じゃない世界の訪問者達 

じゃない世界の訪問者達 



駅長室の横の応接室に通されて、コーヒーや紅茶で一息ついた所で
まずはそれぞれに、自己紹介をする事になった。

「では改めまして、ここライモンシティのギアステーションの
駅長と申します。そして、ノボリ、クダリ、ジュニアの父です。」

人好きのする笑みを向けてそう言った駅長さんは
どう見ても俺とそんなに歳が変わらないように見えるんだが…。

「わたくし、ノボリと申します。サブウェイマスターとして
シングル、スーパーシングル、マルチを担当しております。」

「ぼくはクダリ。ノボリの双子の弟。
サブウェイマスターでダブル、スーパーダブル、マルチを担当してる。」

「俺の名前は事情があって言えないんで、ジュニアって呼んでくれ。
親父の歳とか色々不思議に思ってんだろうが、紛れもなく俺の実父だ。
まぁ、色々あって特殊な感じになってると思ってくれると助かる。」

成程ね、なんだか色々あったみたいだな。
ここの面々が困った様に笑うから、これ以上は聞かない方が良さそうだ。
そしてうちの面々も俺と同じに思ったようだな、察しがよくて助かるぞ。

「大変込み入った事情までお話させてしまい、申し訳ありません。
私、あちらのギアステーションにて最高責任者及び、
こちらのノボリ様と同様にサブウェイマスターも兼任しております
ノボリと申します。よろしくお願い致します。」

「ボク、ノボリの双子の弟クダリ。
こっちのクダリとおんなじ担当のサブウェイマスター。
あっちのギアステでノボリと一緒にギアステ最高責任者もやってる。
大勢で押しかけてゴメンネ?でもせっかくだから仲良くして欲しい。」

「俺は、施設設備保全管理課の課長をしてますと言います。
委託業者として、向こうののギアステと専属契約をしています。
俺の事はどうぞ、と呼んで下さい。」

「課長の下で同様に委託業者として保全管理課にいます、です。
熱絶縁施工って、あまり聞きなれない仕事を主にしています。
私もと呼んで下さい。敬称とか堅苦しいのは苦手なんですー。」

「ワタクシ達の自己紹介は先ほど済ませたノデ、省略致しマス。」

「ボク達はソレゾレにFriendなんダヨ。」

エメットの言葉にマジかー!とか別人だ、別人でございますとか
色々言っているのは敢えて聞かなかった事にしておこう。
うちのインゴとエメットがそれを聞いてすげー嫌な顔してるんだが
まぁ、あれだな。見なかった事にもしておこうか。

「まずは私達がこちらに来たのが、ハイリンクかどうかを確認しましょ。
課長と私以外の四人はハイリンク島に行って確認してきて下さい。」

、貴女達は行かないのデスカ?」

「ここのギアステに施設保全管理課が無い以上、俺等と同じ立場の人間が
存在するとは思えません。ハイリンクとは違うと思うんです。
俺の直感は外れた事が無いでしょう?だから4人でお願いします。」

の言葉に、うちの上司とその従兄弟達が驚いて何か言いそうになったが
それについては俺が一刀両断させてもらった。

「それじゃあ、俺達は二人のその施設保全管理についてお聞きしたいので。
ジュニアに案内させましょう。そういう訳で頼んでも良いか、ジュニア?」

「親父なら絶対そう言うと思ってたから、構わねぇよ。
んじゃ、さっさと行って確認してすぐに戻ってきましょうか。」

駅長さんに言われて、ジュニアさんが立ち上がり四人を手招きした。
まずは確認したかったから、4人にはハイリンク島に向かってもらった。

俺とは、駅長さん達にこっちに来るまでの経緯を説明した後に
俺等がどうして向こうで、施設設備の保全管理を任される様になったかを
説明した後で、更に仕事の内容なんかの説明を始めた。

「成程、施設全般の保全に修繕や改修ですか。
確かに個別で委託業者に頼むのは、コスト的に割高になりますからね。」

「あのね、そういった方面の統括を、向こうのぼくたちはやってるの?
うわー、ぼくとノボリが駅長と同じ仕事なんて考えたくない!」

そっか、ここの両ボス達はバトル部門専門に担当してるんだ。
確かに他の経営面だとかってモンは、面倒な事が多いからな。
うちのボス達もこうだったら、もっとのびのびしてるんだろうな。

「出来ないんじゃなくて、やらなきゃ職場が機能しなくなるんですよ。
もっとも、部下が非常に優秀な猛者揃いですからね。
あっちのギアステはトレーナーの廃人施設ってだけじゃなくて
職人達の廃人施設とも呼ばれているんですよー。」

が得意気に話しているが、廃人施設は誇れるモンなのか?

「トレーナーの皆様だけでなく職員、それも職人の様な方々までが
廃人でらっしゃるとは素晴らしい事でございます!」

…誇れるモンらしい…。
まぁ、こっちの施設もバトルトレーナーの面々は廃人よろしく
仲良くやってるみたいだし、雰囲気的に共通してるかもな。

そんな感じでこっちと向こうの違いみたいな事を話していたら
ハイリンク島に行ってた面々が戻ってきた。

「ただ今戻りました。結論から申し上げれば、ハイリンクでございました。」

「バトルをスレバ戻る事が可能だと思われマス。」

「んで、そっちの二人…さんとさんはどうなんだ?」

ジュニアさんが困惑顔でこっちを見ている。あぁ、俺等の心配をしてるのか。
インゴ達はそれについては何も答えること無く、何かを考え込んでる。
うちの黒ボスと白ボスも深刻な顔をして俯いちまった。

「…大丈夫ですよ、絶対に私達にも戻る方法はあります。
だから黒ボスも白ボスもそんな顔しちゃ駄目ですよ。
そして、四人は帰る方法がわかったんだから先に帰って下さい。」

が笑いながら両ボスの傍に行って肩を叩く。
二人は納得しきれていない様で俯いたまま首を振っている。

「そのお願いは聞きたくナイ!そんなお別れはしたくないヨ。」

インゴとエメットがを両側から抱きしめる。
両ボスがの手をそれぞれに取って強く握る。
その状況に、ここのボス達全員が目を見開いて驚いていた。

「ワタクシ達がアチラに帰る時は達も一緒デス。」

肩口に顔を埋めて懇願するように言う二人の背中を
両ボスに握られた手を強く握り返した後に、開放してもらってから
子供をあやす様にポンポンと叩いては言葉を続ける。

「いや、それは駄目ですよ。この不確かな状況で
唯一帰還方法がわかっているのなら、四人はすぐに帰るべきです。
来る時の地震?も気になりますが、向こうの時間の流れも気になります。
最悪あっちで、ボス達不在の状態が続いているのであれば
すぐに戻って対処しなくてはいけないでしょう?
大丈夫です、私達も絶対帰りますからそんなに心配しないで下さい。
あっちに帰ったら、向こうでまた一緒に楽しく御飯を食べましょ?」

「俺等の事だって、絶対なにか方法はあるはずだ。
大丈夫だ、こっちに残るなんて事はない。
絶対そっちに帰るから、先に行って待っててくれ。」

俺等の言葉に渋々納得したのか四人はから離れた。
話が一息ついたのを見計らうかの様にここの両ボスが声をかける。

「皆様、昼食は済んでいるのでしょうか?
もしまだでしたら、まずは食事をしてからにいたしませんか?」

「そうだね、お腹が空いてるといい考えが浮かばないと思うし。
ぼくたちもまだお昼食べてないから、良かったら一緒に食べようよ。」

そう言えば、俺等も昼飯前だったからな。
言われてから改めて腹が減ってる事に気がついた。
色々ゴタゴタしていても、空腹だけは誤魔化せないもんだな。
なんせ、休憩時間前にこんな事になっちまった。
人間腹が減ってる時は、確かにロクな考えなんて浮かびっこ無い。

「そう言えば、俺も飯食ってないから腹が減ってきた。
兄貴達は今日は弁当じゃないんだろ?だったら何処かで一緒に食おうぜ。」

俺等もまだ昼食を食っていない事を伝えれば、
ジュニアさんも一緒に飯を食う提案をしてくれた。

「それなら、食堂に行った方が良いだろうな。
あそこでしたら、皆さんの口に合うものが、なにかしらあるでしょう。
こっちの食堂の味は保証しますよ?」

駅長が笑いながら声をかける。
こっちの連中はそれに反対するはずもなく、一緒に行く事にした。

「へー、こっちの食堂の感じもやっぱりボク達のギアステと同じ!
でも中で働いてる人がちょっと違う?」

「その様でございますね。どのメニューも美味しそうでございます。
勿論、私達の施設の食堂も負けてはおりませんよ?」

ボス達が食堂の雰囲気なんかの感想を改めて言っている。
いや、どっちが勝つとか負けるとかそう言うモンじゃないだろう。
ここで普段なら俺以上のツッコミを見せるが大人しいんで
不思議に思ってそっちを見れば、全く別な方を見つめていた。

「駅長さん、ちょっと厨房の中に入って、見たいものがあるんですが
許可をいただけませんか?調理関係の物には触りませんので。」

「あぁ、別に構わないですよ。こちらから入れますので。」

は駅長の案内で厨房の中に入った。
待て、このシチュエーションは以前俺がやった事とすげぇ似てるぞ!
は真っ直ぐ換気扇のある場所に近づいて壁をチェックしだした。
そこの壁は周囲の壁に比べると明らかに変色していた。
ちょっと待てぇええええ!マジか!!

「ここの責任者の方は…あぁ、突然お邪魔してしまってすみません。
少々お聞きしたいんですけど、この壁の変色って油汚れじゃないですよね?
気がついたら、段々と色が変わってきてるんじゃないですか?」

の問いにこっちの厨房の責任者の人が何か言っている。
次には換気扇傍の戸棚を開けて中の様子を見せてもらっている。

「あのね、…彼女はあそこで何してるの?」

ここの白ボスが不思議そうな顔をして俺に聞いてきた。
どうやって説明しようか考えていると、がすっ飛んで来た。

「課長!こっちの消防法もふざけてるよ!
ダクト保温の厚みが全然足りない!これだと向こうの二の舞になるよ!」

やっぱりそうだったのかー!予感的中で俺が頭を抱えてたら、
駅長さんも深刻な顔をしてすっ飛んで来た。

の話はマジか?
この状態をそのままにしておけば、火事になるとか洒落になんねぇぞ!」

「駅長落ち着いて、口調が仕事モードじゃなくなってるよ!
どうしたの?なにが起きてるのか、ぼくたちにもわかるように説明して。」

「駅長、落ち着いてくださいまし!
火事になるとか一体どう言う事でございますか?!」

ここの両ボスが俺に詰め寄ってきた。
うちの両ボスが、あぁ…やっぱりねって顔してお互いの顔を見てるし。
インゴとエメットは以前俺が説明した事のある状況を思い出したらしい。

、この状況は向こうの厨房と同じ現象でゴザイマスカ?」

「業者が手抜きシテ、熱が壁に伝わってるって
放っておくと壁の中で火がついて火事になる危険があるんダッテ。
ソシテ、達が突貫作業でソレを改修した事例…デショ?」

二人の説明に、ここの両ボスの顔色が変わった。
それだけじゃない、食堂にいるここの職員達も驚いてこっちを見ている。

「あー、その話は流石にここでするのはマズイでしょう。
取り敢えず飯食って、戻ってからって事にしませんか?
火事については、今すぐって状態ではありませんから安心して下さい。」

俺の言葉に周囲の職員達も納得したようで食事を再開した。
そして駅長さん達もホッとした表情に戻る。

俺等がこっちに来る時に、一緒に仕事の材料もついてきた事。
こっちの厨房の換気扇ダクトの保温が足りないって事。
これらが全くの無関係じゃないって考えてもおかしくは無い。
そしても同じ様に考えているみたいで俺の方をみて頷いた。

この事態を解決する糸口がみえてきた気がするんで
今は目の前に出された食事を堪能させてもらう事にする。
腹が減っては戦はできぬって、マジでその通りだと思うぞ!