2013 中秋の名月
お月見泥棒
「お月見泥棒?泥棒良くない!ジュンサーさんに捕まっちゃう!」
恋人のクダリさんを我が家に招待して、ジョウト地方の風習を話せば
すごくビックリされちゃいました。
「捕まりませんよ、向こうの人たちは結構月を神聖視する事があって
子供達はその月からのお使いだと考えられてたそうなんですよ。
もちろんこの日、秋の真ん中の月の満月の日だけ許された事ですけどね。」
バルコニーに飾ったお供え団子から一つとって渡せば一口で食べちゃった。
結構喉が詰まりやすいから、飲み物も用意しておこうかな。
「あ、これ食感が面白くて美味しい!もっと頂戴。
んで、どうやって盗むの?面白そうだけど、結構大変だと思う。」
冷蔵庫からおいしい水を持ってきて渡せばお供えしてあるお団子を取って
クダリさんは美味しそうに口に入れた。気に入ってもらえて嬉しいな。
「えっとですね、釣竿みたいな長い棒の先に釘とか針金をつけて刺すんです。
お団子をお供えする方も縁側…平屋のベランダみたいな場所に盗み易い様に
考えて置くとか、ちゃんと工夫をしてたんですよ。」
私もお団子を取って口に入れた。
イッシュでは餡子もその原料の小豆も手に入らなくて、かぼちゃ餡にしたけど
結構上手に出来てるみたいで良かった。黄色はお月様の色だし良い感じ!
「いまでは、縁側がある家自体が少なくなってるんで、子供達は
“お月見下さい”とか“お月見泥棒ですー”なんて言ってお団子じゃなく
お菓子をもらいに家々を回る風習になってしまってる所もあるみたいです。」
3つ目のお団子を頬張りながらクダリさんは聞いていた。
あ、口の端に餡子がついてますよ。指でとったらその指を舐められちゃった!
クダリさんはいつものスマイルじゃなくてニヤリと笑ってるし恥ずかしい。
「お菓子をもらいに家々を回るなんてハロウィンみたい。
でも、棒を使って盗るの方が楽しそう!子供じゃなくてもやりたい!」
グレーの瞳をキラキラさせて子供みたいなクダリさんが可笑しくて
そして、棒を持って必死に取ろうとする姿を想像して笑っちゃった。
そういう所は子供っぽいですよね。
「お供えする団子は今では1月から12月迄の数の12個とか色々ですね。
このお団子は多く盗まれたほうが縁起…うーん、ラッキー?そんな感じで
良いんですよ。そしておいしいお団子をお供えしてある所だったら
夜になる前にお団子が全部なくなっちゃったりするんですって。」
「あはは!お月様、食べる前に無くなっちゃうなんて可哀想!
の話、すっごく面白くてボク大好き!後は何かないの?」
私の顔を覗き込んでお話をせがむ様子がホントに子供みたい
だけど、バトルの時とかいざっていう時は凄く頼りになる人。
「えっと…お団子の他に秋咲きの草花を一緒に飾ったりとか
お団子じゃなくて里芋…ってポテトの仲間をお供えしたりとか…
後は獅子舞ってうーん、なんて言えばいいのかな。
そういう被り物みたいなのを作って家々を回って厄払い…
アンラッキーを取ってもらう?そういう事をしてお礼にお小遣いを
もらったりする所もあるみたいですね。」
「ふーん、住んでいる場所で色々変わるなんて面白い!
そういえば、も子供の時、お月見泥棒した事あるの?」
何気なくみたら、お供えのお団子が凄い勢いで減ってるし
でもクダリさん、たくさん食べても太らないから羨ましいな。
「私の住んでいた所にはお月見泥棒の習慣はなかったんですよ。
あ、そのお月見泥棒の時の掛け声がもう一つありました。
えっとですね。その地域ではお箸を使ってお団子をつついてもらうって
風習が残ってるみたいで、その時に子供たちが言うのが
“団子 つかせてぇー” だ、そうですよ?」
「え?、今…なんて言ったの?」
クダリさんがお団子を落としてこっちをビックリして見てる。
あれ、ちょっとわかりにくかったのかな?ここは童心に帰って
可愛らしく言ってクダリさんを笑わせてあげようかな?
「“団子 つかせてぇー”ですよ?」
「…さっきのもビックリしたけど、今のはもうダメ、反則!!」
クダリさんがフローリングの床をバンバンしてるけど、どうして?
私、なにかやっちゃった?え?え??なんだろ?
「、そのおねだりの声すっごくエッチ!
ボク、ちょっと暴走列車になりそう…ううん、もう無理かもしんない」
そう言って私の両肩に手を置いて覗き込んで来たクダリさんの瞳は
キラキラじゃなくて男の人の色気が溢れていた。
「え?わ、私、そんなつもりで言ってません!!
わわっ、クダリさんちょっと待って!窓開いてるから!丸見えだから!!
暴走列車なんてサブウェイマスターが許しちゃダメですよってば!」
慌ててクダリさんの顔を横に向けて必死に抵抗したら。
身体の拘束が解かれて、ホッとした。もう、変な所でスイッチ入るのは
ホントにやめて欲しいです。
「ボクもお月見泥棒になる。お供えしてあるゲットする!」
ベランダのドアを閉めて、鍵をかけたクダリさんがジリジリと
私に迫って来る光景はゲットするポケモンを見つけたトレーナーみたいで
ちょっと怖くなっちゃった。
「私はお供えじゃないですよ?どうやって泥棒するんですか?」
「ボクの棒でつっつ「わー!!そんな事言っちゃダメですっ!!」…えー。」
いきなり何を言い出すのー!恥ずかしくて私、今なら大文字が使えそう。
顔が熱を持っていて真っ赤なのが自分でもわかる。
なのに、クダリさんってば普通の顔してるし。そういう所で大人になるとか
やめて下さい。正直、私の心臓が持ちません!
「、すっごく可愛い。ねぇねぇ、ボクやっぱり我慢とか無理!
に向かって、すっごい泥棒はじめる!!」
そう言ったクダリさんは私をお姫様抱っこして立ち上がると
凄い勢いでベッドルームへ向かっていった。
誰か、この暴走列車を止めてください!!