大きな○○の樹の下で
来年度の予算会議を終わらせて事務室に戻ると
机の上に置きっぱなしにしていたライブキャスターが着信を告げる。
誰だと思って画面を見りゃあ、ジュニアを迎えに行ったクダリからで
よくよく見ると履歴がすげえ事になっていた。
「あん、どうした?クダリ。」
『良かったー、繋がった!お父さん会議終わった?
ちょっとぼく達じゃこの状況がわかんなくて困ってた。お願い、すぐ来て!』
画面には困惑しまくってる息子の顔が二つ映し出されていた。
ジュニアはまだこっちに来てねえのか?それはおかしい。
俺はすぐ行く事と伝えて、ライブキャスターの通信を切る。
外に出て、ボールからジュニアのポケモンを出して目的地まで向かった。
「こりゃあ…どういう事だ?」
目的地に到着して開口一番、俺はこう言うしか出来なかった。
ハイリンク島が見えた時から思っていたんだが、まさかこれはマジなのか?
「お父さん!」
「父さん!」
白と黒のコートを翻し、俺を見つけた息子達が駆け寄ってきた。
その顔は俺と同じで、わけがわからねえって感じで困惑しまくってる。
俺は一番心配していることを二人に聞いた。
「この状況がなんなのかは、俺にもわからねえから聞くなよ?
で、ジュニアは?ジュニアはまだ来てねえのか?」
「うん、もう来ていてもおかしくないんだけど…」
「えぇ、この様な状況でございますので心配でございます。」
これは、今の状況が原因なのか?
見たまんまを言うんだったら、ハイルツリーが無い。
その代わりに、ハイルツリーよりも遥かにでかい木がその場所にあるんだが
「このーき なんのき きになるきー」
ノボリとクダリがびっくりした顔してこっちを見ている。
いや、ついつい歌っちまっても仕方ねえだろうよ。
この木はどうみたって、あの有名なCMソングに出てくる木にしか見えねえ…
だが、あの木にはてっぺんに金魚の飾りなんて付いてなかったよな?
「それにしても、でっけえ金魚だな…」
「金魚?ぼくは突然変異したアズマオウだと思ってた。」
「えぇ、わたくしもそう思っておりました。
ですが、これだけの大きさでしたら食費だけで破産しそうでございますねぇ…」
「こいつはランチュウって金魚…ニホンにいる金魚なんだが
それでもこんなでかいのは、あっちでもいねえはずなんだがな。」
伝説のポケモンをボールに戻して、まじまじとそれを見る。
まったく動いてねえって事はオブジェか?
「あ、こっち見た!」
「これは…視線で三タテ出来そうな迫力でございます。」
前言撤回、生きてやがるだと?
尚更おかしいだろうよ、そもそも金魚は水中動物…魚なんだ
地上では呼吸することだって不可能だろ、それともアレか?
俺がこっちの世界に来てから、こんな奴が遺伝子操作か何かで開発されたのか?
「ジュニアだったら、知ってるかもしれねえんだがな…」
この状況を一番知っていそうな末息子が来ていないってのが一番心配だ。
変な場所にでも飛ばされてなきゃあ良いんだが…
まだ姿を見せない息子の事を考えていたその時に、足元が揺れ始め
妙な空気がハイリンク島全体を包み込んだ。
「え?これってハイリンク?」
「ハイリンクでございましたら、光の壁が見えるはずでは?」
「こりゃあ、どうみても光の壁っていうよりは地獄への扉って感じだろうよ。
それにしてもなんだかまずいな、二人共俺の後ろに回っておけ。」
闇が渦巻くような壁が目の前に現れて、一気に周辺へ広がった後に霧散する。
「やっと見つけましたよ。それにしてもここは?」
「それについては詮索は無しだって、言っておいたはずだよなあ?
ともかく、探しモンは見つかったんだろ?って、なんだよこれは?!」
とっさの事に目を閉じていれば、近くで話し声が聞こえた。
ひとつはよく知った声だが、もう一つは心当たりすらねえ。
目を開ければ、ジュニアとその隣にはもうひとつ知らない人影があった。
「このーき なんのき きになるきー」
「おや、聞いたことのある歌ですが、あちらではこうです。
あのくさなんだかおよげそうー ほんとはおよげないー 」
呑気に歌いだしたジュニアを見て、取り敢えず無事だった事に安堵する。
それにしても、横にいるのは誰だ?
朱衿の着流しに手には…棍棒だと?そしてその額にあるのは…?
「あー!ジュニア良かったー!ぼくたち心配してた。ってか、隣の人は誰?」
「ジョウトの衣装にも見えますが…ジュニアのご友人でらっしゃいますか?」
俺より先に我に返ったノボリとクダリがジュニアの傍に駆け寄る。
当の本人は二人に生返事を返して、まだこの不気味な木を眺めていた。
「これは見事に瓜二つな顔ですね。挨拶は人間関係を円滑にする基本。
はじめまして、私は「うわー、ストップ!余計な事を言うんじゃねぇ!」…」
横に居る不審者(それ以外に言葉が見当たらねえんだから仕方がない。)の
言葉をぶった斬って、ジュニアがこっちをみた。
「ともかく、ハイリンクしてみれば、ハイルツリーはあるが
全く違う場所に飛んでたんだよ。どことか聞くなよ?答える気はないからな。
あんな生き地獄を説明なんざ、勘弁だってんだよ。」
「たしかに、貴方にとっては文字通りでうまい事をおっしゃいますね。
山田くーん、座布団一枚持ってきて。と言ったところでしょうか。」
その番組はまだ続いてるのか…って感想は置いといて、だ。
まずはジュニアから、どういう状況なのかを聞かないと始まらねえだろうよ。
「ジュニア、取り敢えず無事なようで安心したぜ。怪我はないのか?
ところで、お前さんはこの木がなんなのか知ってるのか?ハイルツリーは?」
「おう、俺は無事って言えばいいのかな?
なんなのかは知らなかったが、ハイルツリーはこの木があった所にある。
どこか傷ついたりしてるわけじゃねえから、ハイリンクも大丈夫だろうよ。
つーわけで、探し物は見つかったんだ。さっさと元に戻して帰ってくれ。」
あん?なんだってジュニアはこの不審者を早々に返したがるんだ?
ってか、ジュニアがその飛ばされた別世界で世話んなったなら
親父としては挨拶くらいはしなきゃならねえだろうよ。
「そんなにピリピリしてるとハゲるぜ?
うちの息子がそちらでお世話になったようですね、ありがとうございます。」
俺が頭を下げると、なんだか思案顔をしながら急に何かの帳面をとりだした。
「いえいえ、たいしたお構いもしていません。
まぁ…おもてなしをしてしまったら、むしろ無事ではすみませんし、残念です。
おや…やはりそうでしたか、貴方、一度死んでますね?」
その言葉に全員が凍りついた。
こいつは何を、どこまで知ってるんだ?それ以前に何者だ?
「死んでも息子が心配で、そのまま現世に留まられていた…いけません。
ですが、なぜでしょう?いつのまにか、貴方の死亡記録が消えています。」
「俺は余計な詮索は一切無しだって言ったよなあ?
まさか嘘をつくなんて事はアンタは出来ない…そうだろ?」
「取引をしたいのでしたら、もっと下手に出た方が賢いですよ?
そうですね、地獄の沙汰も金次第というものでしょうか。」
「そういう悪徳官僚は職業柄、俺も見過ごす事はできないんだぜ?
だが、この件についてを今いる連中に口外させないようにしてやるよ。
沈黙は金って言うだろ?それで手を打った方が、お互いの為じゃねえのか?」
ジュニアが必死になって食い下がっているのを見ると立場的には
向こうが上なのか?官僚って言ってるがその格好で有り得ねえだろうよ。
「うまいですね、山田くーん、座布団もう一枚持ってきてー。」
「いや、それはもういいから。早く元に戻して帰ってくれ。」
「確かに、私も暇じゃありません。無能なクズに無理難題押し付けられて
毎日がストレスの温床ですが溜め込みませんよ、我が身が一番ですから。
そうですね、それではそろそろお暇させていただきましょうか。」
そう言って、そいつは上を見上げる。
でっかい金魚がさっきからこいつをじっと見てるんだがアレか?飼い主ってか?
「ハウス!!」
「「「「それだけ?!」」」」
俺も息子たちも思わずツッコミを入れちまったが、そうじゃなかった。
でっかい木を黒い霧が覆い尽くしてそれが渦巻いて、やがて木は消えた。
そして、本来あるべきハイルツリーの姿が浮かび上がる。
「さて、これで全て元通りです。皆さん、くれぐれもこの件はご内密に。
約束を守らない人には、私自らが手厚くおもてなしさせていただきますので。
まぁ、それもまた楽しそうだから歓迎しますけどね。それでは。」
テレポートマーカー位に小さくなった黒い渦の中に人影が消える。
そしてその後は、いつもの見慣れた景色が戻っていた。
「うわー、なんだか白昼夢?いや違うよね?」
「そもそも、彼は何者でございますか?」
「はぁ…その話は、親父の家に帰ってからにしてくれ。
俺は今はこの場所から、少しでも早く離れたくて仕方がねえんだよ。」
なんだか疲れきっている息子を家まで送ってから
仕事を終わらせて、全てを聞く事になったんだが、内容が凄すぎた。
「地獄の住人つうか、官僚なら…俺の事を知ってても不思議はねえってか?」
長兄二人にニホンの地獄について説明しているジュニアを見ながら
だから、こいつはあれほどしつこく詮索するなと言っていたんだと納得した。
「これでわかっただろ?あの場所の事は絶対言うな。
それじゃないと、どうなったって俺は知らねえからな!」
「うん、ぼくは何も見てない。何も知らない。」
「わたくしも、でございます。」
「それで良いんだ。親父、てめえもしっかり頭の中に叩き込んどけよ?
そんな形で戻ってきたって、俺達は嬉しくないんだからな!」
「あん?何の話だ?…これでいいんだろ?」
素直に俺の身を心配してると言わないのが、ジュニアらしい。
他にも色々言ってるが、わかってるよ、安心しろってんだ。
俺も、向こうに連れ戻されて、挙句地獄に送り込まれるなんざ真っ平御免だ。
── 大きな○○の樹の下で ──
(「あのくさなんだかおよげそうー」 「ほんとはおよげないー」
「二人共、この歌をすっかり気に入ってる?」 「でございますねぇ…」
「「うわー、続き、続きが知りてえ!!」」 「「…やっぱり…(溜息)」」 )
そげら のさく様のお誕生日プレゼントとして押し付けた作品です。
鬼灯の冷徹の鬼灯さんとさく様宅のじゃないお父さんと息子3人たちのコラボです。
他人の褌で相撲をとりました…やっちまったよ、管理人!(土下座)
人様のキャラクターのみの話で、オマケに名前変換はどこー?無いよ!
こんな作品を掲載してくださるとか、さく様は女神様です。拝みたくなります。
当サイト設定(すでに設定があるとか、怪しいぞー?w)の鬼灯さんは
どこまでもマイペースで唯我独尊で他人の迷惑なんて気にしません。
振り回しちゃってジュニア君ゴメンネー!(更に土下座)
さく様、お誕生日おめでとうございます!