の胸に何かがチクリと刺さった様な気がした。


「ありがとうございます。本当にビックリしましたけど、どうしたんですか?」

をDinnerに誘おうと思って来たんだケド…ソノ格好出かける所ダッタ?」


今迄見せた事がない服装と化粧の私を見て、エメットさんの表情が曇る。
これは貴方に会いに行く為に精一杯のお洒落をしたんですとは言えないから


「上手にお菓子ができたんで、丁度エメットさんに渡そうと思ったんです。
せっかくの休みだから、たまにはってお洒落をしてみたんですよ。」

「…Hmm…そうナノ?先約がアル訳じゃないノ?」

「ありませんよ、だから今迄キッチンに篭ってたんですから。」


バトルの時みたいな目を私にむけてるんだけど、どうしてなんだろう?
受け取った花束を取り敢えずって事でそのまま花瓶に入れてから
キッチン(そこだけはまだ片付けてなかった!)の惨状を指差した。
使い終わった後の調理道具が山積みされた場所を見て
エメットさんは一瞬大きく目を見開いてから声を立てて笑った。


「アハハ!ネェ、それじゃボクに付き合ってヨ!」

「……本当に私で良いんですか?」


だって今日はバレンタインデー、ユノーヴァじゃこの日は恋人同士の日で
男の人は女の人にプレゼントや食事を一緒にするんだって聞いてるから。
そんな日に私を誘ってくれるのはどうしてなんですか?
こんな事、エメットさんは慣れてるかもしれないけど私は違うんですよ?
勘違いしちゃうって思わないんですか?


ダカラ誘ってるんダケド?」

「はいはい…それじゃお付き合いさせていただきます。」

「Thanks Kitten!ソレじゃ行こうカ!」


ごく自然な振る舞いでエスコートするエメットさんを見て、また胸が痛くなる。
でも仕方がないんだよね、わかっていて好きになったのは私だ。
私の手を取って大通りまで歩くと、エメットさんはタクシーを止めた。
一緒に乗って着いた場所は、凄く有名なイタリアンレストランだった。


「エメットさん、私こんな凄い所に入った事無いんですけど…」

「No Problem!心配しないデ?普通に食事をすれば大丈夫ダヨ!」


ウェイターさんから受け取って、メニューを見たんだけど凄く高そう…。
どれが良いかわからないから、メインディッシュ…セコンド・ピアットを魚に
デザートは食べたいと伝えて後はエメットさんに任せる事にした。


『antipasto(前菜)はマリネで、Primo piatto(1皿目)はこのリゾットで
Secondo piatto(2皿目)は任せるけど彼女にはpesce(魚料理)にして欲しい
Contrno(付け合せ)は…今日はやめておくよ。ワインは彼女には白を
ボクは赤と白を料理に合わせて出してよ。Formaggi(チーズ)はいらない
Dolce(デザート)は後からオーダーするから頃合を見て来てくれるかな?』


ウェイターさんに、流れるようにオーダーするエメットさんは手馴れている
そうだよね、サブウェイマスターなんて地位のある人から当然だよね。
ウェイターさんが下がってから少し話していると料理が次々に運ばれてきた。
そのどれもがとっても美味しくて量もかなりあったんだけど
実は前の日から緊張しててまともに食事をしてなかったから食べちゃった。

結局食後のデザートもオーダーしてもらう事になっちゃった。
エメットさんが美味しそうに食べてくれて嬉しいって言ってたせいもあるかも?


ッテ美味しそうに食べるダケじゃなくッテ、綺麗に食べるヨネ?
テーブルマナーを知らないのカナと思ったケド心配シテ損したヨ!」

「一応一般的なマナー位は知ってます。でもこんな高級な所初めてだったけど
大丈夫でした?何か無作法な事してませんでしたか?」

「Nothing!心配いらないヨ。ネェ…最初に話しテタお菓子ッテ何?」


Digestivo…食後酒のレモンチェッロを飲みながらいきなりエメットさんが切り出した
いけない…レストランの雰囲気に飲み込まれちゃってすっかり忘れてた。
でも、今なら食事のお礼として渡せばチョコだけは受け取ってもらえるよね?
エスプレッソにいつも飲むコーヒーより砂糖を多めに入れてから一口飲む。


「それは食後にお渡ししますね。結構頑張って作ったんですけど
エメットさんの口に合うかどうかの保証はできませんよ?」

「ボクはの作った物ナラ、全部美味しく食べる事が出来るヨ?」

「…ありがとうございます。でも本当に私と一緒で良かったんですか?」

「どうシテ、ソンな事を聞くノ?」


だってわかってしまった…今日はバレンタインデー、周囲を見ればカップルばかり
どうやらこのレストランでもバレンタインの為に特別ディナーを出してるみたい
そしてこれだけ有名なお店なんだから、事前に予約をしてなきゃ無理のはず…
つまり、エメットさんは最初からこのお店を予約してあったって事だ。


「他地方出身でもこっちでのバレンタインデーの習慣位は知ってます。
エメットさんは本当は誰かと来るためにここを予約してたんじゃないんですか?」

「…キミと来たかったカラ……予約をしてたッテ思わないノ?」

「まさか、そんな事ありえないでしょう?」

「どうシテ?」


エメットさんの周りには、いつも綺麗な女の人が必ずそばにいる。
その女の人達の顔が見かける度に違うのだけが救いだった。
自分の気持ちには嘘はつけないけど、そういう女性達の中にも入りたくない…
だから今迄ずっとエメットさんの友人ってポジションに私はいたんだ。


、そこで黙っちゃうノハFairじゃナイ。
キミが何故そんな風に考えたノカ、今何を考えているノカ、ボクに教えてヨ。」

「ごめんなさい、そうですね…自分の事をエメットさんの友人だと思ってたけど
実は違ったんだなぁ…って、思ってしまったんです。」

「Well…ソレで?キミはボクのFriendじゃなきゃナニ?」

「……遊び相手…?」

「笑えナイ冗談ダネ!」

「冗談なんかじゃないです、私はそう思ったんですけど…」

「尚更笑えナイネ!……ネェ、はマダ時間あるヨネ?
コノ事はモット二人で話す必要がありそうダカラ、ボクの家に来てヨ。
キミのお菓子もソノ時に渡して欲しい、今は受け取りたくナイ。」


エメットさんは席を立ってから私も立たせて、腕をつかんで外に出ると
そのままタクシーでエメットさんの家まで向かった。


「チョット、散らかってるケド入ってヨ。」

「エメットさん、私やっぱり…」

「No!今ココでキミの話は聞きたくナイ。中に入ってカラ聞かせてヨ。」


そのまま背中を押される様に中に通される。
初めて入ったエメットさんの部屋は散らかってるという割には綺麗に見えた。


、紅茶飲む?」


キッチンに立ったエメットさんに聞かれて、いらないと言ってソファーに座る。
しばらくして、エメットさんは自分の分の紅茶と、私にってココアを入れて
戻ってくると、真正面に座って私を黙って見つめていた。
どうしよう、凄く怒ってる?その目がいつもみたいに笑ってない。
口元も真一文字に結ばれてて、こんな顔のエメットさんなんて初めて見た。


「Ahー…ボクから話をしようカナ?がユノーヴァの習慣を知ってたノハ
チョット計算外ダッタ。デモ、どうシテ自分を遊び相手だッテ思ったノ?
モット別な立ち位置にいるッテ思わなかったノ?」

「いつものエメットさんを見てるから、思えるような事が私にはありません。」

「…ボクの女性関係をキミは知ってるカラ?」


その通りだから黙って頷けば、エメットさんはガックリと肩を下げて俯いた
遊び相手にしようと思った私が先に気づいてしまったから?


「Oh……コレは完全にボクが悪いヨネ…、ボクを信用できなくテモ当然。
ダケド、信じて欲しい…ボクはキミを彼女達と同じだトハ思ってナイ!」


その表情は凄く必死で、普段のエメットさんからは想像もつかなかった。
ここで信じますって言えば可愛いんだろうけど、私はそんな女の子じゃない
今だって、エメットさんの恋人じゃないのに今迄の女性達に嫉妬してる。
こんな醜い感情を見せたくない、それが私に出来る精一杯の強がりだから…


「エメットさん、私は友達のままで良いです。
だからお願い、私を貴方の遊び相手と同じにしないで下さい。」

「友達ジャ嫌なんだヨ!が好き、ボクの恋人になって欲しいんダ!」

「その言葉、最初に聞いてたら凄く嬉しかったでしょうね…
エメットさん、お話していたお菓子…今お渡しします。そしてもう帰ります。」

、せめて家マデ送らせテ?」

「…私にも考える時間を下さい。今日はちょっと冷静になれそうにありません。
家に帰って、エメットさんの事と自分の気持ちをゆっくり考えたいんです。」

「……OK.わかったヨ…タクシー捕まえるネ。」


二人でそのまま外に出て探せば、タクシーはすぐに捕まった。
車に乗る前に私はエメットさんに向き直る。


?」

「エメットさん、私がユノーヴァのバレンタインの習慣を知ってる様に
貴方にも私の地方でのバレンタインの習慣を知ってほしいです。
さっきあげたお菓子がどんな意味を持つのか…キチンと受け止めて欲しいです。」


それだけ言って、ドアを閉めてタクシーを走らせた。
視界がぼやけて街のあかりがゆらゆら揺らめいて綺麗だな…でもまだ泣くもんか。

家に付いてから、着替えもしないでソファーに体を投げ出した。
やっぱり先に片付けておいて正解だったな…あの状況で帰ってきたら
今よりももっと惨めな気持ちになってたと思う。
エメットさんに好きだって言ってもらえて嬉しかったのに、素直に喜べないよ…

そんな自分に嫌気がさして、一層惨めな気持ちになってきた時に
バッグに入れっぱなしだったライブキャスターから着信音が聞こえる。
誰からかと思えばエメットさんで、出ようかしばらく迷ったけど結局出る。


、家に着いタ?今、キミの地方のValentine Day の習慣見たヨ…
ゴメン、本当にゴメン!キミはボクと同じ気持ちだったのに、ボクは…』

「エメットさん、あやまらないで。良いんです…」

『良くないヨ!ネェ、ボクにChance を頂戴?キミがボクを信じてくれる様
これカラのボクを見てカラ決めて欲しイ…お願い、ボクを嫌わないデ!』

「…私は今もエメットさんが好きですよ?」


ライブキャスター越しに見るエメットさんの顔は凄く真剣で
必死になって私に謝ってる。男の人がこうやって頭を下げるって大変な事


…有難う!キミに相応しい男になるカラ待ってて欲しい。
今日は食事に付き合ってくれて有難う…大好きダヨ…。』

「こちらこそありがとうございました。…おやすみなさい、エメットさん。」


ライブキャスターを切った時にはもう泣きたいって気持ちはなくなってた。
シャワーを浴びて今日はもう寝よう…そう思ってバスルームに向かえば
途中に花瓶に乱暴に入れられた花束…エメットさんがくれた花束だ。
花に罪はないからちゃんと飾ろうとラッピングを外したらカードが足元に落ちた。


「これ…っ…」

拾い上げてカードを読めば


『 I hope you know how much you mean to me. 』
(キミがボクにとって、どんなに大切な人か知ってくれます様に。)


エメットさんが好きな自分の気持ちに嘘は付きたくない。
待って欲しいと言われたけど、私の答えなんてとっくに出てるんですよ?