じゃない世界の訪問者達 

じゃない世界の訪問者達 



「そういえば、この間の休日にハイリンクをしてキマシタ。」

向こうのギアステが車両点検で休みらしくて、こっちのギアステに
視察という名で、遊びに来ている上司の従兄弟達がソファーに座って
すっかり寛ぎながらそんな話を切り出した。

「ハイリンクって違う世界に行って、そこの自分と絡むんだっけ?
インゴとエメットと同じとか、ボク想像がつかない。」

白ボスが書類と格闘しながら呟けば、黒ボスも頷く。

「えぇ、この様な唯我独尊まっしぐらな連中がもうひと組とか…
もしや、そちらの方々もサブウェイマスターでございますか?」

「そうダヨ!でもね、笑っちゃったヨ。
その二人、ノボリとクダリと同じ顔してるんダヨ!
向こうのインゴは、ゲイだったシサ!それに更に無口ダッタ。
あっちのエメットは…ウン、バイだったんだけどネー。
コンナ兄だと大変ダネって言っタラ、抱きつかれチャッテ焦ったヨ!」

おー、ゲイとかバイとか久々に聞くな。
両ボスはそういうのが理解できないらしくて、なんですかそれは!なんて
言ってるが、所詮好みの問題だろ?人の趣向に文句は言えないだろう。

はそう言うの聞いても騒がないけど平気なの?
ボクは無理!男同士で何が楽しいのかわかんない!」

「白ボス、そこは好みとか色々あって個人の自由だと思うぞ?
インゴ、あっちには両ボスはいなかったのか?」

「エェ、なんでも別な世界で、よくハイリンクする所ニハいる様デシタ。
そこの二人には父親が居て、ギアステで駅長をしているそうデス。
そして、先代のサブウェイマスターでもアリ、トテモ強いトカ…
ワタクシも是否バトルしたいと思いマシタ。」

へー、世界が変われば人も微妙に変わるんだ。そういうのも面白そうだな。

「ソレでね、向こうのインゴとエメットはそっちの駅長が好きなんダッテ!
ダケド、その人はノーマルだし息子のノボリとクダリが邪魔するッテ。
後、また違う世界からの駅長がハイリンクで来て、更に邪魔するらしいヨ?」

子持ちな時点でその想いは成就出来ないだろう。
それでも諦められないってのは本気の想いなんだろうな。

「でも、違う世界の自分とバトルと言うのも大変興味がございますね。
クダリ、私達も今度の休日にハイリンクしてみましょうか?」

「今までやった事なかったけど、面白そう!
そうだ、あっちの世界では達っているの?」

「イエ、保全管理課と言う部署自体存在致しませんデシタネ。」

そりゃそうだろうな、そうそう似たような事例があっても困るだろ。

「そう言えば達は?この時間に姿が見えないって珍しいヨネ。」

は作業部屋で在庫の確認中です。
えっと、主任は現在自分の企画案の実現に向けてイッシュ総合病院に
なんだか色々と打ち合わせがあるって、外出してるんですよ。」

…オマエ、その呼び方はどうしたのデスカ?」

「インゴ、そっとしておいてあげてくださいまし。
総務部長より、職場であだ名を呼ぶのはやめろと言われまして…」

そうなんだよ、いつもの様に呼んでたら
仕事とプライベートの区別をつけろってな!

「Ahー、彼ナラ言うネ。でも間違った事ジャ無いカラネ。」

「えぇ、なので今後、職場ではこんな感じになります。
それはそうと、そのハイリンク世界の話は面白いですね。
それぞれのボス達とインゴ達に、俺も会いたくなりましたが
向こうの世界に俺等がいないとなったら、やはり無理でしょうかね?」

「恐らく、ハイリンクをする事自体が不可能ダト思われマス。」

そっか、そういう事なら仕方が無いな。
まぁ、話を聞くだけでも面白いから、それで我慢することにするか。
ハイリンク話での盛り上がりがひと段落した時に
インカムからの声が聞こえてきた。

『保全管理課長、聞こえますかー?
何だか変な材料が混じってるんですけど、これって課長か主任のですか?
発注書も受取書も見当たらないんですけどー。』

材料?そんなもの俺は頼んでないぞ。
主任かと思って、主任のパソコンから材料請求の項目を開いても
ここしばらくの間の請求すら見当たらなかった。

「いや、どっちも頼んでない。どんな材料なんだ?
あぁ、俺がそっちに行くからそこで待機していてくれ。」

インカムの通信が切れて、俺は作業服の上着をもってドアへ向かう。

「業者の発注ミス?よくわかんないけど、ボク達も一緒に行く!」

「ワタクシ達も、の作業部屋の荷物の配置が美しいノデ
自分達の職場デモ参考にする為に、一緒に行かせてもらいマス。」

上司集合とか、が見たら驚くだろうな、なんて思いながら
俺等は作業場へ向かった。
そこには確かに、以前厨房の修繕に使った材料が一式揃っていた。

「課長と皆さん総出?! うわー、お手を煩わせてすみません!
ホント、なんなんでしょうね?材料業者にも確認したんですけど、
そんな材料は受け付けていないし、発送もしてないって言われました。」

「まぁ、そう言う事ならこの材料はここでキープでも良いんじゃないか?
むしろ材料費が浮いて、ラッキーって思えばそれでいいだろう。
そろそろ昼休憩になるから、お前も戻ってコーヒーでも飲め。」

そう言っての肩に手をおいた時
立っていられない程の、突き上げるような凄まじい揺れが部屋を襲った。

「地震?!結構大きい!車両とか見に行かなくちゃ…って、うわっ!」

「クダリ、まずは身の安全確保でございます!揺れが止まるまで…
これはっ、かなり続いておりますが、皆さ、まっ、ご無事ですかっ?!」

「とにかく姿勢を低くっ…ダヨ!…インゴ!をコッチに!」

「とっくにしてオリマス!、動いては危険デス!」

俺等が一固まりになって、姿勢を低くしても揺れは全く収まらなかった。
それどころか停電にまでなって周囲が真っ暗になり、視界も奪われる。

「Hmm…やっと揺れが落ち着いてきた様でゴザイマスネ。」

「お、やっと止まって電気もついたな。
…って、ちょっと待て、何だか周りがおかしくないか?」

揺れが収まり、照明も回復した作業部屋を見れば
ついさっきまでの景色とは全く違っていた。
例のわけのわからない材料は傍にあるんだが、それ以外が無い。
代わりに見た事も無い様なダンボールの山が乱雑に置かれている。

「ちょっと待て、何このいい加減な整理整頓!
こんなのスペースの無駄でしょう。責任者出てこい!って感じですよ。
んで、責任者の両ボス、私に理解できるように説明プリーズ?」

、現実逃避やめようか?ボク達だってわかんない!
でもホントに変だ。この場所は作業部屋にする前の
資料とか不用品とか置いてた時の雰囲気に似てる。」

あー?ちょっと待て、ベタな展開でタイムスリップとか勘弁して欲しいぞ。

「いえ、どうやらそれとも違うようでございます。
これをご覧下さいまし。この書類のサインは私の名前でございますが
筆跡がまるで違います。そしてその下に…」

俺等が黒ボスの手にした書類を一斉に覗き込む。
そこには何かの発注と確認の上司のサインがあるんだが
確かに黒ボスの筆跡とは似ても似つかないものだ。
最高責任者である黒ボスのサインの下に、もうひとつサインがある。

「…ライモンシティ ギアステーション 駅長…?」

全く聞いた事の無い役職と名前に、互いの顔を見合わせる。
今のこの状況がどういうものなのか、途方に暮れていたその時に
部屋のドアが開いて数人の人影が中に飛び込んできた。

「こちらは関係者以外立ち入り禁止の場所にございます。
お客様は直ちに退出してくださいまし!って…えぇええ?!」

「泥棒の類で入ったんならいい度胸ってもんだぜ!
全力で縛り上げてジュンサーさんの所にしょっぴくからな!
って、なんだこれぇええええ?!」

「不審者の身柄確保はノボリとジュニアの担当!ぼくと駅長は尋問担当!
…ねぇ、駅長。ぼく凄く見たことのある顔が見えるけど、気のせい?」

「クダリ、奇遇だな。俺も今それをお前に言おうとしてた所だ。
どうやら泥棒じゃないみたいだが、これはハイリンクか?
それにしても、こんな荷物付きのハイリンクなんて見た事ないんだがな。」

中に入ってきたのはどう見ても両ボスとそっくりで特徴あるコートも同じ
そして他の2人も容姿がすげぇ似てるから双子?いや歳が違いそうだな。
俺もそうだが、カントー系の顔立ちをしてる。
駅長って呼ばれている人物は、サブウェイマスターのコートとよく似た
白黒のコートと、チェッカー模様の帽子を身につけている。
中に入ってきたここの黒ボスと戦闘態勢に入ったうちの黒ボスが
近い距離でお互いを見つめ合ってるんだが…この状況どうするんだ?

「ノボリさん、ノボリさん。そうやっているとそっくりですよね。
なんて言うか…いつの間にノボリさん増殖したんですか?
とうとう結婚諦めてクローン作っていたとか?」

固まった空気をぶち壊したのはナイスだが…それは違うと思うぞ。
いつものブッ飛んだ発言に、我に返ったうちの黒ボスがその体制のまま
の頭を鷲掴みにした。

、貴女は馬鹿ですか?空気読めこの野郎!でございますよ。
それに私はまだ諦めておりません!そしてクローンも作っておりません!」

「いだだだだ!ギブ!ギブですっ!ちょっとしたお茶目ですってば。
固い木の実も笑顔で粉砕できる握力を、こんな場所で使わないで下さい!」

あいも変わらぬやり取りに、ここの黒ボスが困惑しながら止めに入る。
その後ろで、ここの白ボス達が肩を震わせて笑うのを我慢してるし。

「ノボリ様?相手は女性でございます。乱暴な事はおやめくださいまし」

「…ノボリ様で宜しいのでしょうか?お気になさる必要はございません。
この部下はいつもこの様に雰囲気をぶち壊すわ、失言かますわなのです。
、やはり貴女には学習装置を持たせる必要がありそうでございますね。」

「あー、脳みそ飛び出すかと思った!えっと、ここのノボリさん?
助けていただいてありがとうございます。マジで感謝ですっ!
後、前から言ってますけど学習装置は人間に効果はないんですってば!
ノボリさ…じゃない、黒ボスこそ学習装置使った方が…って、ギャー!」

も黒ボスもストップだ。今必要なのはこの現状の把握でしょう?
えっと失礼ですが、ここはライモンシティのギアステーションですよね?」

せっかく固まった雰囲気が崩れたんだから話を進めないと駄目だろう。
俺は一番話の通じそうな…白黒の制服に身を包んだ駅長?に話しかけた。

「えぇ、こちらはライモンシティのギアステーションで間違いありません。
失礼ですが、皆様方も同じ所から来た。と、思っても宜しいのでしょうか?」

取り敢えず話が進みそうで助かった!
確かに俺達はそうだけど、と思ってインゴとエメットを振り返る。
俺の視線に気がついた二人がゆっくりと傍に近づいてきた。

「ワタクシ達は世界は同じでも地域が違いマス。
改めまして、ユノーヴァ地方ニンバスシティのギアステーションにて
サブウェイボスをしてオリマス、インゴと申しマス。
向こうのサブウェイマスターとは、従兄弟同士の関係でゴザイマス。」

「同ジク、サブウェイボス、ダブル担当のエメットダヨ。よろしくネ!
コノ状況って、ハイリンクしたって事で良いのカナ?」

インゴとエメットの名前を聞いて向こうの連中が凍りついた。
なんだ?駅長じゃない…ジュニア?の方が駅長とインゴ達の間に入る。

「兄貴達の従兄弟がインゴとエメットとかマジかよ!
見た目も雰囲気も違うんだがな、名前が名前なんで聞かせてもらうぜ。
えっと、そっちのインゴさん…うわー、さん、なんざつけたくねえええ!
二人はゲイとかバイの趣味とかってあるのか?」

その設定ってさっき聞いたばかりだぞ?
なんとなくだが、今のこの場所と状況が理解できそうになってきた。

「ヤメテー!ボク、女のコナラ全然OKダケド、ソッチの趣味無いヨ!」

「ワタクシは小煩い女も不要デスし、ソンナ趣味もゴザイマセン。
どうやら心配しているソノ相手は、別なハイリンク世界の、
ワタクシ達の従兄弟の容姿を持つ人物ではないでショウカ?
そうでしたナラ、アノ様な連中と同一視されるノハ迷惑デス。」

二人の回答に安心したかの様に、ホッと大きく息を全員でついてるし。
そのインゴとエメットはかなり色々とやらかしてるんだろうな。
性格がこの二人のままだったら、それはかなりキツいだろう。

「あれ?二人はそのインゴとエメットを知ってるの?」

「ウン、コノ前の休みの時にハイリンクして会ったヨ。
二人のベクトルは全く違うケド、危険な感じダヨネー。」

「アノ連中は全てにおいて、ワタクシ達の気分を害シマシタ。
唯一の救いハ、バトルがソレナリに楽しめた事デショウネ。」

バトルの話しになった途端にここの黒ボス達の目つきが変わった。
やっぱりあれなのか?バトル狂なのは共通事項なのか?
そんな事を考えていたら、が傍にきて俺の袖を引っ張った。

「課長、ハイリンクってあのハイリンク?
だったら、うちらがする事って有り得ないんじゃないのかな?
えっと、ここのギアステの最高責任者は…駅長さんでしたっけ?
こっちには施設設備保全管理課ってありますか?」

質問を向けられた駅長がすぐに首を振る。

「いえ、当施設にはその様な部署は存在しません。
ですが、その部署の役割や業務内容には興味がありますね。
色々と聞きたい事や確認したい事がお互いにあるでしょうから
ここではなんですし、場所を変えてゆっくり話を致しましょうか。」

そう言って駅長達は俺等を促して部屋を出た。
一歩部屋を出ると、見慣れた光景ではあるが雰囲気が違う。
職員たちがこの集団を見て口を開けて驚いているが、仕方ないだろう。

「色んな所が同じだけど、やっぱり雰囲気が違う。
やっぱりボク達、ハイリンクしたのかな?でもなんだかそれも違う?」

「ハイリンクであれば、ハイルツリーに触れれば分かる事でございます。
、私達はこの話が終った後、そちらへ行ってもよろしいでしょうか?
あの地震?の後のギアステがどうなっているか、心配でございます。」

「えぇ、それは一向に構いません。戻れるのならすぐに戻るべきです。
インゴとエメット、お前達も一緒に行って確認してきた方が良い。」

俺の言葉に二人も頷いた。
まずは色々と確認して、それから今後の事を考えたほうが良いだろうな。