-海に降る星を捕まえる-

海に降る星を捕まえる



茹だる様な暑さも、夜にナレバいくらか和らぎ、

心地よい風が頬を撫でてゆきマス。

時々潮の香りが漂ってクルのは目的の場所がもう近くなった証デスネ



「インゴさん、波の音が聞こえてきたよー!」



海や星などの自然を好む恋人がワタクシの腕の中で嬉しそうにするのを

実際に見る事はコレが初めてとは情けないデスが、仕方アリマセン。



ワタクシと恋人のが出会ってから既に数年、ソノウチ実際に

会ったのはホンの数日間。それでも恋に落ちるには十分な時間デス。

その後、恋愛感情に疎く何処か他人と一線を引こうとする彼女の

パーソナルスペースに入り込む事に成功し、お互いが同じ気持ちに

至るまでにはワタクシ非常に苦労致しマシタ。

もう一度同じ事をヤレと言われたら問答無用で蹴りを喰らわせてヤリマス。

目的の場所まであと少しという所で、夜目の効くワタクシの

飛行タイプのポケモンに指示をだして地上へ降り立ちマシタ。



「風が少し強くなって来ましたガ、寒くはアリマセンカ?」



そう言って彼女を抱く腕の力を少し強めれば、わずかに身体が

強ばってイキマス。ワタクシの恋人は恥ずかしがり屋デスネ。

額に軽く唇を落とせば。離れようと身じろぎをする始末デス。

まァ、こうして身体を寄せ合うようになったのはつい最近

それもホンの少し前の事だから仕方がないとは思いマス。



ずっと遠距離での付き合いで、例え何日か仕事が休みに

ナッタとしても会いに行ける距離では無かったワタクシ達が

こうして一緒にいるのは、ヒトエにに彼女が1ヶ月程

仕事を離れる事が出来たからなのデス。

その事を知ったワタクシはすぐに彼女をこちらに呼びマシタ。

そして、彼女が予約していたホテルをキャンセルして、

ワタクシの家に連れてきたのでゴザイマス。

えぇ、勿論 今マデ会えなかった分、色々なモノを一気に飛び越え

名実共に恋人と呼べる2人になりましたガ?

当たり前デショウ。愛する人がそばにいるのにナニもしないなど

ワタクシには考えられない事でゴザイマス。



腕の力を緩めれば、は身体を離して数歩先を歩き出しマシタ

黒髪が闇に溶け、その身体までもが闇に溶けてしまうのデハと

訳もなく不安に駆られてしまいマス。ワタクシらしく無いデスネ。



「足元が暗いので気をつけてクダサイ。」



そう言って腕を差し伸べると、恥ずかしそうではゴザイマスガ

そっと、自分の手を絡ませてキマス。

そのまま、ゆっくりと歩き出せばやがて目の前に海と星空が

一面に広がりマシタ。



「うわぁ!すっごい綺麗、ほら、星に手が届きそうだよ。」



防波堤に両手をつけて、身体を前傾させて海を見つめる彼女の

その視線の先に一筋の光が空から海へと流れマシタ。



「今日は名前は忘れマシタが神話にもなった伝説の英雄の名前を

冠した星座の流星群が見れるのでゴザイマス。」



ワタクシが海を指させば、またひとつ光が海面に向かって流れマシタ。



「こっちでも、そんな流星群があったんだー。私、生で流れ星って

見たことがないから凄く嬉しい。連れてきてくれてありがとう!」



オブシディアンの様なその瞳を更に輝かせて空を見つめる様子は

まるで子供の様で、見ているコチラも笑顔になってしまいマス。

ワタクシの冷め切った心を暖かくできるのはやはりだけデス。



「喜んでもらエテ、ワタクシも連れてきて良かったデス。

今から1時間程が丁度流星群のピークらしいデスヨ?」



ポケットからタバコを出して咥えれば、すっと横から手が伸びて

ライターで火をつけてくれました。顔を寄せてタバコに火を灯し

一息つけば、横でも同様にタバコに火をつけマス。



「携帯灰皿、ここに置いておくね。満点の星空の下での一服なんて

凄い贅沢だよね。ん〜幸せ!」


の幸せは随分と小さいのデスネ?」



ワタクシがからかう様に言うと、彼女は指をピッピの様に横に振りマス



「小さな幸せでもいくつも集まれば大きな幸せになるんです!

むしろ、私はそういう幸せの方が大切で愛おしく感じます。」



「そう言うモノでショウカ?」



「そう言うモノなんですよ?」



どちらからともなくクスクスと笑い合うこの感覚…

バトルの時の高揚感とは違う…穏やかで、優しい感覚をなんと呼べば

良いノカ、ワタクシは知りマセン。

ただ、この様な時間がずっと続いて欲しいのデス。

きっと毎日が充実して、素晴らしいものになるでショウ。



は防波堤に腰掛けて紫煙を燻らせながら海を見続けてオリマス。

ワタクシもその横に座り海面を見つめマス。

空の一部を指差してミルキーウェイかな?と問いかける彼女に

曖昧な答えを返せば、そっかとだけ呟いて再び夜空を見つめてマス。

流れ星の数は先程より多くなり、まるで海に星が降っている様デス。



「まるで手を伸ばせば掴めそうだよねー。」



「おや、には珍しくロマンティックな事を言いマスね?」



海へと流れる星を掴もうとする様に前に差し出された彼女の手に

自分の手を重ね合わせます。



「二人一緒ナラ、掴むことも出来るかもしれませんヨ?」



「流星群の欠片なら、ドラゴンタイプに使えば更なる進化とか

しちゃいそうだね!私のリザードンを更に強くしたりとか?」



前言撤回致しマス。彼女はムードクラッシャーでゴザイマシタ。

しかし、それも面白そうデスネ。ワタクシのオノノクスも更なる

進化が出来るのなら是非見て見たいものデス。

しかし、ここで流されてはダメなのでゴザイマス。



「ドラゴンタイプの進化は難しくても他であれバ可能かもしれまセン

何でしたら、ワタクシと試してみまセンカ?」



ワタクシが差し出した手に向かってタイミングよく星が流れてキテ

掴む仕草で握り締めた後、彼女の前に差し出して手を開きマス。



「インゴさん…これって…」



が言葉を詰まらせマシタ。いくら鈍いと言われていても

このリングの意味するモノ位は察することは出来るはずデス。



「流れ星の欠片ではゴザイマセンが、の誕生石の横に、

ワタクシの瞳と同じ色のブルーダイヤをあしらったモノでゴザイマス。

を表すモノ全てにワタクシは関わりたいのデス。

ワタクシの腕の中で、ワタクシの色に染め、ヒトツに溶け合いタイ。」



彼女の左手を取り、その薬指の根元に口づけを落とせば

わずかにソノ華奢な身体が身じろぎしマシタ。



「ここ数日、と共に生活して、痛感致しマシタ。

ワタクシ、貴女無しでの生活ナド、もう無理でゴザイマス。

どうぞ、このままワタクシの傍にいてクダサイ。」



リングを有るべき場所に通して、ワタクシはを抱きしめマス。



「ワタクシの伴侶として、生涯を共にシナサイ。」



「そこで命令形を使うんだ?インゴさん」



耳元で囁けば、くすぐったそうに肩を竦めて彼女が笑いマス。

命令?イイエ、これはお願いデス。強制的ではゴザイマスけれど。



「返事は、ハイかイエスしか受け付けまセン。

もう、アチラに戻られる事もさせる気はありませんノデ」



「いや、それは無理だって!」



彼女の仕事は確かに責任のあるモノでゴザイマスが、

ワタクシがその辺を何も考えていないとでも思っていたのでショウカ?



「先日、の職場に連絡を取りマシタ。全て話しマシタら。

そういう事ならとご理解いただけマシタよ?」



後日、彼女の退職手続きの書類が郵送される事を説明すれば

ガックリと力を抜いて、私に身体を預けてきマシタ。

触れるだけの口付けの後にしっかりと視線を合わせるように

ワタクシはの頬に手を添えマシタ。



「小さな幸せを積み重ねて、共に大きな幸せにしていきましょう。

と一緒ならソレが出来るとはっきり言えマス。」



「流れ星を捕まえるつもりが、逆にインゴさんに捕まっちゃったなぁ」



「出会った時からワタクシ、逃がすつもりはありませんデシタが?」



少し長めの口付けの後にはワタクシから視線を外さずに

ニヤリと挑戦的な笑みを浮かべました。



「幸せにしてね? なーんて可愛らしい事は言わないよ?

言いたい事は、はっきり言うし。何かあれば拳で対抗してやるからね?

それでも良いなら一緒に幸せになろうよ。」


ワタクシに向かって拳を突き出すとは本当に貴女はマジ男前デスネ。

良いデショウ、その挑戦、一生かけて受けて立ちマス!

彼女の拳にワタクシの拳を軽く合わせ、笑い合えば

ワタクシ達を祝福するかの様に更に多くの星が海へ降りマス。



星であれば消えてしまうでしょうガ、ワタクシの元へ落ちた…

いえ、落とした貴女を決して手放さないと、この空と海に誓いまショウ。




  後書き
先日、プチ旅行中に遭遇したペルセウス座流星群からのネタでございます。
お相手が長編の女夢主1に似てるけど違う人、このインゴさんも同じくです(笑)