納涼!地下鉄の怪談 2015
カラリとした天候が多いイッシュじゃ珍しい蒸し暑い日が何日か続いた。
暑さに弱いの作業効率が右肩下がりになった頃にやらかした書類の不備に
俺がアイツをの許可をもらう前に仮眠室(クーラー完備)に放り込んだ夜
未だに終わりが見えてこない書類にイラついて、普段はしない煙草休憩する為
部署を出て歩いていたら、当直室から何人かの話し声が聞こえてきた。
「ソノ話ハ聞イタヨー、ッテカ、ソロソロネタ切レ?」
「何回聞いても怖いじゃないですかー!これから巡回あるんですよ?!
嫌ですよ、気がついたら知らない場所をグルグル歩いてたとかっ!!」
「あのね、それはカズマサがいっつもしてる事。今更だと思う。」
「そうでございますね、そもそもその手の怪談噺はここギアステには無く
あくまでも別地方での話でございますし…」
夏期休暇の時にはバトルトレインの職員が一般地下鉄の当直に駆り出されるって
が言ってたが、今年はこの面子(ノボリ、クダリ、カズマサ、キャメロン)か
んで、真夏の夜の恒例行事っつう怪談噺の真っ最中ってか?
どうせ書類はまだ終わらねぇんだし、多少休憩してもバチは当たらねぇだろうから
一旦自販機でサイコソーダを5本買ってから、当直室のドアをノックした。
途端にギャー!という叫び声が上がったのには俺が驚いたんだがな?
「毎年恒例の当直だって聞いてたから差し入れに来たんだけどね…」
「、チョット空気読ンデヨ!オレ達今怖イ話シテタンダッテバ!!」
「ううっ、ちょっと魂が口から出ちゃいました!こ、怖かった…」
「そう言えば前にも似た様な感じで来た事があったっけ?
あの後巡回すっごく怖かった!シャンデラ連れてなかったら終わんなかった!」
「去年はが…いえ、なんでもございません。
まぁ長年この当直をしていれば、怖い話も出尽くしてネタ切れでございますし?
そうだ、は何かご存知ありませんか?あったらお聞かせくださいまし。」
それぞれがサイコソーダを受け取り飲みながら、俺を見てるんだがそんな話…
「あ、そう言えばあると言えばあるかな?」
あいつらが絡んで…っつうか、がいたからこその話だが
確かにアレは見えない俺でも薄ら寒い思いをしたからもってこいかもしれない。
勧められるまま、パイプチェアーに座ってサイコソーダを一口飲んで
あの日の事を思い出しながら、俺は話を始めた。
「そもそも俺には霊感っていうのかい?そういうのが無いんだよ。
良くも悪くもわからない、世の中わからない事を気にしてたらやってられないし
そういうのは俺もも無視っていうか考えないってのが通常なんだけどね
が視えるからそういう存在を否定してるわけでもないんだ。」
の名前があがると、ノボリとクダリがあぁって顔をした。
が昔地下鉄で作業してた時の話を聞いたんだろう、キャメロンもカズマサも
神妙な顔をして、小さく頷いた。そういう意味でアイツはネタに尽きねぇな。
「カントーとかあっちの地方には盆休みっていう夏期休暇があってね
盆って言うのは死んだ人があの世からこの世へ里帰りする期間を言うんだ。
そんなに信仰心のあるわけじゃない奴でも、その時期は故人の墓参りをしたり
大抵の公共機関は何日か休みになる事が多いんだよね。
だからそういう機関はじつはその時期に施設のメンテナンスをよくやるんだ。
日数的にそうそうかからない仕事が殆どなんだけど、場所が色々だったりする
俺ももその時はの会社の職員として席をおいていたから
その手の依頼ってのが結構あちこちからあって、休み返上で仕事してたよ。
特にシンオウ地方って無駄に広いからね、移動の方が時間がかかる場所とか?
そういうのも結構あって泊りがけになるんだけど、そういう時期っていうのは
割とどこのホテル系列も満室だし、盆料金っていって宿泊費が高いんだ。
そういうのもあって、俺達はラブホテル…こっちでいう所のモーテルなのかな?
そこを利用する事が多かったんだ。風呂と寝る場所さえあればそれで良いし
男2人に女1人で割増料金取られたとしても宿泊費用はかなり安いからね。」
あの時を思い出せば、アレは起こるべくして起きたと今なら言える。
むしろあれだけのテンプレを貼り付けた様な場所を知らなかった俺達が悪い。
逆に考えれば俺達…いや、が呼ばれてたのかもしれねぇな
「その場所は俺達が住んでる場所から凄く遠くてね、早朝出かけて午後に到着
仕事が終わったのが夜になってしまった。次の日は休みだけど今から帰ると
家に着くのがどんなに頑張っても朝方になるから、泊まる事にしたんだ。
大抵どの街にもそういうホテルってのはあるし、何件か集まってるからね
1件位泊まれるはずだったのに、その日は全部満室で無理だったんだ。
それなら帰りながら、どこか空いてるホテルがあれば泊まろうって事になって
俺達は車を走らせてた。だけどなかなか見つからない。
そうしたら山道の途中にホテルの案内看板が見えてきたんだよ。
その場所は大抵が通過点みたいだったからそんな場所に泊まる奴なんていない
そう思って案内通り走らせたらわりと小綺麗なホテルが1件建ってたんだ。
仕事以外で移動でも疲れてたからね、もうそこで良いだろうって即決して
車を入れたら丁度1部屋空室のサインがあって俺達はそこに車を止めた。
こんな山の中で客なんてと思ったけど、旅行中のカップルが多かったんだろう
まぁ、無事に寝る場所確保できたからその部屋に入った。
中は別に変な感じってのかな?が何も言わなかったから大丈夫だった…
その時は俺もも思ってたんだよ。いつもなら風呂に入ってからも起きてる
がすぐに寝るわーって言った時点でおかしかったんだけどね
連日の仕事と移動で疲れが出たんだろうって思った俺達が馬鹿だった。」
溜息をついて、4人を見ればまださわりの部分しか話してねぇのに
なんだか顔がひきつってやがる。今からそれじゃこれからもたねぇぞ?
が眠いと行った時点でヤバかったんだよ。
「はね、そういうモノを寝る事でシャットアウトするんだよ。
だから心霊スポットと言われる場所に行くと途中で必ず寝てしまうんだ。
そして、絶対にその場所から離れるまで起きない。自衛手段だね。
その時も、ベッドに入った途端に眠り込んでいたのに気づくべきだった。
でも俺達は別に被害を受けた事が今までなかったから、気にしてなくてね
は風呂上がりにビールを飲んで、入口近くのソファーで。
俺は飲む気になれなくて、そのままベッドに潜り込んだ。
んで、眠ってからしばらくしたらが俺を起こしたんだよ。
『、ヤバイよ。ここにいたらうちら連れてかれる』ってな。
どこへ?とか思って目を開けたら、泣きそうになって周りを見回すアイツと
無数の足音が部屋中に響いてるんだよ。
は?って見たら、アイツはまだ寝てやがったんだが、あいつを囲むように
足音もしてる。それに部屋ん中が凄ぇ寒いんだ。真夏だぞ?クーラーは
俺達は嫌いだからつけてなかったのに、ポッポ肌立ちまくりだぞ?変だろ。」
異様なまでに寒い室内に響く大勢の足跡、姿は見えず声も聞こえないが確かに
この場所に何か…誰かが結構な人数でいる。これで俺も心霊体験デビューか?
って、現実逃避めいた考えが浮かんでたとしても仕方ねぇだろうよ。
飲みかけのサイコソーダを握り締めて怖イ怖イとブツブツ行ってるキャメロンや
両耳を抑えて聞か猿状態になってるカズマサ、ノボリとクダリはさっきから
抱き合ってでガタガタ震えてるし…こりゃ少々やりすぎたか?
だがここまで話しちまったんだからな、最後まで付き合ってもらおうじゃねぇか
「俺には足音しか聞こえなかったから、に何が視えるか聞いたんだよね
そうしたら、どう見ても絶対生きてない連中がゾロゾロと入口から入ってきて
俺達の周りをグルッと回ってから窓のある壁に向かって消えてるんだって。
まぁ、それだけだったら別に直接被害があるわけじゃないから放っとけって
言ったんだけど、どうやら連中は通り過ぎる時に俺達を連れて行こうとする
そんな仕草をしてるらしい、それもこの部屋を通る全員がだ。
マジで?と思った時に、俺の右手首が急に冷たくなってね、何だ?と思ったら
が慌てた様にその冷たくなった場所を思い切り叩いたんだ。
もうわかってると思うけど、それはその見えない奴の一人が俺の手を掴んだ…
つまりはそういう事なんだよね。もうこの状態で部屋にはいられないよね?
未だに何も知らないで幸せそうに寝てるを叩き起して、精算済ませたよ。
普通、宿泊予定で部屋に入ったのに急に出てくとしたら変だと思うだろう?
何か不都合がありましたかとか聞いてもおかしくないのに一切ないんだ。
入った時間が遅かったから宿泊料金で請求されて終わりだったんだけど
金なんてこの際どうでも良いってあの時は思ったよ。
その後はもうどこにも泊まりたくなくて、結局は夜通し車を走らせて
の家で3人で雑魚寝したよ。
後からそのホテルの名前で検索かけたら、出てくる出てくる色んな話が。
夜だから気がつかなかったけど、俺達の泊まった部屋の窓に面したすぐ近くが
墓地だったらしいよ?それと俺達が泊まった部屋で無理心中があったみたいだし
時期も時期だったから、あんな目にあったんだろうね…。」
この話はこれで終わりだと、すっかり温くなってしまったサイコソーダを飲む
キャメロンは元々白い顔を更に青白くしてガタガタと震えているし
カズマサはイッシュにお盆はないから大丈夫、大丈夫とずっとブツブツ言ってる
ノボリとクダリはギアステ周囲に墓地が無いかマップを見出す始末だ。
「ってか、がずっと寝てるとか逆に凄すぎるかもしんない。」
「そうでございますねぇ、ですがなぜでしょう、妙に納得できるというか…」
「あぁ、はイイ意味で鈍感なんだよ。だからなのか知らないけど
こういう現象には全く縁がない。俺は嫌な雰囲気は感じる程度…かな?
それでもが実況中継よろしくやってくれるから、良い気はしないけど。」
そりゃそうだろ、今俺のすぐ後ろに首の取れかけた女が凄ぇ恨めしそうに
俺の顔を見ながら一緒に行こうと言ってるなんて言われたら…な。
んで、そん時は確かに凄ぇ寒気がするんだから信じるしかねぇだろう。
曰く、は逆にそういうモンを寄せ付けねぇらしいしな。
ちょっと休憩のつもりが結構長く居座っちまったんで、仕事を再開しようと
パイプチェアーから立ち上がると同時に、当直室のドアが開いた。
「あー、やっぱりここにいたし!って、皆さん当直お疲れ様でっす!
…ってば自分の仕事終わったと思ったら帰っちゃったよ!
んで、さっきの書類は起こされたからやっておいたから帰ろ?」
「おう、済まねぇな。ってか、起こされたってにか?」
「うんにゃ、えっとね初めて見る人だった。なんだかボス達と色違いのコートを
黒と白の横縞で後ろの縦ラインが赤?のコートを着たお爺ちゃんっぽい人。
『娘さん、疲れてるなら今日はもう帰って休みなさい』って凄い優しい声でさー。
あの制服って見た事ないから一般の駅長さんなのかな?」
なんだ、残ってるのは俺達だけじゃなかったのか、それにしてもの野郎
俺達より先に帰るってどういうこったよ!マイペースなのも大概にしやがれ!
ちっ、と舌打ちしていたら、他の面子が不思議そうな顔をして首を傾げた。
「エ?ソンナ制服ナンテ見タ事無イヨ。」
「ですよね、それに今日は一般の方の職員は誰もいないはずです。」
「ちょっと待って…そのコートってボク知ってるかもしんない。」
「…私もでございますが、その方がこちらに見える事は有り得ません。」
「「 は?」」
未だに訳が分からねぇって顔してるキャメロンとカズマサがノボリを見てるが
当のノボリ…いや、クダリもだな、がさっきよりも青ざめた顔をして震えてる
ちょっと待て、俺はこの先てめぇらの話を聞きたくねぇぞ!
「…そのコートはここの、ギアステの初代駅長のみが着用しておりました。
そしてその方は既に他界されてるはずなのでございますが…」
「うん、ボク達もギアステ年間でしか見た事ない。その位昔の人。」
一瞬の沈黙の後、当直室に耳を塞ぎたくなるような叫び声が充満した。
つーか、こんなオチなんざいらねぇってんだよ!