三章・指差確認準備中! 番外編 -求めて、探して、叩き続けろ!-

三章・指差確認準備中! 番外編

求めて、探して、叩き続けろ!



が出向先のユノーヴァから戻ってきて

からは何の連絡もない事にやきもきしながら日々を過ごしていたある日

がウィスキーを手土産に訪ねてまいりました。

クダリがと一緒に甘いもの巡りに行ってる時なのは偶然ではないでしょう。



「ノボリ、お前最近なんだか色々悩んでるだろ?」



「…には隠せませんね。」



グラスと氷、おいしい水の入ったボトルをテーブルに置いてから

軽めの肴を作り戻れば、既にグラスには水割りが用意されておりました。

何に乾杯するワケでもございませんが、グラスをあわせてそれを流し込めば

普段自分が作るよりも強い刺激が喉に広がります。

は何も聞こうとはしません。これは私から話すのを待ってるのでしょう。



「皆に心配をかけてしまって申し訳ありません。」



「皆って言っても気が付いてるのなんざ、俺ととクダリ位だ。

鉄面皮もそこまでくれば大したモンだがな、それだと疲れちまうだろう?」



「貴方達と出会ってからは鉄面皮を装う暇もございませんでしたよ?」



本当に彼等と知り合ってからは自分を隠す事も少なくなりましたね。

ありのままの自分を受け止めてくれる相手がいるのは幸せな事でございます。

だからこそ、私は戸惑い不安になってしまうのかもしれません。



「別にそれでも良いんじゃないのか?仕事中は流石に拙いだろうが

それ以外なら、それがノボリなんだから問題はないと思うぞ。

お前はため込むと暴走しそうだしな、この際だ、ぶちまけちまえよ。」



「……それはできません。今ここで全てをぶちまけてしまえば

私は自分を抑える事は不可能でございます。それは色々問題が有りすぎです。

今はまだその時ではありません…そう言えばならわかってくれますよね?」



悶々と考えていた事を湾曲してではありますが口に出して気が付きました。

私はこのままで居ようとは思ってない、いずれはきちんとケリをつけたいのだと

あぁ…つまりはそういう事なのでございますね。

何とも厄介な感情ではございますが、決して嫌なものでもないのが笑えます。

自分の感情と一緒に、グラスに残った水割りを一気に飲んで苦笑いをすれば

は困った様に私を見て同じ様に苦笑いをします。



「それについては俺は何も言えない…すまないな。」



「謝らないでくださいまし。私が自分の意志で望んだ事でございます。

友人の貴方達の手助けをしたいのです、それは今も変わっておりませんよ?

私事で全てを台無しにしてしまう方が恐ろしいのです。

そんな事をする位なら、全てが終わるまで待つ方がずっとマシでございます。」



「そっか…ノボリがそう考えてるなら、俺はもう何も言わない。

言っておくがかなりの難関が山積みだからな、それでも…良いんだな?」



返事はせずに笑って見せれば、は柔らかく笑い私の頭を撫でました。

良い大人にする事ではないその行為ですが、今の私にはどんな言葉より

ずっと有難いと思ってしまいました。


とのやり取りがあった後、が出向から戻ってくる日。

涙が頬に残っている彼女を見て、クダリと二人で慌てました。

話を聞けば感動的な別れをしたとか…それは非常に気になりましたが

取り敢えず無事に彼女が戻って来た事を喜ぶべきでしょうね。


戻ってきてからのは表情も雰囲気もとても柔らかくなっていて

そこまでさせた従兄弟達が羨ましく、そして妬ましいとさえ思えて…

あぁ、この手の感情は本当に厄介でございますね。

彼女にとってはこの変化は良い事だと自分に言い聞かせるしか無いでしょう。


そしてインゴの変化に驚きました。がその切欠を作ったのだと

お互いに何かを認め合ったのではと考えていたのですが

それが事実だとわかったのはポケモン協会との揉め事があった時で

インゴも私と同じ感情を持っていたのです。

それだけではなく、私の気持ちも悟られていたとは…やはり侮れませんね。

ですが今はまだ時期尚早でそれを確認して、ある意味手を組む事にしました。

全てが終わってから…これが私とインゴが出した結論でございます。


その後はごく普通の日々で、その中で変わったといえば



「失礼しまっす!黒ボス、この書類は課長から急いで検討して欲しいって

預かってますのでお願いします。うわーい、今日は凄い書類ですねー。」



「色んな所から新規の企画とか、報告書とかが一気にきた!

逃げると泊まらなきゃなんないから頑張る…けど、疲れたかもしんない。」



「えぇ、急ぎではありませんが早めの方が良いと言われておりますし?

幸か不幸かトレインの方が落ち着いておりますので、頑張りますとも!」



私とクダリのデスクの上に置かれた書類について3人で笑った後に



「この分だと結構遅くなりそうですよねー。

もし良かったら晩ご飯作っておきますから食べに来ませんか?」



「え?良いの?!」



「良いですよー、頑張ったご褒美に好きな物作っちゃいますよん?」



「帰ってから食事の支度をする気力は、この調子ではございませんねぇ…

、お言葉に甘えても宜しいでしょうか?」



「ほいほーい、んじゃノボリさんにはサーモンの照り焼きを

クダリさんには温泉卵のスープを用意しておきますんで、頑張って下さいね?」



この様に自分から他人と関わろうとする姿勢はつい最近になってからで

も彼女の変化を自分の事の様に喜んでおり、勿論私達もです。



のご飯は美味しいから楽しみ!うん、やる気出てきた!!」



「ふふっ、そうでございますね。頑張って早めに終わらせましょう。」



食べ物につられるのも何でございますが、やる気が出たのは確かで

就業時間を少々過ぎた頃には全ての書類に目を通し終わりました。


一度家に帰ってから、シャワーを浴び、着替えて二人で訪れれば

が笑顔で迎え入れてくださいます。



「お帰りなさい、お仕事お疲れ様でした!ご飯できてますよー」



「やった!ボクもうお腹ペコペコ!!」



「ただ今戻りました。も食事の支度をありがとうございます。」



は先に食事を終えた様で、私とクダリが食べるのを笑いながら見ており

その姿が遠い日の母を思い出させます。

彼女もこうやって父や私達、そしてインゴ達が食べるのを見ておりました。

柔らかな部屋の空気に触れ、貴女の笑顔を見ただけで疲れがとれますよ。と

いつの日かそう言える日が来れば…いえ、来る様にしたいですね。


食事を終え、クダリが食器を洗うと宣言したので彼に任せて

私とはタバコを吸う為にバルコニーへ出ました。



「美味しい食事をありがとうございました。」



「どーいたしましてですよー。お二人共大変ですからね。友達としては

ちょっとでも助けになればって、しただけなんですから。」



気にしないでくださいねと言って笑うの髪を夜風が柔らかく揺らします

その髪に触れたい、その肩を抱き寄せたい、そして……



「ノボリさん?」



「あぁ…失礼しました。少々考え事をしておりました。」



「なんだか怖い顔してましたけど、何か問題が起きてたりとか?」



「…問題といえばそうなのでしょうかねぇ…

、ひとつの願いが叶って幸せだと満足していても、暫くしてから

もっと幸せが欲しいと願うのはやはり欲張りだと思いますか?」



自分の考えていた事を誤魔化して、タバコに火をつけながら言葉を続けます。

もっともっとと望んでしまうこの感情は紛れもない本心なのです。

それを、言葉を濁してはおりますが貴女に伝えて認めて欲しいと思ってしまう。

私はとても狡い男なのかもしれませんね。



「うーん…私はよくわかんないですけど。今の幸せがずっと続けば良いなって

そう思う事は最近けっこうあったりしますねー。

それって贅沢だし欲張りだと思うけど、自分の正直な気持ちだったりするし?

だからノボリさんがそう思うのも当たり前なんじゃないのかな…」



「貴女はもっと幸せになっても良いし、それを願っても良いと思いますよ?」



「そう…なんでしょうか?でも今以上の幸せってピンと来ないなー。

大好きなポケモンや人達に囲まれて、好きな仕事をして…うん、幸せすぎ!」



それが普通なのに、幸せだと感じる程の日々なのですね。

それ以前の貴女はどれだけ辛い日々を送っていたのでしょうか?

あぁ、無性に彼女を抱きしめたい。そしてもっと沢山幸せにして差し上げたい!



…貴女にもっと沢山の幸せの訪れる事を願います。」



そのままそっと抱き寄せてハグをすれば、一瞬身体が強ばります。

それでも、私は抱きしめる腕を緩める気にはなりませんでした。



「大切な貴女に沢山の幸せが来て欲しい、それを私にもさせて欲しいのです。

…大切な友人の幸せを願うのは間違いではございませんでしょう?」



「…ありがとうございます。それだけでもすっごく幸せですよ?」



腕の中で、が笑う気配がして、それだけでも私の心は震えます。

あぁ、私も今とても幸せでございます。



、キスをしてもよろしいでしょうか?」



「へ?」



「貴女はインゴやエメットにはキスを許しておりますよね?

ハグをしてキスをする習慣はここイッシュでも同様でございますよ?」



「いやいや、今更ってかどーしたんですか?

それにあれは二人に言っても仕方がないから諦めてなんですよ?」



「それがあの二人の常套手段でございます。」



私の突然の提案にすっかり動揺している様ですが、譲る気はございませんよ?

ふと視線を感じて窓際を見れば、クダリが腕を組んでニヤニヤしておりました。



「ボクもずっと思ってた!あの二人だけ狡い!

ボク達だっての友達なんだからね?だからお願い、ハグとキスさせて?」



「えぇ、そしてからのハグとキスもお願いいたします。

そちらでは馴染みがなかったのでしょうが、慣れてくださいまし。」



「あー、異文化交流がマジで辛い!つーか、ここにいるなら慣れなきゃだし?

わかりました、どーんとヤッチマイナー!ですよー。かかってこいやー!!」



私から離れた後で、は観念した様に私達に向かって両手を広げました。



「んじゃボクから!が大好きだよ、これからもよろしくね!!」



「ほいほーい、私もクダリさんが大好きさー!…これでオッケー?」



クダリからハグと頬へのキスを受け、同様に返せば。

クダリは嬉しそうにしてオッケーと言っての身体を離しました。



…貴女を大切に想っております。」



ハグをして滑らかな頬の…唇の近い場所へキスを落とすと



「…私もノボリさんも皆も大切に思ってます。」



ハグとキスを返した後、は恥ずかしー!と叫びながら部屋へ戻りました。



「ノボリ積極的!」



「…意思表示は大切でございます。クダリだって満更ではないでしょう?」



「…うん、ちょっと癖になるかもしんない。」



「ふふっ、そうでございますね。」



二人でキスを受けた頬に手を当てて思わず笑ってしまいました。

クダリにとってもは大切な存在なのでしょう。それでも私は構いません。


貴女をもっと見ていたい、私をもっと見て欲しい。それだけでは足りませんね

共に在り続ける方法を探して、障害があるのならぶち壊すまででございます!