エクスシアイの恋人

エクスシアイの恋人



“月夜ばかりと思うなよ”


昔の人は上手い事を言ったよね。今、私のこの状況こそピッタリかもしれない。



メイン通りからかなり離れた所に逃げ込んだは良いけれど、袋小路で

見つかるのもきっと時間の問題…ある程度は覚悟していたけれど

まさか、ここまでなんて思わなかった私が甘かったんだろうなぁ…


私がバトルでもイケメン度でも超有名なサブウェイマスターのクダリさんと

お付き合いするようになって半年、周囲に知れ渡ったのが2週間前のお話


それ以前から、私の働いているカフェの常連として来ていた人が

まさかそんなに凄い人だと思わなかったのは

私がバトルにもイケメンにも全く興味がなかったから。

だったらどうしてお付き合いしてるのかって?

クダリさん曰く、「普通なが好き!」 だそうですよ?

告白された時はなにそれ?って思ったけど、そんな凄い環境にいるなら

極々平凡って事が珍しく思えるんだろうなぁ…


そんな事を思っていたら、ライブキャスターの発信音が鳴り響いた。

マズイ、音消してなかったー! 慌てて出てみれば画面には

今、考えていた当人が何時も通りの笑顔で手を振っていた。



ー! ボクね、仕事終わったから会いたい!!どこにいるの?」



貴方の親衛隊に雇われたゴロツキに追われて路地裏の袋小路に

隠れていますとは口が裂けても言えない。


私じゃクダリさんとお付き合いしてるのがあまりにも不釣り合いなのは

私が一番思っている事なんだから、ずっと前から彼のことを好きな人なら

泥棒猫が横からかっ攫って天使を穢してると思ってるんだろうな。

だけど、私だってクダリさんが好きなんだもん、この気持ちは本物で

誰にも負けたくない。同じくクダリさんを好きな人にもわかって欲しい。

クダリさんに余計な心配をかけたくない。

これは私の問題なんだから、私がなんとかして解決しなくちゃ!



「えーっと、今ちょっと人と会う約束してるんですよ。

なので、今日はちょっと無理です。ゴメンナサイ。」



私が画面に向かって頭を下げた時に通りの端から「いたぞ!」と

野太い声が聞こえた。あぁ、もうホントにタイミングが悪い!



…、それって男の人?今声が聞こえたんだけ…」



クダリさんの話は最後まで聞けなかった。

ゴロツキの一人がダンボールの山の中に隠れていた私を引きずり出したから。

ライブキャスターの通話が切れたのか確認すらできないまま、

私は硬いアスファルトの地面に身体を叩きつけられた。

一瞬呼吸すら出来ない程の衝撃に意識が遠のいたけど気合で起き上がる。



「アンタにはなんの恨みもないけど、金もらって頼まれたんでな。

どうせならお互いに楽しんだ方が良いと思わねぇか?」



「これ…っぽっちも、思いません。

それよりも、あなた達に頼んだ人って誰ですか?どうしてこんな事…」



ゴロツキから離れようと後ろに下がったら、既に囲まれていたみたいで

後ろの男に抱きつかれた。慌てて離れようともがいたって無理だけど

それでも抵抗する事をやめたくはなかった。

嫌な音ともにブラウスが破かれて下着が見える。

隠そうと思っても両手を封じられてそれすらできなくて泣きそうになる。



「絶対に許さない。ジュンサーさんに訴えてでも捕まえてもらうんだから!」



「俺達に何をされたのか全部言わなくちゃいけないんだぜ?

そんな恥ずかしい事、言えるわけ…「言えます!!戦います!」…テメェ」



たとえそれが原因でクダリさんと会えなくなっても、私は私を貫く

私は間違ってない、こんな奴らになんか絶対に負けない!!


そんな私の言葉を脅しじゃないと感じたのか、ゴロツキ達の間に

動揺が広まったような気がした。



「そんな事、させるわけないじゃない。

これからあなたが受ける事ぜーんぶ、このビデオで撮ってあげる。

そして、これをパソコンで配信してあなたの姿を見てもらいましょうよ。」



ゴロツキ達の間から数人の女の人が現れた、そのうちの一人が

私の姿をビデオで撮影している。

この人達、見た事がある。やっぱりクダリさんの親衛隊の人達だ。



「私がクダリさんに不釣合なのは私が一番よく知ってます。

こんな事を貴女達がしてるって知ったら、クダリさんが悲しむでしょう!」



だからやめてと言おうとしたけど、思い切り顔を殴られて言えなかった。

口の中で鉄の嫌な味が広がる。



「あなたがクダリさんの前からいなくなれば良いだけの話でしょ?

自分が不釣合だってわかってるなら、さっさと消えて!」



ゴロツキに目配せした後に、数歩後ろに下がってそれでもビデオの

録画は止めずに、こっちを撮している。

それを合図に男達が一斉に私に群がった。両手両足を地面に縫い付けられ

ブラウスもスカートも破かれてその布切れを口の中に押し込められる。


あぁ、もう駄目かな?悔しいな。こんな事になるならクダリさんと

付き合わない方が…ううん、それは思わない。付き合った事は後悔してない。

目の前に覆いかぶさってきた男を睨みつける事をやめなかったけど、

悔しさと恐怖とで涙が止まらない。



「デンチュラ、フラッシュ!!」



聞き慣れた声がした後で、一面が眩い光に包まれて視界が一切きかなくなった。

自分の周りで鈍い音とグェとかウッって声が上がり、身体が自由になる。

ふわりと何かを自分の身体にかけられた時にした香りに更に涙が溢れた。

少し眼が慣れてきた頃にまたパパパッと光が私の横で瞬く。



「クダリ、全員の顔はハッキリとライブキャスターに収めました。

様は私がお守り致しますので、貴方はお好きな様にしてくださいまし。」



大好きな人と瓜二つの人が白いトレンチコートに包まれた私を

抱きかかえて、少し離れる。えっと、クダリさんのお兄さんだったかな?



「ノボリ、あんまりに触らないでよね。

ボクすっごく怒ってる。僕の大切な人を傷つけたキミ達を許さない。

キミ達の顔、ライブキャスターに写ってる。が訴えたらキミ達全員

刑務所行きになるのは間違いない。

裏でコソコソしてた君達も同じ。タダじゃ済まないし、済ませる気ない。

、ボクが全部守るから心配する事ない。戦える?」



いまだに地面に突っ伏しているゴロツキと親衛隊の女の人達から目を離し

振り向いたクダリさんは私に向かっていつもの様に微笑んでくれた。

その笑顔の為だったら、私はどんな事でも耐えることが出来ますよ。



「私は、自分がクダリさんを好きな気持ちはこんな事じゃ揺るぎません。

間違った事をしてるとも思ってませんので自分の気持ちを貫きます。」



口の中が切れているせいか話しにくかったけど、クダリさんには伝わったみたい。

横でノボリさんがスーパーブラボーでございます!って言ってたけど、

そんな大袈裟な事じゃないと思うんだけどな。



「ボク、のそー言う所大好き!だからもう誰にも邪魔させない。」



クダリさんがライブキャスターでジュンサーさんを呼ぼうとした時

ゴロツキ達が一斉に襲いかかった。



「クダリさん!!」



私が叫んだと同時にノボリさんが私の身体を自分の方に向けて

抱え込むように覆いかぶさって来た。耳も塞がれてしまったので

外の音があまり良く聞こえない。



様には少々刺激が強すぎると思われますので、このまま

私が良いですよと言うまでお待ちくださいまし。

クダリ、準備オッケーでございます。全速前進で出発進行して下さいまし」



「流石ノボリ、ありがと。すっごいバトル始める!」



ゴロツキ達の悲鳴と、鈍い音がジュンサーさんが到着する少し前まで

かすかに聞こえてきた。

ノボリさんに良いですよと言われて顔を上げた時には

地面に蹲って呻いているゴロツキと、それを見つめて顔色を無くして

しゃがみこんでいる親衛隊の人達、壊されたビデオ、そしてその中央で

クダリさんが普段となんら変わらない様子で立っていた。


現場に到着したジュンサーさんがその現状を唖然とした表情で見ていて

その前に立ったクダリさんがジュンサーさんの目の前で手をヒラヒラさせる。



「呼び出しちゃってゴメンナサイ。この人達、ボクの恋人にひどい事した。

ボクがジュンサーさんを呼ぼうとしたら襲いかかってきちゃったから

仕方がないから肩の関節外して、動けなくした。

急だったし、ボクも必死だった。

だから、他の関節とか骨とか余計に痛めたかもしんない。

ジュンサーさん、ボクも捕まっちゃう?」



コテンと効果音がつきそうな感じで首を傾げて心配げにジュンサーさんを

クダリさんは覗き込んで話しかけた。

我にかえったジュンサーさんは、正当防衛で問題は無いでしょうと話してた。

それにしても、これだけの人数を相手にして衣服が全く汚れてもいないし

息も乱れていないクダリさんに驚いてしまった。

だって、普段のクダリさんのイメージだと暴力とは無縁ぽいんだもの!


ゴロツキ達と親衛隊の女の人達がジュンサーさんに連れて行かれ、

私も事情徴収と被害届を出すために同行しようと思ったんだけど

なんせ、下着だけの格好では身動きがとれないので明日にしてもらった。

その日はクダリさんが私の家に泊まってくれて

私が寝るまでずっと横で手を握って頭を撫でてくれて凄く安心しちゃった。


翌日、事情徴収を受けて被害届を出そうと警察署へ向かう途中で

ノボリさんがやってきてクダリさんになにやら分厚い書類を渡した。

なんだろうと思って見ていたら。内緒!って言われちゃった。


警察で事情徴収を受けてる間もクダリさんはずっと傍にいてくれた。

そして、最後にノボリさんから受け取った書類の入った封筒を

ジュンサーさんに渡した。



「ボク達、色々と調べた。そしたらあの人達いっぱい悪い事してた!

これ、その内容と、被害にあった人達の住所とか書いてある。

証言も必要ならしてくれるって言ってる。悪い事は絶対ダメ!

だから、こんな事が起こらないように使って欲しい。」



担当のジュンサーさんがそれを受け取って私達の手続きは全て終わって

二人で外に出た時はもう夕方になってしまった。



「クダリさん、お仕事だったのに付き合わせてしまってごめんなさい。」



「どーして、が謝るの?ボクの方がを守れなかった。ゴメンじゃ

済まない位 に怖い思いさせた。怪我もさせちゃった。

でも、ボクはが好き。今度は絶対守るから嫌いにならないで欲しい。」



クダリさんが私にギュって抱きついてきた。私を抱きしめる腕が震えている。



「嫌いになんかなりませんよ?あんな人通りの少ないところにいたのに

助けに来てくれて、本当に嬉しかったんですから。」



のライブキャスターのGPS機能使わせてもらった。通信は切れるし

のいる場所がおかしかったから、何かあったんだと思った。」



額同士がくっ付く位の至近距離で見つめられてちょっと恥ずかしくなる。

殴られた跡が化粧でごまかしてるけどまだ腫れぼったいんで見ないで欲しいな。

そう思ったら、腫れの残ってる所に優しくキスをされた。

大丈夫?って、そんな心配そうな顔を見たくなくて私はニッコリと笑った。



「クダリさんってポケモンバトルだけじゃなくてリアルバトルも強いんですね。

喧嘩するイメージが無くてちょっとびっくりしちゃいましたよ?」



「ボク達、結構人に恨まれたり多い。だから護身術は徹底的にやってる。

最近じゃ喧嘩売る人もいなくてちょっと寂しかった位だったから昨日は

いつもよりいっぱい暴れちゃった。

ボク、こー見えて鍛えてる。筋肉だってついてるし、腕力だって

ホラ、を肩に座らせられる位はある。」



そう言うと、私を抱き上げて肩の上に座らせてふらつきもせずに歩き出した。

いつもなら見えない景色に感動してたんだけど、すぐに我に返った。

えぇえええ?!ちょっと自分が手乗りポケモンにでもなった気分なんだけど!

恥ずかしさと驚きでワタワタしている私をみてクダリさんがクスクス笑う。



「ねぇねぇ、ボクお腹すいた!の手料理食べたいから家に行ってもいい?」



何度目かのお願いをやっと聞いてもらって降ろしてもらう。

凄く恥ずかしかったけど、視界が広くてちょっと気持ちよかったかも。



「私の料理でよければいくらでもご馳走しますよ。リクエストは?」



「やったー!オムライス!! それじゃ の家に出発進行!」






その後、ゴロツキ達と親衛隊の女の人達の処分が決まり。

私とクダリさんがお付き合いしている事に口を挟む人は誰もいなくなった。



「バトルサブウェイ随一で、四天王のレンブ様と肩を並べる程の格闘の

実力を持っているクダリに喧嘩を売るなど正気の沙汰ではございませんよ。」



後に、ノボリさんが仕事先のカフェに来て私にコッソリと教えてくれた。

ジュンサーさんに渡した書類も、私が寝た後にクダリさんから連絡があって

クダリさんのパソコンのデーターベースからプリントアウトをして

作ったものらしい。

なんて用意周到なんだろうと驚いていたら



「ボク、ダブルのサブウェイマスター。ダブルバトルは戦略とか読みとか

何手も先に考えていくつもパターンを作って色々動かなきゃならない

この位できて当たり前。」



いつの間に来たのかクダリさんがノボリさんのコーヒーを取り上げる



「でも、ボクの読みが甘かったせいで が怖い思いをして、怪我した。

アイツ等、もっと痛めつければよかった!」



「関節外した後でその場所をグリグリと痛めつけただけでも十分でしょう!

私、あなたが過剰防衛で処罰されるのではないかとヒヤヒヤ致しました。

あの時のクダリの顔はとてもお見せできるものではございませんでした。」



うわぁ…そんな場面見なくて良かったかもしれない。

隣でそんな事ないもん!とちょっぴり拗ねながらアップルパイに

メープルシロップと生クリームをたっぷりつけて頬張るクダリさんに

色々な意味でちょっと引いちゃったのは内緒にしておこう。









そげら  さく様へ相互記念品として押し付けました。
書くにあたって、さく様へご希望をお伺いしたら「クダリさんでギャップ萌え」
…ギャップってなんだぁあああ!と叫びながら色々試行錯誤をした結果がこれです(滝涙)
ちなみにエクスシアイとは能天使、別名パワーという天使の階級です。