キリ番18000. -童心-

キリ番18000.

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  童心  



雲ひとつないイッシュの空の下、にぎやかな子供たちの声が聞こえる。
周りを見れば家族連れが多いけど、それ以外にも結構人がいてびっくりした。

「懐かしゅうございますねぇ、最後にここに来たのはいつでしたか…」

「うーん、たぶんジム戦の旅に出る前。家族で来たのが最後だと思う。
アトラクションとか変わってるけど、雰囲気は昔のまま。懐かしい!」

ここはライモンシティから一番近い遊園地!言い出しっぺはボクとノボリ。
達がこっちの世界で遊園地に行った事がないって言ったから。
家族以外と来たのはボク達も初めてだけど、それでも皆で一緒に遊べるんだって
思っただけでも年甲斐もなくワクワクしてる。それはノボリも同じみたい。

それぞれに乗ってきたアーケオスとサザンドラをボールに戻してたら
後をついてきた皆も到着したみたい。

「おー、思ったより人が多いな。」

「家族連れが多くて場違い感が半端ねぇんだが、まぁ楽しんだモン勝ちか。」

「うわーい、こういう場所って来ただけでもワクワクするよね!」

パッと見ボク達よりも若く見える感じなと、今日はメガネも外して
こっちもスーツとネクタイじゃなく普段着っぽい感じのの後ろで
いつもまとめてある髪をおろしてこれまた若く見えるがつぶやく。
そーいうボク達も今日は場所が場所だから、かなりラフな格好をしてる。

達のいた世界とこちらの世界での違いはございますか?」

「いや、遊園地ってのはどこもこんな感じ…だったと思うぞ。
俺もガキの頃行ったきりで今の遊園地がどうなってるかは知らないがな。」

「それはボク達もおんなじ!あのね、そんな事言ってるより早く行こうよ。
こーいうのはさっきも言ってたけど楽しんだモン勝ちだと思う。」

チケット売り場でもらった場内地図を大人5人が取り囲んで見てるってのは
ちょっと恥ずかしいかなって思ったんだけど、3人はそんな事気にしてないっぽい
特にがテンション高くてボクとノボリはちょっと驚いた。

「なぁなぁ、これ!このジェットコースター乗りてぇ!」

「お、レトロ感凄ぇな。これは乗らないと駄目に決まってるだろう!」

「あぁ、これはイッシュの記念建造物にもなってるものでございます。
一般のとは一味違うスリルが味わえるのが特徴となっておりますので是非!」

「うん、ボクもお勧めする!でもは乗れないよね?」

「私に死ねと言ってるんですか?ここで保護者よろしく見守ってますんで
皆さんは私の事は気にせず思う存分はじけちゃってくださいですよー。」

「ですが一人を残すわけには…私が残ってご一緒いたします。」

お、おー?ノボリ珍しく積極的?ホントはこーいうアトラクションには
目がないはずなのにこれはノボリにやっと春が来るかもしんない?
と、思ったんだけど当人のが目の前で指と首を器用に横に振った。

「私は雰囲気を楽しんでるんで問題ないですよー。
うわーい、あのチュロスとポップコーンが私を呼んでいるかもしんない。
皆が乗り物を堪能してる間、私はあっちを堪能させてもらいまっす!」

そういって、は売り場の方に走って行っちゃった。
取り残されたノボリがなんだか可哀想だけど、こーいう時は声をかけるのもダメ
そっとしておいた方が良いってボクは知ってる!
そんなボク達をずっと向こうの方でが呼んでるから急いで合流した。

ジェットコースターを待つ列は結構長かったんだけどボク達はラッキーな事に
最前列とその後ろをキープする事が出来た。楽しむにはやっぱりここだよね!
ガタガタと大きな振動がカミツレのジムのジェットコースターとは違うんだって
思ったけどこれはこれで味わいがあるし、本当に別な意味でスリルがある!
あっという間にスタート地点に戻ってきて、コースターから降りたんだけど
先頭にのってたの顔色がなんだか悪い様な気がする。

「二人ともどーしたの?もしかしてジェットコースターダメだった?」

「あぁ、確かに顔色が悪いですね。大丈夫でございますか?」

「あ〜、大丈夫っていうのか…なぁ?」

両肩を上下させて、まるで緊張を解くような仕草をしてるの方へ
顔を向けると、こっちもおんなじ事をしていた。

「俺ももこういう絶叫系の乗り物は大好きだけど、これはダメだ。
よくこんな状態で走行させてるよな?!そのうち死人がでるんじゃね?!
カーブの時の横揺れなんざいつ脱線してもおかしくねぇだろう!!」

「それがこれの醍醐味でございます。私、乗車前に言いましたが?
このジェットコースターはイッシュの記念建造物に指定されていると。
それはイッシュで一番古いジェットコースターだからなのでございます。」

「うん、今のジェットコースターってどれも皆似たり寄ったり。
でもこれは木製で加速時の振動とか横Gのかかり方とか凄くグッとくるよね!」

ノボリと二人で顔を見合わせてうんうんって頷いていたらに溜息つかれた。
鉄オタは色々吹っ切れてるとか酷い!せめて鉄道の熱狂的ファンと言って欲しい
レールのついた乗り物はぜーんぶ大好き、愛すべき対象、これは絶対!!

「まぁ、これは十分堪能させてもらったからな。次は全うな方に乗りたいぞ。」

は…あぁ、アホ面でポップコーン食ってやがるし。
あの調子ならあと1回別なのに乗っても問題ねぇだろう。てめぇら、行くぞ。」

そう言われて今度は新しめのコースターの列にならんだ。
順番を待ってる間に説明をみるとうつ伏せ状態で乗るとかどーやって?
まぁ、乗り込んでわかったけど最初は立ってから体勢が変わった。そーだよね。
これは横Gとか振動を楽しむってよりはまるで自分で空を飛んでるような感じで
凄く面白かった!ボク達だけじゃくも満足したっぽい。

4人でが待ってる場所に戻ったら、なんだか荷物が増えてる。
大きな袋にポケモンのぬいぐるみがいっぱい入っててビックリした。

「おかえりなさいですよー、ちょっと暇なんであっちでやってる射的?なんかで
ちょっと遊ばせてもらっちゃいました。もう大量ゲットで大満足でっす!」

得意そうに胸を張って言うが子供っぽくって思わず笑っちゃった。
待ってる間退屈させてないか心配だったけど楽しんでるみたいで良かった。

「あ〜、は射的得意だったな。にしてもどんだけとったんだ。」

「俺ももそれなりだが、てめぇの射的の腕前は悔しいが認めてやる。
そのかわり、そこのツタージャのぬいぐるみよこしやがれ。」

へー、ってそんな特技?あったんだ。射的はノボリが得意なんだよね
ボクはクレー射撃みたいな動いてる的を撃つ方が得意!
大きな袋からにはミジュマル。にツタージャ、ノボリにはヒトモシ
それからボクにはバチュルのぬいぐるみをくれた。うん、可愛い!
街中でぬいぐるみを持ちながら歩いてたら笑われちゃうけどここは遊園地!
ボク達以外のお客さん達も似たような感じだから全然気にしなくてオッケー!

地図を見ながら(が地図をぐるぐる回し始めたからが取り上げた)
今度はメリーゴーランドに行ったんだけど、これもは駄目だった。
よくよく考えたら、遊園地ってが楽しめるのがほとんど無い。
それはノボリも思ったみたいで達に聞いていたんだけど。

「あぁ、あいつは雰囲気だけでも楽しめるから気にすんな。」

「飲まずに飲み会にも必ず参加して酔っ払いそっちのけではじけやがるし。
あいつなりの楽しみ方ってのがあるみてぇだぜ?」

言われてのいる場所をみたら満面の笑顔だった。
ボク達が乗ってる所を手を振りながらライブキャスターで撮ったりして
その顔がホントに楽しそうだからそんなに気にしなくても良いのかな?

「ちょっと小腹が空いてきたし、時間も飯時だから何か食うか。」

がライブキャスターの時計を見る。ポップコーンとか口にしてたけど
確かに色々見るのに結構歩いたし喉も乾いてきたかもしんない。

「でしたらビーチの方に行って休憩いたしましょう。」

「このビーチ、ライモンシティのホットドッグ早食い大会の会場になる場所。
飲食コーナーもそれなりにあるから丁度良いかもしんない。」

「あー、整備班の人が毎年参加してるって言ってたやつですよね?
今度その大会があったら見てみたいなー。」

が参加すれば優勝間違いないんじゃないか?」

「忘れたのか、俺は早食いは得意じゃねぇ。時間関係ねぇなら負けねぇがな。」

ビーチは流石にちょっと泳ぐには早いから人もまばらだった。
でもそんな事よりも問題はこっち!

「あのね、どーしてこんなにホットドッグ山積みにしてるの?」

「貴方達まさか今ここで大会を再現するつもりではございませんよね?」

買い出しを3人に任せたボク達が悪かった!
目の前にはベーグルとかハンバーガーとか飲み物の他にホットドッグの山
こんだけの量食べれるわけない!ってノボリと抗議したんだけど。

「「「ホットドッグは飲み物((だろ))(ですよ)?」」」

その言葉通り3人はまるで飲んでるみたいに食べ始めて、あっという間に
山積みにしてたホットドッグを全部食べちゃった!

「私、見ているだけでお腹いっぱいでございます。」

「うん、ボクも。」

エビとアボカドのベーグルを口にしながらノボリが言うけど、その通り。
ボクもそんな感じで溜息をつきながらレモネードを飲んでた。
は次はポテトを、はダブルのアイスクリームを食べ始めてて
これだけの食事が体のどこに収まってるんだろ?生命の神秘って凄い。

お腹も胸もいっぱいになって、ボク達は遊園地巡りを再開した。
遊園地っていったら、ジェットコースターもだけどこれも外せないよね!

「ねぇ、これなら皆で一緒に入れる。」

ボクが指差したのはホラーハウス。怖いけど面白いよね!
それに異議を唱えたのはノボリと。そーいえばノボリは駄目だった。

「なんだノボリ、こんな作りもんが怖いのか?」

「怖いというよりも苦手なのでございます。
こういった場所は…その…見たくないものまで視てしまいますので。」

「リアルだけで十分でっす。再起不能で明日の仕事にひびくと嫌だし?
つーワケでノボリさん、うちらはあっちのカエル飛ばしして遊びましょう!」

視えるとかボクにはよくわかんないけど、そーいうなら仕方がない?
それじゃってボクとで中に入った。
だけどここで問題発生!が使い物にならなくなりそーかもしんない。

、大丈夫?」

「…だいじょばない。ホラーって怖いって事だよな?
これはホラーじゃないだろう!グロとか聞いてないぞ、勘弁してくれ…。」

ホラーハウスはモンスターもそうだけど、スプラッターだったりする。
それが当たり前だと思ってたんだけど、達の世界じゃ違うみたい。
途中でとうとうしゃがみこんじゃったの背中をさすってあげてたら
呆れたようなの溜息が聞こえたけど、誰でも苦手なものってあるはず。

はこーいうの平気なの?」

「俺か?俺はほら、救急現場で嫌って程診てるから慣れたんだよ。
、いつまでもここにいたって仕方ねぇだろ。さっさと立って行くぞ。」

の肩を借りるようには歩き始めたんだけど、周りの人形とか見て
思い切り顔をしかめてそっぽむいちゃった。ホントに苦手なんだ。

『グオォオオオオー!!』

雄たけびが聞こえたと思ったらいきなり目の前に血だらけのゾンビが出てきた。
凄くビックリして叫びそうになったんだけど、次の瞬間それは悲鳴になった。

「ぎゃー!、何て事するのーっ!!」

「ばっ、てめぇが本気出したら死人がでちまうだろう!!」

「す、すまんっ!つい条件反射で…」

が今にも襲い掛かろうとしてたゾンビ(役の中の人)を投げ飛ばした!
投げ飛ばされたゾンビ()はうっ、とか言ったあと動かなくなったしー!!
が慌てて駆け寄って診察?してるけど、は遠くに離れて見てるだけ。

「とりあえず外傷はなさそうだ。ショックで気を失ったんだろう。
てめぇはそんな所に突っ立ってないで手を貸しやがれ!外に運ぶぞ。」

「あ、あぁ…すまん。」

二人の間にそのゾンビ()をはさんでボクが先導して外に出る。
出口にいたスタッフさんがビックリしてたけど仕方がないかもしんない。
事情を説明してたら、ゾンビ()が目を覚ましたから3人で謝った。
こーいう事はたまにあるみたい、怪我もしてないから大丈夫って言ってた。
スタッフルームから出てきたボク達にノボリとが駆け寄って来る。
どーしたのかって言われたから事情を説明したら大笑いしちゃった。

「何ていうかさ…スタッフの人ご愁傷さまって感じ?うはは!」

「くっ…ふふっ、、その様に笑ってはが可哀想でございますっ…
ですが、にも苦手があったのでございますねぇ…っ!」

「…何とでも言えばいい、笑えばいい。だがな、俺は金輪際、絶対に
こっちの世界じゃホラーハウスには入らないからな!!」

なんだかいつもは一番お兄ちゃんっぽいが今日はすごく子供っぽい。
それは遊園地って場所のせいなのかもしんない。
ベンチに座ってぐったりしてるだけど、次はどこ行く?とか聞いてる
大笑いしてたも呆れてたも地図を見ながら色々話し込んでる。
勿論、ボクもノボリもそれに付き合う。一緒に楽しまなくっちゃ!

結局ほとんどのアトラクションを制覇しちゃったとかすごいかもしんない。
流石にちょっと疲れたし、そろそろ戻っていつものお店でご飯でもってなった。

「なぁ、最後にアレ乗ろうぜ。」

が指差したのは観覧車。最後の締めくくりには良いかもしんない。
誰も反対することなく、ボク達は乗り込むことに決めた。

「この観覧車は左右に揺れる籠と、普通の籠がございます。」

達は…うん、揺れる方だよね、知ってた!
んじゃ、はボク達と一緒に普通のやつに乗ろう!」

それぞれ二手に分かれて乗り込む。
だんだん上に登って視界が広がって街並みが遠くまで良く見える。

「お二人とも、今日はありがとうございました。
うちらだけじゃ、いくら来た事がなくたって来てなかったと思います。」

がなんだかすごくあらたまって頭を下げる。慌てて顔を上げさせたら
すっごく真面目な顔をしててもっと慌てちゃった。

「ずっとこっちの世界ではミッションとかジム巡りとか?
その間に仕事をしたり、は学校に通いながらの仕事を手伝ったり
結構生きる事に必死で、こうやって楽しむ余裕がなかったんですよ。
ほら、うちらは中身は大人でも外見は子供で親とか保護者もいないですし?
例えお金はあっても、色々と社会的な面で大変だったんですよねー。」

「確かこちらの世界にいらした時は外見はローティーン位でしたか?」

射的でとったぬいぐるみを抱きしめながら、どこか遠くを見る顔が
言葉通りに大変だったんだなーってのがボク達にも伝わってくる。
平行してる達のいる場所に手を振りながら、が頷いた。

「アルセウス達がいくらうまくやってくれたって、色々問題はあるわけで
仕事をするにしても、専門的な大学に進むにしても色々大変でした。
だからこうやって楽しむって事なんてホント全然なかったんです。
今更感が半端ないですけど、やっと人並みになれたのかな?って…
それはノボリさんやクダリさんがと出会ってくれたからですよね。
本当に色々とありがとうございます。」

そんな真面目に言われても困るかもしんない。
ノボリを見ればなんて声をかければ良いかわかんないって顔して困ってる。
こーいう時は思った事を言えば良いと思う。

「あのね、ボク達は皆で楽しみたかったから誘っただけ。
色々大変だったけど、今は違うよね?それなら昔の分もいっぱい楽しまなきゃ!
後ね、ボク達だってと出会ってなきゃ今のボク達じゃなかった。
きっと今でも色々拗らせちゃって大変だったと思う。
だからボク達も皆に会えてすっごく幸せ。達も同じ気持ちなら嬉しい。」

「えぇ、出会いは偶然でも友人として今ある姿は必然だったのでございます。
ですからその様に固く考えないでくださいまし。
そもそも、私達はその様な間柄ではございませんでしょう?」

の手をそれぞれに握ってニッコリ笑えば、も笑った。
うん、どんな時でもニッコリスマイルが一番!
ぐるっと回って観覧車を降りれば後は帰るだけ。ちょっと寂しいかもしんない。

「まじで今日は楽しかった!ノボリとクダリ、ありがとな!」

「次はちゃんとっちも連れてこようよ。」

は良いがが来るとめんどくせぇ事になるんじゃねぇのか?」

「あはは、それは言えるかもしんない!」

「ふふっ、それもまた良しでございます。」

長い付き合いじゃないけど、一番の友達に喜んでもらえて嬉しい。
こーいう楽しい事ならいつでも大歓迎!もっとこーいう時間が増えれば良いな。


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