2015 Valentine Day
物語をはじめよう (クダリ編 )
クダリさんの家に向かう途中でもずっと胸がうるさいぐらいドキドキしてる。
通り過ぎる時にショーウィンドウに映る自分の姿をみて
おかしな所が無いか何度もチェックをしてからやっとついた玄関前
震える指でインターフォンを押そうとしたその時に
「あれ、?」
「……っ!!」
いきなり声をかけられて文字通り私は飛び上がってしまった。
そのまま振り返れば、買い物袋を籠に乗せて自転車に跨ってるクダリさんだった
私の驚き方が面白かったのか、ケラケラ笑うその顔はいつもの笑顔とちょっと違う
自然でとても柔らかく見えたのは恋心ってフィルターを通してるからかな?
「あはは、笑ってゴメン!でもホントに飛び上がって驚く人初めて見た!」
「…ううっ、自分でもそんな事ができるなんて初めて知りました。」
「ホント、って面白いから大好き!」
その言葉にすら反応しちゃう自分が情けない。
だってクダリさんの好きって言葉は誰にでも使われてるんだもん。
手作りのお菓子をあげてるあの子にも、バトルトレインに通いつめてるあの子にも
クダリさんはいつも好きって言ってる。私が聞きたいのはその好きじゃない。
「、怒ってる?すっごく怖い顔してる。」
いきなり私の顔を覗き込むようにしてきたクダリさんの顔が凄く近くにあって
ビックリしてから慌てて首を横に振った。そんな私を不思議そうに見ながら
「はどーしてボクの家に来たの?」
コテン…と音が聞こえそうに首を傾げてこっちをみる仕草が大人の男の人なのに
なんだかとても可愛らしくて、そしてクダリさんによく似合ってて笑っちゃった。
これはチャンスかもしれない、今ならさり気なくこれを渡せるかもしれない。
「ちょっと待ってくださいね…はい、これを食べてもらいたいなって。」
白地の手触りの優しいラッピング用紙と白レースのリボンの箱を渡すと
一瞬で表情を明るくして満面の笑みを見せてくれた。
「これってお菓子?すっごく嬉しい!せっかくだから中に入って?
一人で食べるより、二人で食べたほうがもっと美味しくなると思う!」
玄関をあけてエスコートされて家の中に入れば初めて見るクダリさんの家の中
そのままリビングに案内されてソファーに私をソファーに座らせると
「ちょっと待ってね、買った物冷蔵庫に仕舞っちゃう。
ボクはコーヒー飲むけど、は?紅茶とココアなら置いてある!」
「私は別に…」
そう言ったら遠慮されると悲しい!と言われて同じくコーヒーをお願いした。
テキパキとキッチンで動くクダリさんは家の事もできるんだと感心してたら
一通り終わったみたいでトレイにコーヒーの入ったマグカップと
さっき私があげたチョコの包みを乗せて、リビングに戻ってきた。
「のお菓子、楽しみ!開けても良い?」
「…どうぞ」
ラッピングを外して出てきたチョコはホワイトチョコレートを使ったトリュフ。
中にはオレンジピールとか細かく刻んだドライフルーツやナッツが入ってて
食べた時の食感とかもキチンと考えて作ったそれは
誰にでも優しいってだけじゃなくって、仕事にはちょっと厳しい所とか
バトルへの真剣な姿勢とか色々な面を持ってるクダリさんをイメージしてる。
「うわ、すっごく美味しい!甘いだけじゃなくっていろんな味がする。
これってが作ったの?すっごい!すっごい美味しいよ!!」
気に入って貰えて良かった!一緒に食べようと勧められて一つ摘めば
何度も味見をしてるからどんな味かなんてわかってるんだけど
今食べてる方が美味しいって思えるのは、クダリさんと一緒だからかな?
でもチョコを渡す事には成功したけど、この後どうしよう…
仲良くチョコを食べるためだけに来たんじゃない、私がしたい事は
そうやって、頭のなかでどうしようって文字がグルグルまわってたら
クダリさんがソファーの背もたれに体を預けて、大きな溜息をついた。
「でも家の前にいたのがで良かった!
今日ってバレンタインでしょ?毎年いろんな女の子達が来て困ってた。
だから今日も朝からサイクリングに出かけちゃってた。」
「あ…」
そうだった、クダリさんは沢山の女の人に人気がある。
当然今日のバレンタインに私と同じ事を考える人がいたって不思議じゃない。
クダリさんはそんな人達に会いたくないからって家を留守にしてたって言った
そんな人達の中に私も入ってるのに…浮かれてたとか馬鹿だ。
「?」
「あぁ、ごめんなさい!クダリさんってモテるから大変ですよね。
なのにこうやって押しかけちゃっうとか本当に…ごめんなさい。
コーヒーごちそうさまでした!チョコ喜んで貰えて嬉しかったです。」
「待って!どーして帰っちゃうの?ボクが来てくれて嬉しい。
ボク何か変な事…あ…違う、違うの!勘違いしないで!!」
私がどうして帰ろうとしてるかクダリさんはわかったみたい。
わかったのならこのまま帰して欲しい、情けなさに泣いちゃう前に帰りたい。
向かいに座ってたクダリさんは私の顔を見ると慌てて席を立って隣に座った。
そして立ち上がってた私の手を引いて座らせると困ったように笑った。
「ボク先に言った。玄関の前にいたのがで良かった!って
もしじゃなかったら、そのまま回れ右してノボリの家に行ってた。」
「クダリさん?」
「まだわかんない?ボクはだから家の中に入ってもらった。
ねぇ、はボクに何か言いたい事があるんじゃないの?
何も連絡しないで来るとか、普段のならしない。話があるんでしょ?」
どうしよう、あんな話を聞いた後に言うなんて事は流石に出来ない。
言う位なら、結果が見えてるんだからなかった事にして家に帰りたい。
「、黙ってるのは狡い。ボクはちゃんと言った。
が来てくれて嬉しい、じゃなきゃ会わなかった、家に入れてない」
背の高いクダリさんは、私を見下ろしてるからなんだろうか
いつもの笑ってるような顔には見えなかった。表情がお兄さんみたいに見える
これはちょっと怒ってるのかも…怒らせちゃったのかもしれない。
「ボクが大好き、ずっとを大好きだって言ってる。」
「クダリさんは他の人にも好きって言ってますよね?意味が違うんです。」
「…意味が違うなんて事ない!ボク、に大好きってずっと言ってる。
白状するけど、ボク大好きって言葉はポケモン達とノボリにしか言ってない。
でもには言ってる。それでも意味が違うって言うの?」
「あ…」
今迄を思い出してみる。知り合った時は好きっていわれてた。
だけど暫くしてからはクダリさんは好きじゃなくずっと大好きって言っていた。
他の人には好きって言ってるけど、大好きって言ったのを聞いた事がない。
「ボク、本当はにだけ言いたい言葉がある。
でもそれはの話を聞いてからじゃないと言えない。だから話して?
ちゃんと話して欲しい、の気持ちをボクに伝えて欲しい。」
私の手をとって見つめる顔がまるでバトルをしてる時みたいに真剣で
決して私をからかってるって感じじゃなかった。
ねぇ、私は自惚れても良いの?クダリさんも同じ気持ちと思って良いんですか?
「私は…クダリさんの事が好きです。他の人の好きとは違うんです。
クダリさんだけが特別で…大好きなんです。」
「やっと言ってくれた!ずっとを見てたからわかってた。
だからずっと大好きだって言ってたけど、、気付いてくれなかった!」
「だ、だって…でもそれってとってもわかりにくいと思うんですけど…」
私の手を握った手を上下に振って綺麗に笑った目が一瞬すっと鋭くなる。
それからいつもの笑い方じゃなくチョロネコの様にニヤリとしてから
「わかりにくくても、がちゃんとボクの事を見ててくれたら
いつかは気がついてくれるって思ってた。でも結構鈍い、鈍感!」
「…すみません…。」
自分がクダリさんを好きだって事ばかりに気を取られちゃったから
クダリさんの気持ちに気がつかなかったんだろうか?
もしそうだとしたら、それって凄く勿体無い事をしてたんじゃないだろうか?
「ボク、が他の男の人にとられちゃうんじゃって凄く心配だった!
でも、もうそんな心配しなくても良いよね?ボク達これから恋人同士!!」
そう言って、クダリさんは私を一度強く抱きしめてから体を離してから
私の額に自分の額をくっつけると、ちょっと顔を赤くしながら笑って
「、愛してる。今迄も今もこれからもずっと愛してる!」
嬉しくて幸せで、泣いてしまった私を、ボクも嬉しくて泣きそうと言って
クダリさんは抱き寄せて、肩に顔をうずめてしまった。
「ずっとに言いたかった!この言葉はにしか使わない。
ポケモン達にもノボリにも言わない、だけの特別な言葉だからね?」
「はい…っ」
大好きなクダリさんからお返しにもらったものはクダリさんの特別だと言う
私を蕩けさせてしまう、チョコレートより甘い魅惑の言葉でした。