2014 White Day
狡い人 前編
生粋のイッシュの人間な私が、課長の地方の風習を知らなくて当然。
だから、気にする事はないんだよと笑う顔がなんだか印象的だった。
「その話は後から、まずは飯を食いましょう。
友人…って言ってもボス達なんですけど、教えてもらったいい店があるんです。
結構贔屓にしてる店なんで、さんも気に入ってくれると嬉しいな。」
メイン通りでは車道側、小道に入ってからは脇道がある側を歩いて
エスコートする様はとても自然だった。
しばらくして、店について中に入ればそこはお洒落なバーで
照明を落とした店内にクラッシックジャズが流れていて
それがすごくお店の雰囲気にピッタリだった。
「課長…「です。」…えっと……さん、凄く素敵なお店ですね。」
思わず課長と言えば、言い直させられちゃった。
恥ずかしかったけど、なんだかくすぐったいような気持ちになる。
…さんは、マスターに手を挙げると店の奥に私を案内してくれた。
「ここは全部のテーブルがちょっとしたパーティションで区切られてるから
周りを気にする事がないってボス達に教えてもらったんだけど
何より飯と酒がうまいんで、俺のお気に入りの店なんですよ。」
私を席に着かせてから、その斜め向かいに座ってメニューを差し出す。
バーなのに、本当に色々な食事のメニューがあって
好きな物をどうぞと言われたから、私はチキンのフリカッセとサラダを頼んだ。
そばを通ったボーイさんにオーダーをして、それ程しないうちに
私達の前にアルコールが出される。
「えっと、私は頼んでないんですけど…」
「これは俺からです。一人で飲むのは寂しいんで付き合ってください。」
本当なら食後の酒なんですけどね、と言って笑うさんに
勧められるまま、二色に分かれたグラスをまじまじと見た。
下の褐色の方はチョコレート系のお酒かな?甘い匂いがする。
上は生クリームみたいで、グラスに橋渡す様にピンに刺したチェリーがある。
どうやって飲むのかなって考えていたら、目の前に手が伸びてきて
チェリーを刺したピンを摘むと、チェリーをピンの先にずらす。
「これは飲む前にちょっとした遊びがあるんですよ。
このチェリーをカクテルに沈めて、それから真上にゆっくりとあげてごらん。」
差し出されたチェリーのピンを受け取って、言われた通りにすれば
生クリームがチェリーの出た分だけ消えて、そこには褐色のハートが浮かぶ。
「うわぁ、可愛い!」
思わず叫ぶ私をみて、グラスを傾けながらさんが笑う。
「これはAngel's Tip って言うカクテルなんだけど
俺等のいた地方では Angel's Kiss って言われてるんだ。
ほら、このハートが見方を変えれば唇にも似てるでしょう?」
言われてから改めて見れば、確かにハートよりは唇に近いかも。
これが綺麗に浮かび上がるのは運が良いなんて言われて
本当にそうかもしれないと思って、笑ってからグラスに口をつける。
「甘くて美味しい!…です。」
「別に普段と同じ様に話して構わないよ。俺もそうさせてもらうし?」
堅苦しいのは苦手だと言われて、それがなんだかさんらしいって思った。
グラスのカクテルが飲み終わるのを見計らったかの様に、食事が運ばれる。
「うわ、このチキンがパサついてなくて美味しいです。
サラダもドレッシングがオリジナルなのかな?すごく美味しい!」
「ここは肉料理が美味いけど、サラダも美味いんだ。」
その後はお酒の話や、料理についての話やボス達の暴露話(?)なんかで
色々と盛り上がってしまった。
さんは話し上手なだけじゃなく聞き上手で、私も沢山話しちゃった。
食事が終わって、デザートだよって言われて出てきたベイクドチーズケーキを
食べ終わった時に、私の目の前に細長い箱が差し出された。
「えっとさん、これは?」
「ホワイトデーのお返しとして、食事をご馳走させてもらったけど
これは君が俺にくれた気持ちへ、課長としてじゃないとしての返事。」
突然の事に、どうしていいかわからなくなった私を見て
前の時と同じ様に。頬杖をついて笑いながらさんはそう言った。
開けてみようと伸ばした手を掴まれて、驚いて顔を上げれば
雰囲気の変わったさんの顔が近くにあって、さらに驚いた。
「イッシュではプレゼントはもらった人の目の前で開けるのが普通だけど
俺等の地方では逆なんだ。だから、この中身は家に帰ってから開けて欲しい。」
「それじゃ、お礼を言えないので心苦しいんですけど…」
「お礼はメールでいいよ。それ以外の事も楽しみに待たせてもらうしな。
それはさんが中身を見て、その後でよく考えてからにした方が良い。」
バレンタインの時と同じ言葉に首を傾げれば
さんの瞳があの時と同じ様に細められて、その奥に同じ様な光が見えた。
そのまま箱を受け取ってカバンに入れた後、店を出て家まで送ってもらった。
「今日はありがとうございました。気を使わせてしまってすみませんでした。
後からメールを送らせていただきますね。」
「俺は気を使ってないよ。自分でしたいと思った事をしただけだしな。
さんこそ、気を使わないで欲しい。
それとさっき言った言葉をよく考えてからの、さんの返事を待ってます。」
それじゃあおやすみ、と言ってさんはメイン通りに向かう道を引き返した。
その姿が見えなくなるまで見送った後で、私は家に入る。
急いでカバンの中から受け取った箱を取り出し、中を見てみれば
そこにはアメジストでクローバーを模して、その横には別の石がはめ込まれた
ペンダントトップとそれを付けるチョーカーとネックレスが入っていた。
「うわぁ…」
ネックレスのチェーンにペンダントトップを通して身に付ける。
これなら職場につけて行っても大丈夫そうかも。
さっそく明日からつけて行こう。
そして、さんにメールだけじゃなく、きちんとお礼を言わなくちゃ。
まずはメールをと、さんにお礼のメールをいれた。
〈 素敵なプレゼントをありがとうございます。
明日これを身につけて行きますので、改めてお礼を言わせてください。
返信はいりません、ではまた明日、おやすみなさい。〉
次の日私は同じデザインの、石の色が逆になったチョーカーをつけた
課長を見て、驚きと嬉しさでボス達の執務室で泣いてしまったのは
仕方がないと思う。
──狡い人──
「さり気なくお揃いとか、も策士かもしんない。」
「えぇ、の従兄弟は伊達じゃねぇ!でございます。」
「あれって、どーみても首輪っぽく見えるのは私の気のせいじゃないよね?」
「てめぇ、忘れたのか?あいつは懐に入れたモンは絶対手放さねぇだろうが。」
「「「「さん…頑張れ、超頑張れ!(でございます。)」」」」
当作品のお持ち帰りはリクエストしてくださった方のみですので
どうぞご了承の程、お願いいたします。
バレンタイン企画に参加いただいたさく様へのサプライズ企画リクエスト作品です。
課長のお返しデートがなんだか、さく様捕獲作戦になりました…(滝汗)
ここで課長の名誉の為に言っておきますが、
課長は過去をさかのぼっても職場の子に手は出した事がありません。
後々めんどくさくなるからってのと、同僚は家族みたいなもんだと思ってるから。
それが趣旨替えする位なんだから、本気か?本気なのか?!
書いててどんどん、狡くなってしまって課長が別人になった気がします…(遠い目)
そして、まさかの前後編!そして、いらないうんちく盛りだくさん!(苦笑)
あのペンダントトップの為にさく様の作品を読み返したなんて、言っちゃう。
えぇ、石の意味はそれぞれの誕生石だったりしますので。(ニヤリ)
リテイクはいつでも受け付けておりますよー!
このような作品になりましたが、どうぞご笑納くださいませ。
さく様、企画参加本当に有難うございました!
また何かありましたら、どうぞ参加してくださいませ。(平伏)