2014 Just Marriage!
煌めく日差しに目を閉じる
夏は嫌いだ、夏の暑さはあの時を嫌でも思い出させやがる…。
「暑いー、溶けるぞー…」
午後休憩でボス達の執務室に入ってきたが、開口一番呟いた。
季節はもう初夏から盛夏へ移る…日差しが一日ごとに強くなってるしな。
「ギアステの夏用作業服着ようよ。見てるだけでも暑い!」
白ボスが、制帽とコートをハンガーに掛けてワイシャツの袖を捲る。
はソファーにグッタリともたれ掛かりながら上着を脱いだ。
こいつは元々暑さに極端に弱いから、たまったもんじゃねぇだろう。
「出来るんだったらしたいんですけどねー。
私の仕事はグラスウールを使ってて、細かなガラス片?そんなのが
結構服とか肌につきやすいんですよ。
んで、ついちゃうと痒いなんてもんじゃないんです。
だから、夏場でも長袖を着てツナギ着用当たり前!なんですよー。
つーか、寒い所出身の私に夏の暑さは大敵、マジ溶ける…」
「水分補給と栄養補給はしっかりしてくださいましね?
ですが、もも同じ様にシンオウのご出身のはずですが
全く普段と変わってない様でございますが?」
「寒い地方の連中が皆、夏が苦手なワケじゃないぞ?
俺はむしろ冬が苦手なんだよ。暖房のない場所での仕事とか
まともに手も動かなくなるからな、作業効率も落ちる。」
「俺はホウエンにいたからね。向こうの暑さは湿度も高くて
まるでサウナの様だったから、この位は全く問題ないよ。」
信じられないという両ボスにとが何か話してるが
俺はそれを聞きながら、目を閉じた。
この位の暑さでどうこう言っていたらあいつに怒られちまう
あいつはマグマの中で、皆を助けようと必死になっていたんだ。
『、こっちの夏はサウナみたい!』
『夏は好きよ!全ての命が煌めいて見えるじゃない?』
『結婚するなら6月よ?ジューンブライドに昔から憧れていたの!
がわたしを、わたしがを幸せにするのよ?』
あれからどの位経ったんだろうな。
あいつが生きていれば、今頃ガキの一人も生まれていただろう。
俺が父親?今となっては想像もつかねぇが、あの時は確かに夢を見ていた。
仕事から帰ってきて、赤ん坊を抱いて俺を迎えてくれるあいつの姿…。
隣に気配を感じて目を開ければ、ゴチルゼルが心配そうに俺を見ていた。
とんでもねぇ巻き添えを食らって、全身の半分以上、それも深い火傷の
あいつを助けようと必死になって、覚えるはずのないテレポートを使って
あいつと他の連中を俺の場所まで運んだこいつ…
結局あいつだけが救えなかった。何故だ?どうしてあいつが?
ほぼ助からないとわかってはいても、俺は…俺も奇跡を起こしたかった。
俺はゴチルゼルの願いを叶えてやれなかった。
そんな俺に、今でもまるであいつの代わりとでも言いたげに傍にいる。
その優しさがあいつとダブっちまって、時々泣き叫びたくなっちまう。
「…ちょっと気分転換に屋上に行ってくるよ。」
ダメだ、こんなんじゃこいつらに余計な心配をかけちまう。
コーヒーを片手に俺は執務室を出て、ゴチルゼルと一緒に屋上に向かった。
「…ねぇ、の様子がちょっと変だった。」
「えぇ、なんだか今にも泣き出しそうな?そんな風に見えたのですが…」
「あぁ、ボス逹は気にしないでください。時々あるんですよ。」
「…うん、きっと今頃ゴチルゼルちゃんを抱きしめながら
色々と考えてるんじゃないのかな?でも、もうちょっとしたら元に戻るから
その時はいつも通りに迎えてあげてくださいね?」
長い階段を登りきりドアを開ける。
すでに日差しは真夏そのもので、俺は思わず目を細めた。
空を見上げれば、飛行機雲が高層ビルの隙間から見える。
イッシュの夏は暑くても、どこか心地よさを感じちまう。
ひと目のつかない場所に移動して、俺は空を見上げた。
煌く太陽はまるであいつの様で、今にもどこかからあいつが出てきて
俺を見て笑いかけてくれる様な気がする。
『大好きよ、愛してる!』
今でもはっきりとあいつの全てを思い出せる。
あいつの笑った顔、怒った顔、泣きたいのに懸命に我慢する顔
俺の腕の中で幸せそうに眠っていた顔、そして……死に顔…。
俺はあいつの死を乗り越えてなんざいねぇ。
普段は記憶の一番深い部分に無理矢理蓋をして閉じ込めてるだけだ。
それでも、あいつへの想いは時々こうやって溢れて暴れだしちまう。。
立ってられなくなって、フェンスに持たれて座り込む。
誰もここに来なくて助かる、今の俺はとんでもなく無様だ。
「……」
隣にすわったゴチルゼルを俺はそっと抱きしめて目を閉じた。
ひでぇ高温に喉をやられたお前は、声を失っちまった。
あいつを失った時の悲しみ、怒り、慟哭を知ってるのはお前だけ。
どっちも大切な存在を失ったという連帯感からなのか
こいつはシンクロの特性じゃないにも関わらず、俺の気持ちを読む。
大切なマスターを救えなかった俺を恨んでも良かったのに
お前はあいつがいなくなって自由になってからも、俺の傍を離れなかった。
そういう優しさはあいつと同じで俺は凄ぇ救われてる。
ゴチルゼルの首にかけられたチェーンの先に手を伸ばせば
あの頃と変わらないリングが触れる。
あいつが付ける事の無かった結婚指輪、愛を誓うはずだった代物。
あいつに持たせた俺の指輪…今頃あいつはそれをどうしてるんだろうな。
「先の事はわからねぇが、愛してる。」
口付けてからリングを見れば、日差しを浴びて煌めいていた。
それが、なんだかあいつの笑った顔に俺には見えて笑っちまう。
夏は嫌いだが、イッシュの夏はあいつみたいで悪くねぇな…
そんな事を考えながら空を見上げて、また俺は目を閉じた。
番外編として、長編設定で主任さんが亡き婚約者を想う話をアップしました。
補足として主任さんはホウエンで知り合った、イッシュ出身の組織犯罪を担当する
国際警察に勤務していた女性と結婚の約束をしてましたが
悪の組織(どちらかはご想像にお任せします)絡みでその人を亡くしてしまいます。
瀕死の女性を助けようと、パートナーだったゴチルゼルが覚えるはずのない
テレポートをその時覚えて、救急医療現場に勤めていた主任さんの所にきました。
結果は主任さんの言葉通り、奇跡を起こせなかった…となります。
大切な人を亡くす悲しみは乗り越えられっこないんです。
普段は忘れていても、ふとした切欠にすごい勢いで溢れ出してしまいます。
嫌な思い出は消えて、楽しかった事や相手の良い所だけが美化されて残る。
ジャストマリッジではないけれど、主任さんにとってはそういう存在の人でした。
長編の番外編に入れようか迷いましたが、文を読み直してみたら
ジューンブライドについて書いてあったのでこちらにアップします。
こんな状態で、なかなか新しい恋をする事が出来るわけはありませんが
いつかはそんな主任さんをまるごと受け止めて、愛してくれる人が現れて欲しいですね。
- 2014.6.12 -