諸人挙りて 後編 -2013 X'mas in イッシュ-

諸人挙りて 後編

2013 X'mas in イッシュ




「それじゃ、シングルヘルに苦しんでるおひとり様達に乾杯ですよー!」



ギアステの食堂で、クリスマスパーティをしようと言い出したさんが

パーティを始める挨拶をしたけれど、これはちょっと酷いですよね。



さーん、だからその言い方はやめて下さいってば!」



「カズマサ、現実見チャ駄目ダヨー。

コウイウ時ハ、顔デ笑ッテ心デ泣クンダ…嫌ダヨー!寂シスギルヨ!!」



「キャメロン、ぼく逹は結局このレールを選んだんだ。

今更走りだした列車を止めるのは事故が起きるからな。

でも、いつかは勝ち組に路線変更する事も出来る…と良いな。」



「トトメス、そんな中途半端な気持ちじゃ恋愛ってバトルは勝てない。

でも、ボクはこーいうのも楽しいと思う。」



「えぇ、私も今日のパーティをとても楽しみにしておりました。

皆様、本日はこれより無礼講で出発進行してくださいまし。」



グラスに注がれたサイコソーダを一口のめば

口の中で炭酸の弾ける感覚が、今のボクの気持ちみたいで擽ったい。


さんから、このパーティのお誘いがあった時に

とても驚いてしまったけれど、その後ですごく嬉しくなったんです。

クリスマスパーティっていうのは、家族でするもので

家族のいないボクにはこれからも関係ないものだと思っていました。



『俺達のいた所じゃ、クリスマスってのは恋人同士とか友人達で

ワイワイ騒ぐのが主流だったからね。

だから、ジャッキーも参加してくれると俺達は嬉しいな』



シンオウではそういう風習なのかと感心したのと同時に、

それなら、ボクが関わり合っても問題はないのかなって思いました。

それからは、プレゼントの事を聞いたので、

交換用と参加する皆さんにそれぞれ贈るものをと、あれこれ悩みながら

それすらも楽しくて、ネット通販の画面の前で寝落ちした程です。



「ジャッキーは鍋料理は初めてだね。

これは色々な食材が入っていて栄養もあるんだ。沢山食べると良いよ。」



さんがボクに取り分けて差し出してくれたので

お礼を言ってから口にすれば、ほんのりとした塩味と色々な食材の

風味が複雑に絡み合いながら広がります。うん、美味しいです。



「ジャッキー、サイコソーダなんていつでも飲めるからな。

余り酒が飲めないって聞いてるが、全くって訳じゃないんだろう?」



「ジャッキーさん、厨房の人達の差し入れのローストターキーです。

後は、黒ボス作のミートローフとローストビーフもどーぞ!」



そう言って、さんはグラスに入ったスパークリングワインを

さんは美味しそうな料理をボクに渡してくれます。


料理を口に運びながら、誰かと一緒に食事をする事がこれ程楽しいとは

独りでいる事が当たり前だと思っていたボクには想像も出来ない事でした。

今までだって十分幸せだと思っていました。

大好きなポケモンと、素敵な仲間達に囲まれて過ごす事、でもそれ以上に

こうして一緒に何かをする事は、もっと幸せなんだって初めて知りました。



「どんどん取り分けますからねー、これは手作りの

ケーキ3種類盛り合わせで、どれも味は保証できますよー。」



ケーキを綺麗に切り分けて、全員に渡していたさんが

最後にボクにどうぞと手渡してくれました。



「ジャッキーさん、楽しんでますか?

こういうイベントは参加する事に意義があるじゃ駄目ですよー。

ガッツリ楽しまなくちゃ人生もったいないですよ?」



「あはは、さんはすごく楽しんでますよね。

今回、ボクを誘おうって言ってくれたのもさんなんでしょう?

ありがとうございます。ボクはこういう行事とは無縁だと思ってたので

お誘いを受けた時には驚いたけれど、凄く嬉しかったです。」



食堂でクリスマスパーティをする事が決まった時に

最初にボクを誘おうと言ってくれたと聞いていたのでお礼を言えば

ニヤリと笑って指を振って駄目駄目と言われました。



「無理に外に出なくたって、イベントは色々楽しむ事ができますよ?

私も軽く引き篭りっぽかったりしますけど、楽しんでますし。

人生なんて一回きりなんですからね。

悩むよりは笑っていた方がいいじゃないですか。

その為にはイベント事は率先して満喫しなくちゃ、勿体無いですよ?」



普段から色々な部署に顔を出して、いつも楽しそうにしている人に

引き篭りと言われても信用できませんが…

それに、こんな事を言われたのも初めてで驚いてしまいました。



「ジャッキー、と関わったのが運の尽きだと思ったほうがいいよ?

こいつは、こういうイベントをとことん楽しみ尽くすからね。

そして必ず周りを巻き込んで大騒ぎになるんだよ。」



「うん、ボク逹も最初はの家で鍋パーティするって聞いて驚いた。

でも、こういう楽しい事だったらトコトン楽しんだほうが良いと思う。

だから、ジャッキーもこれからは一緒に楽しめば良い。」



さんと、白ボスの言葉に、ここに居る全員が賛同する。

さんは究極のひとり上手と呼んで!なんて言って

更に皆を笑わせていた。



「さて盛り上がってまいりましたし、プレゼント交換をいたしましょうか

くじを引いて、番号と同じプレゼントをお受け取りくださいまし。」 



小さな箱に入った紙片をとって番号の書いてあるプレゼントを受け取る。

全員がプレゼントを手にしてから、中身のお披露目になったけれど

それぞれの個性がとても現れていて、なんだか面白いですよね。



「それじゃ、こんどは皆が其々用意したプレゼントを

その人のテーブルの上に置いて、その後で見せ合えば良いと思う。」



今度は全員がそれぞれの座っていたテーブルの前に自分の用意した

プレゼントを置いていきます。気に入ってもらえると嬉しいです。


配り終わった後に再び席につき、もらったプレゼントを開けました。

皆さんが、僕の事を考えて選んでくれたんだなって気持ちが伝わる

そんなプレゼントの数々に思わず笑みがこぼれましたが、

ひとつのプレゼントを目の前にして、ちょっと考え込んでしましいました。



「ウワー、マフラート手袋ナンテ凄イ!コレッテ手編ミ?」



キャメロンさんの声に全員を見れば、皆さんにマフラーと手袋が

配られていました。それは其々に似合う色を使われていて

素敵な事は素敵なのですが、正直言って、ボクには使う事の無い物です。



「皆、私を女じゃないとか言ってますけどね?

こういう事も出来るんですからね!知って驚け、見て驚けですよー。

後、ジャッキーさん。ちょっと困ってるみたいですけどね…」



さんの声に全員がボクとボクの手に持っているそれを見て

顔を曇らせてしまったんですが、さんは笑って言葉を続けました。



「ジャッキーさんは外に出れない事を色々と考えているみたいですけど

ぶっちゃければ、世の中考えても仕方のない事って多いじゃないですか。

これも、そういう事なんだって思うのも一つの方法と思うんですよ。」



「…多くのドクターはそれでは駄目だと言ってましたよ?」



「俺はそうは言わなかったと思うんだけどな。

嫌な事を我慢してやったって、どっかに反動がでるだろう?

無理する必要なんて無いと思うよ?」



さんはそうでした。

はっきり言ってしまえば、ボクは今の状況に満足しています。

それを横から変だとか言われてしまい、何とかしろと言います。

でもそれは自分に出来ない事で、色々と考えてしまうんです。


ボクが黙って下を向いてしまったので、皆さんが心配しています。

あぁ、皆さんにこんな顔をさせたくないのに…。



「ジャッキーさん、そんな顔をしないでください。

大体、外に出てそれからどうするの?

そもそも外に出る時って散歩をしたいとか、理由があるんですよ。

それを持たない人に外に出ろっていう方が変だと思いません?

あ、でもジャッキーさんは外の何が特にダメなんでしょう?」



「何とはですか?

…うーん、そうですね広すぎる空間とか

後は自分がどこに行けばいいのかが、わからなくなるんですよ。

以前出たときは、人ごみも駄目だという事がわかりました。」



「人ごみは私も苦手ですね。

それじゃ、変な事を聞きますけどね?

例えば、私の家で皆でご飯食べるからテレポート使って来ませんか?

って、そう言われたらどうなんでしょう?」



「あ…それだったら…うん、それなら大丈夫かもしれません。

別に自分の部屋以外の空間が駄目って訳じゃないんです。」



確かに、その方法だったらボクはギアスてから出る事も出来るかもしれない

でも、やっぱりダメかもしれない…でも、それが出来るならボクは…



「確かにその方法なら外に出たっていう感覚もないだろうし

駄目だったら、またテレポートで戻れば良いだけだからね。

負担も少ないから、試してみるのも良いかもしれないね。」



ボクが返事をしないのを、拒んでいると思ったのか

白ボスがボクの傍に来て、肩を叩きました。



「ジャッキー、無理する事は無いと思う。

ボク逹はキミがそれで良いって言うなら、何も言わない。」



「そうでございますね、ですが私達の協力が必要でしたら

いつでも言って下さいまし。お力添えいたしますよ?」



「そう言う事なら、一度俺のアパートに来てみるか?

寮だから、、トトメス、キャメロン、カズマサもいるからな

ここでの面子が揃っていれば、いくらか気持ちも違うだろう。」



黒ボスと、さんの言葉に他の人達もニッコリ笑って頷いていました。

確かに、皆さんが一緒にいれば大丈夫の様な気がしてきました。



「まずはそう言う事をやってみましょうよ、

そしてその次にはそれぞれの家に行くのに、テレポートを使わない様に

そうやってチャレンジするのもひとつの手じゃないですか?」



「ジャッキーさんが一人で行けないのなら、ボクがご一緒します!」



「カズマサは迷う事が確定しているからダメだろう。

ぼくで良ければ、その役を喜んで引受させてもらいたいな。」



「皆ノ家ニ、泊マルトカ楽シソウダヨネー。

ソウ言ウ事ダッタラ、オレモ喜ンデ手伝ワセテモラウヨー!」



なんでしょうか、本当に皆さんと並んで外を歩く光景が見えてきて

そこでボクも笑っている…本当にそんな日が来るような気がして

いえ、ボクがそうしたいんだって、初めて心から思ってしまって

胸が熱くなって、何も言うことができませんでした。



「ジャッキーさん、このプレゼントは今すぐ使う事はないかもしれません。

でも、そんな日が来た時用にって事で受け取ってもらえませんか?

今の気持ちがあれば、そんなに遠い話じゃ無い様な気がしますよ?」



さんが僕の前に置かれたマフラーと手袋を手に取って

改めてと言って僕の前に差し出してくれました。

えぇ…そういう日が来るって、今の僕ならそう思えます。

ボクも改めて、プレゼントを受け取らせて頂きました。



さん、途中で不快な思いをさせてすみませんでした。

でも、ボクは今回のパーティに参加して楽しかったんです。

そして、これからもこうして皆さんとご一緒したいと思いました。

だから、このプレゼントはその時の為ってだけじゃなくて

お守りとして、受け取らせてください。本当に有難うございます!」



「こちらこそ、受け取ってもらえて嬉しいですよ。有難うございます。

後ですね、今回でこういうイベントが終わりなわけ無いじゃないですか

今後も参加メンバーに強制加入させますからね!」



さんの言葉に全員が親指を立てて笑っていました。

そう言う事でしたら、断る理由なんてボクにはありません。



「いつかは勝ち組になりますけど、その時まではご一緒します。

って事で良いですよね?」



ボクが笑って親指を立てたら、カズマサさん達が抜けがけ禁止とか

さらに先を行かせてもらうなんて言っていて、それを聞いて

ボク逹は全員でまた笑い合いました。


さっきまでの重い空気は無くなり、暖かな雰囲気が食堂を満たしています。

もう一度乾杯をしようという事になって、全員がグラスを持ち叫びました。



── Merry Christmas!──



今度の集まりの時には、僕自身も変わる事が出来そうで

そんな弾んだ気持ちのまま、スパークリングワインの入ったグラスを

皆に掲げてから一気に飲み干しました。